更新日:2026.04.15
障害年金の遡及請求は難しい?受給の条件・必要書類を社労士が詳しく解説
障害年金の遡及請求は、「一筋縄ではいかない、難易度の高い手続き」です。
その最大の理由は、過去の病状を証明するための「障害認定日当時の診断書」が必要になるからです。医療機関のカルテ保存期間(5年)を過ぎている場合などは、受給を断念せざるを得ないケースも少なくありません。
この記事では、遡及請求が難しいとされる理由や、申請前に知っておきたい4つのポイント、社会保険労務士法人ゆうき事務所(以下、ゆうき事務所)での受給事例を解説します。
目次
障害年金の遡及請求とは?3つの請求パターン
障害年金の遡及請求(そきゅうせいきゅう)とは、本来の請求時期(障害認定日から1年以内)を過ぎた後に、過去へさかのぼって年金を請求する手続きを指します。
障害年金の請求方法は、手続きを行うタイミングや病状の経過によって、以下の3種類に分かれます。
障害認定日請求
障害認定日請求とは、障害認定日から1年以内に障害年金を請求することです。

障害年金は上の図のように、障害認定日から1年以内に手続きを行うのが通常のやり方で「本来請求」とも呼ばれます。
障害認定日請求が認められると、年金は障害認定日の翌月から支給されます。
※ 障害認定日とは、初診日から1年6か月を経過した日、または1年6カ月以内に傷病が治った(症状が固定した)場合はその日のこと
遡及請求
遡及請求は、障害認定日から1年以上経過して障害年金を請求する方法のことです。
認められれば過去分を一括受給できますが、時効により「直近5年分」が上限となります。

障害年金を長期間請求していなかったとしても、障害認定日の時点に遡って請求することができます。
事後重症請求
障害認定日時点では症状が軽かったものの、その後に悪化した際に請求する方法です。
請求した翌月から将来に向かって支給され、過去に遡ることはできません。
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事後重症請求をする場合は、早急に手続きしましょう。
なお、老齢年金を繰上げ受給した場合は、事後重症請求はできなくなる点にも注意してください。
障害年金の事後重症請求の詳細は、障害年金の事後重症請求とは?いつからもらえる?年金額や必要書類、申請の流れもご紹介をご覧ください。
ゆうき事務所代表社労士が動画でも解説しています。
障害年金の3つの申請方法の違いを下表にまとめました。
| 請求方法 | 概要 | 支給のタイミング |
| 障害認定日請求 | 認定日から1年以内に請求 | 認定日の翌月から |
| 遡及請求 | 認定日から1年以上経過して請求 | 最大5年前まで遡って受給 |
| 事後重症請求 | 認定日以降に症状が悪化して請求 | 請求した翌月から(将来分のみ) |
なぜ、障害年金の遡及請求は難しい?
遡及請求の最大の難関は、「障害認定日から3か月以内の診断書」を用意することです。
例えば、療養期間が長い人の場合は初診日が10年以上前ということも少なくありません。
医療機関でのカルテの保存義務は5年なので、療養期間が長期にわたる場合は、カルテが破棄されていることがあります。
たとえ障害認定日当時に障害等級に該当するような状態であったとしても、カルテがないために診断書が作成できず、遡及請求を断念するケースもあります。
また、運よくカルテが残っていたとしても、当時の医師が退職していることを理由に、障害認定日時点での診断書の作成を断られることもあります。
このように障害認定日から3か月以内の診断書の用意ができるか、とても難しいケースがあるのです。
また、初診の医療機関が閉院になっていたり、転院をくり返している場合は初診の医療機関がわからず、初診日の証明が困難になるケースも多くみられます。
【Q&A】遡及請求の「気になる疑問」を最速解決
遡求請求について多く寄せられる疑問に、社労士の視点でお答えします。
Q1. 一番体調が悪かった時期まで遡れますか?
A. 遡れる地点は、法律で定められた「障害認定日」という一点のみです。
「貯金が底をついた時期」や「数年前の最も重かった時期」をご本人が自由に選ぶことはできません。認定日の状態で、以下のように請求方法が決まります。
| 障害認定日の状態 | 請求方法 | 受給できる内容 |
|---|---|---|
| 等級に該当する重さ | 遡及請求 | 認定日の翌月分から遡って受給 |
| 等級に該当しない軽さ | 事後重症請求 | 請求した翌月分から将来分を受給 |
Q2. 遡及請求をすれば、誰でも5年分もらえますか?
A. 「5年分」は受給額の保証ではなく、時効による上限を指します。
年金の受給権には5年の時効があります。何年分さかのぼって受け取れるかは、手続きのタイミングで以下のように変わります。
- 3年前が障害認定日の場合: 3年分の未払い分をすべて受給。
- 10年前が障害認定日の場合: 直近5年分のみ受給(残り5年分は時効で消滅)
お手続きが1か月遅れるごとに、過去の1か月分が時効で消えてしまいます。1日も早い申請が、受給総額を守る唯一の対策です。
障害年金の遡及請求で知っておきたい4つのポイント
障害年金の遡及請求ができるかを判断するには、次の4つのポイントがあります。
順番にみていきましょう。
初診日が証明できること
遡及請求を進める上で欠かせないのが、「初診日」の特定です。
初診日とは、障害の原因となった病気やケガで、初めて医師や歯科医師の診察を受けた日を指します。国民年金・厚生年金・共済年金のいずれかに加入している期間中に、この初診日があることが受給の前提条件です。
誤診でも「初診日」とみなされる場合があるため、注意が必要です。
初診日から1年6ヶ月が経過した「障害認定日」の状態によって、障害年金を遡って申請できるかが決まります。
障害年金の初診日は独特の捉え方をしています。詳細は、障害年金の初診日とは?カルテがないときの対処法もご紹介!でご確認ください。
障害認定日に障害等級に該当すること
障害認定日に障害等級に該当しなければ、遡及請求はできません。
障害等級と状態の目安を下表にまとめました。
| 障害等級 | 状態の目安 |
|---|---|
| 1級 | ・他人の介助がなければ、日常生活をほとんど送れない |
| 2級 | ・必ずしも他人の助けは必要ない ・日常生活を送ることが困難 ・働いて収入を得ることは難しい |
| 3級 ※ 障害厚生年金のみ | ・日常生活に支障が少ない ・働くことに著しい制限を受ける |
なお、障害等級については、障害の種類ごとに詳細な基準があります。
障害等級の基準について詳しく知りたい方は、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構をご確認ください。
障害認定日から3か月以内の診断書が用意できること
遡及請求の申請の場合、日本年金機構では障害認定日時点の状態を審査するために「障害認定日から3か月以内の診断書」の提出を求めています。
診断書を作成するには「障害認定日ごろのカルテがある」ことが不可欠ですが、以下のような場合はカルテがなく、診断書の作成ができません。
- カルテの保存期間が過ぎて廃棄されている
- 障害認定日当時受診していた病院が廃院
- 障害認定日当時、通院していなかった
障害認定日ごろの診断書が用意できなければ、遡及請求は認められず、事後重症請求(現在から年金支給)となります。
障害年金の請求日にも障害の状態にあること
遡及請求が認められる要件としては、障害年金を請求する日も障害等級にあてはまることが必須です。
遡及請求の際は「年金の請求日から3か月以内の診断書」も添付し、現在の障害の状態も合わせて審査されます。
障害認定日に障害等級に該当するような状態であっても、請求日には症状が改善している場合には、遡及請求が認められるのは難しいです。
例えば、うつ病で長期間療養している例でみてみましょう。
上記の場合は、現状ではうつ病の症状が良くなっているので、遡及請求が認められる可能性は低いといえます。
障害年金の遡及請求|必要書類は?
障害年金の遡及請求で必ず準備する書類は、次のようなものがあります。
- 年金請求書
- 基礎年金番号が確認できるもの(年金手帳など)
- 診断書(障害認定日より3か月以内のもの、年金請求日から3か月以内の現症のもの)
- 受診状況等証明書
- 病歴・就労状況等申立書
- 請求事由確認書
- 通帳のコピー
遡及請求の場合は、診断書が2枚必要になるので注意しましょう。
- 障害認定日より3か月以内のものが1枚
- 年金請求日から3か月以内の現症のものが1枚
配偶者や扶養家族がいる場合は、このほかにも戸籍謄本や住民票、配偶者の所得証明などが必要になることがあります。
障害認定日より3か月以内のものが1枚
また、病歴や通院歴、家族構成などにより、障害年金の必要書類は人それぞれで異なります。
実際に障害年金を請求する際には、年金事務所や社労士にご相談ください。
障害年金の必要書類は、障害年金の必要書類一覧!ケース別でわかりやすくご紹介でさらに詳しく紹介しているので、興味のある方はぜひご覧ください。
ゆうき事務所代表社労士の解説動画はこちらです。
参考:障害厚生年金を受けられるとき|日本年金機構
参考:障害基礎年金を受けられるとき|日本年金機構
障害年金の遡及請求の成功率は?
障害年金の審査は個別の病状や提出書類の内容に基づき判断されるため、一概に「〇%」という成功率を提示することはできません。
ただし、以下のようなケースでは、遡及請求が認められやすい傾向があります。
- 人工関節やペースメーカーの装着など、いつ症状が固定したかがわかりやすい傷病
- 精神疾患の場合は、障害認定日に通院しており、仕事ができない状態であること
手足の切断や人工関節の装着など、症状の固定した日が特定できる傷病の場合、年金の審査の際に障害認定日が認められやすい傾向があり、遡及請求も認められる可能性が高いといえます。
一方で、糖尿病やパーキンソン病など、症状が次第に進行する疾患は、症状が固定せず障害認定日の証明が難しいため、遡及請求が認められる可能性は低いです。
また、障害認定日に症状が軽い場合も、遡及請求は認められないことが多いので注意してください。
遡及請求の前に知っておきたいデメリット
遡及請求が認められ、過去の年金が一括支給される際、他制度の手当金と「調整」が入ることがあります。
| 対象となる制度 | 調整の内容 | 注意点 |
| 傷病手当金 | 年金が優先されます。 重複期間分の傷病手当金を健康保険組合等へ返還します。 | 傷病手当金の日額が年金より高い場合は、その差額分を受給できます。 |
| 生活保護 | 年金は「収入」とみなされます。 受給した年金額の範囲内で、保護費の返還を求められます。 | 自治体によって扱いが異なる場合があるため、ケースワーカーへの確認が必要です。 |
遡求請求について、ゆうき事務所代表社労士が動画でも解説しています。
参考:傷病手当金と老齢年金等の併給について|協会けんぽみやざき
参考:生活保護法 第六十三条(費用返還義務)|e-Gov法令検索
障害年金の遡及請求|ゆうき事務所の受給事例
ゆうき事務所にご依頼いただき、遡及請求が認められた事例をご紹介します。
うつ病で障害基礎年金2級(遡及分 約400万円)
【ご相談者様の状況】
30代男性。職場の人間関係によるうつ病で退職後、アルバイトを転々とする生活でした。初診から15年以上経過しており、ご本人は受給を諦めていました。
【ゆうき事務所のサポート内容】
- カルテの確認
医療機関へ問い合わせ、15年以上前のカルテが残っていることを突き止め、障害認定日当時の診断書作成に繋げました。 - 医師への働きかけ
主治医からは「受給は難しい」と言われていましたが、食事が摂れない、過呼吸が起きるといった日常生活の支障を詳細にヒアリング。実態を反映した診断書を作成していただきました。
【審査の結果】
障害基礎年金2級(年間約79万円)に加え、遡及分として約400万円の受給が決定しました。
うつ病で障害厚生年金3級(遡及分 約340万円)
【ご相談者様の状況】
60代男性。大手企業の管理職として勤務中に、仕事のプレッシャーからうつ病を発症。退職後、老齢年金の受給開始まで数年あり、生活費への不安から再就職を検討されていました。
【ゆうき事務所のサポート内容】
- 医師への伝達サポート
主治医から「受給は無理」と断られ、一度は申請を諦めていたケースです。ゆうき事務所の社労士が、日常生活の困りごとを医師へ正確に伝えるための橋渡しを行いました。 - 書面の充実
ストレスによる帯状疱疹の症状なども含め、病歴・就労状況等申立書へ詳細に記載し、病状の重さを適切に反映させました。
【審査の結果】
障害厚生年金3級(年間約160万円)に加え、遡及分として約340万円の受給が認められました。
このほかにもたくさんの受給事例がありますので、ぜひ下記をご覧ください。
▶ゆうき事務所の受給事例
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