更新日:2024.08.25
【障害年金の手続きをスムーズに進めたいあなたへ】申請の流れをわかりやすく解説
障害年金は、病気やけがによって障害があり、日常生活や仕事に支障がある人を経済的に支援する制度です。
障害年金の申請のために、さまざまな書類を準備したり、何度も年金事務所に足を運んだりすることから「手続きが複雑で難しそう」「自分で準備できるのかな」とためらいを感じる人は少なくありません。
しかし、自分で障害年金を申請することが難しいときは専門家のサポートを受けながら、一つひとつ解決していくこともできます。
この記事では、障害年金の手続きの流れをステップに分けて具体的に解説していきます。また、申請に際してよくある質問や、スムーズに手続きを進めるためのポイントなどもご紹介するので、ぜひ最後まで読んであなたの障害年金申請にお役立てください。
障害年金の手続きの流れ
障害年金の申請の準備は一般的に以下のように進みます。
順番に各項目をみていきましょう。
ステップ1:初診日を確認する
障害年金の申請準備として真っ先に行うのは「初診日の確認」です。
初診日とは、障害の原因となって病気やけがで初めて医療機関で診療を受けた日のことですが、初診の医療機関から転院している場合は、初めて受診した医療機関と時期を特定しなければなりません。
療養期間が長期にわたる場合、初診がかなり前で思い出せないケースも多くみられます。
そんなときは昔の日記や手帳、家計簿などの記録を見たり、家族や友人に聞いたりするなどして、初診の医療機関はどこなのか、時期についても「〇〇年の△月頃」「△歳の△月頃」ぐらいまで思い出しておきましょう。
また、初診日についてよくある間違いとしては、病名がはっきりと診断されず転院をくり返し、ようやく診断を受けた医療機関を「初診の医療機関だ」と思うケースが挙げられます。
この場合は、病名が確定した医療機関ではなく、転院前の医療機関が初診となることがあるので注意が必要です。
初診日の具体例を以下にまとめます。
経緯 | 初診日 |
---|---|
不眠と頭痛、抑うつが続き、内科を受診したが改善せず、医師のすすめで精神科に転院したところ、「うつ病」だと診断された | 内科を受診した日 |
うつ病かもしれないと不安になり、精神科を受診し検査を受けたところ、先天的な知的障害だと診断された | 出生日 (先天的な知的障害は出生日が初診日となる) |
うつ病でメンタルクリニックに通院していたが、精神科に転院し検査を受けたところ、発達障害だとわかった | うつ病で通院していたメンタルクリニックを初めて受診した日 |
整骨院や鍼灸院などの受診は医師の診療ではないため、初診日になりません。また、原則として健康診断を受けた日も初診日とは認められないので注意しましょう。
なお、初診が65歳以上、または老齢基礎年金を繰上げ受給※している人は、原則として障害年金の支給対象にはなりません。
※繰上げ受給とは、本来は65歳から受け取る老齢基礎年金を60~64歳の間に受給すること
初診日を確認する際は複数の資料を照らし合わせながら、正確な初診日を特定するようにしましょう。
初診日の確認に困ったら、専門家である社会保険労務士に相談することをおすすめします。
参考:障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて|厚生労働省
ステップ2:保険料の納付状況を確認する
初診日がおおよそわかったら、保険料納付要件を満たしているかを確認しましょう。
誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」にも直近の保険料納付状況が記載されていますが、障害年金の保険料納付要件を確認するには、年金に加入してからの記録が必要です。
保険料の納付状況は、年金事務所や街角の年金相談センターで確認できますので、早めに納付記録を取得しましょう。
保険料納付要件の確認の流れは次のようになります。
保険料納付要件の確認手順
(1)初診日の前日において、初診日の2か月前までの1年間に保険料の未納や滞納がないことを確認します。
上図のように未納がなければ、保険料納付要件はクリアできます。
(2)直近1年間に保険料の滞納がある場合は、20歳から初診日の2か月前までの保険料納付状況を確認しましょう。
上図のように、3分の2以上の期間が納付・免除されていれば、保険料納付要件を満たせます。
いずれのケースでも、初診日の後に保険料を納付しても「納付」に算入できません。
初診日の候補がいくつかある場合は、それぞれの初診日で保険料納付要件を満たすか確認しておきましょう。
なお、20歳前に初診日がある人や、先天的な知的障害など生まれつきの障害のある場合は、保険料納付要件は問われません。
障害年金の受給要件は、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!で詳しくご紹介していますのでぜひご覧ください。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
ステップ3:初診日が証明できる書類を準備する
初診日が特定できたら、初診日を証明する書類として「受診状況等証明書」を用意しましょう。
「受診状況等証明書」とは、初診を担当した医療機関に作成を依頼するもので初診日を証明するために欠かせない書類です。
【初診の医療機関で証明ができない場合】
初診の医療機関で病歴・就労状況等申立書が作成できないときは、転院先の医療機関で作成をお願いする方法があります。
障害の原因となる傷病の発症がかなり前だという場合、初診の医療機関が閉院していたり、医療機関があってもカルテが保存されておらず受診状況等証明書の作成を断られたりすることが少なくありません。
そんなときは、転院先の医療機関に診療記録が残っていないかを問い合わせましょう。
2番目の医療機関でも診療記録がなければ3番目、3番目にも記録がなければ4番目と、古い順番に問い合わせていき、記録が残っている医療機関に「受診状況等証明書」を作成してもらいます。
【受診状況等証明書がいらないケース】
「受診状況等証明書」が不要となるケースは次のとおりです。
- 先天的な知的障害など初診日が「出生日」となる障害
- 初診の医療機関と診断書を作成する医療機関が同じ
先ほどご説明したとおり、先天的な知的障害のある場合は「出生日」を初診日と見るため、受診状況等証明書の添付は不要です。
また、初診の医療機関から転院せずに現在も通院している場合は、初診の医療機関で診断書を作成するため、受診状況等証明書の作成はいりません。
なお「初診の医療機関→転院先の医療機関→初診の医療機関」という通院歴の場合、初診の医療機関で診断書を作成するのであれば、受診状況等証明書が不要となります。
初診の証明は、障害年金の手続きのなかでも行き詰りやすいところです。自分や家族では難しいと感じるときには、ゆうき事務所がお力添えできます。
お気軽にお問い合わせください。
ステップ4:診断書を依頼する
初診日の証明をする書類が準備できたら、主治医に診断書を依頼しましょう。
障害年金の請求時期により、用意する診断書の枚数や有効期限は以下のように変わります。
請求の時期 | 必要な診断書 |
---|---|
障害認定日※1から1年以内 (障害認定日請求) | 障害認定日より3か月以内の現症のもの:1枚 |
障害認定日から1年以上経過して請求 (遡及請求) | 障害認定日より3か月以内のもの:1枚 年金請求日から3か月以内の現症のもの:1枚 |
事後重症請求※2 | 年金請求日から3か月以内のもの:1枚 |
※2 事後重症請求とは、障害認定日には症状が軽く、その後障害状態に該当するようになったときに障害年金を請求すること
診断書は、障害年金申請の重要書類のひとつで障害年金の認定や障害等級の決定に深く関わっています。
診断書には、日常生活や仕事にどのくらい支障があるかを医師の視点で記入するため、主治医に生活の様子を知ってもらうことが大切です。
ふだんの診察で、日常生活や仕事での困りごとや周囲のサポートの様子などを伝えきれない場合は、診断書を依頼するときに生活や仕事についてメモしておいたものを主治医に手渡しすることもできます。
ご自身が無理なく主治医とコミュニケーションをとれる方法で、日常生活や仕事の様子などをお伝えしましょう。
障害年金の診断書の種類
障害年金の診断書は、傷病により以下の8種類があります。
診断書を受け取ったら、封がしてあっても開封して記載内容を確認しておきましょう。
日付や記載事項に書き間違い、記入漏れなどがある場合は、主治医に加筆や訂正をお願いすることもあります。
ステップ5:病歴・就労状況等申立書を作成する
主治医に診断書を依頼したら、「病歴・就労状況等申立書」を作成しましょう。
「病歴・就労状況等申立書」とは、基本的に障害年金を申請する人が作成する書類で、発病から現在までの通院歴や病歴、日常生活の困りごとや仕事内容、周囲からのサポートなどを記載します。
病歴・就労状況等申立書には、年金の審査をする人に自分の生活や困りごとを知ってもらう役割があります。
病歴・就労状況等申立書を作成する際には「辛い」「悲しい」といった心情を述べるのではなく、日常生活やサポート内容などが審査する人に伝わるようにわかりやすく簡潔に書くことが大切です。
病歴・就労状況等申立書の書き方の詳細は、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介でわかりやすく解説していますのでぜひご一読ください。
ステップ6:請求書とその他の必要書類を準備する
受診状況等証明書や診断書、病歴・就労状況等申立書が準備できたら、それ以外に必要となる書類を準備しましょう。
障害年金を請求する人が必ず用意する書類は以下のとおりです。
- 年金請求書
- 年金手帳や基礎年金番号通知書など
- 戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか
- 診断書
- 受診状況等証明書
- 病歴・就労状況等申立書
- 障害年金を受け取る金融機関の通帳やキャッシュカード
戸籍謄本などは有効期限が決まっているものがあるため、いつ取得するかのタイミングを確認しておきましょう。
このほかにも、病歴や通院歴、家族構成により追加で準備する書類もあります。障害年金の必要書類の詳細は、障害年金の必要書類一覧!ケース別でわかりやすくご紹介で解説していますのでご覧ください。
ステップ7:年金事務所等へ提出する
障害年金の請求書と必要書類が揃ったら、年金事務所等に提出しましょう。
年金請求書等の提出先は、初診日に加入していた年金制度により次のようになります。
初診日に加入していた年金制度 | 提出先 |
---|---|
国民年金 | お住まいの市区町村役所 ※初診日に国民年金第3号被保険者だった人は、年金事務所または街角の年金相談センター |
厚生年金 | 年金事務所 街角の年金相談センター |
共済年金 | 初診日に加入していた共済組合 |
なお、審査の際に日本年金機構から申請内容の問い合わせが来ることもあるので、提出前に書類をコピーしておきましょう。
障害年金の手続きをスムーズに進めるためのポイント
障害年金の手続きを円滑に行うポイントは、以下のようなことがあります。
それぞれ順番にみていきましょう。
通院歴や病歴を整理する
障害年金の申請で必要となる初診日の確認のために、事前に自分の病歴や通院歴を整理しておきましょう。
特に、初診日はわかりづらいケースが多く、自分で考えていた医療機関ではなく別のところが初診の医療機関となることがあります。
正確な初診日を早く見つけ出すために、病歴や通院歴の整理をして時系列にまとめておくことが大切です。
初診がわかる参考書類を探す
初診の医療機関や転院先すべてに問い合わせても「受診状況等証明書」が取得できない場合、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成します。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」のみを年金事務所等に提出しても初診日が認められることはないため、初診日を証明したり、推測できたりする参考資料を添付しましょう。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」に添付する参考書類は次のようなものです。
- 身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
- 身体障害者手帳等の申請時の診断書
- 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の申立書
- 事業所等の健康診断の記録
- 母子手帳
- 健康保険の給付記録(レセプトも含む)
- お薬手帳・糖尿病手帳・領収書・診察券(可能な限り診察日や診療科がわかるもの)
- 小学校・中学校等の健康診断の記録や成績通知表
- 盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証明
- 第三者証明
「初診日が証明できない」と判明してから上記のような資料を探し始めると、その間は書類の作成や準備作業がストップしてしまいます。
受診状況等証明書が依頼できない事態に備えて、初診日がわかる書類が手元にあるかを確認しておくことをおすすめします。
年金事務所等とのやり取りを記録する
障害年金の相談や問い合わせをした際には、年金事務所等とのやり取りを記録しておきましょう。
障害年金の申請準備には早くて3か月、長いときは1年ほどかかることがあります。
申請の準備に長く時間がかかると、「前に年金事務所等からどんな指示を受けたか」を忘れてしまい、再度聞き直したり、調べ直したりするなどして調査に時間を取られてしまいます。
また、作業中に疑問点が出てきたときにも以前のやり取りの記録を確認すれば、再度問い合わせをすることなく解決できることも多くあり、時間をロスすることなく申請の準備を続けられるのです。
年金事務所等とのやり取りを記録して調査にかかるタイムロスを減らし、スムーズに書類等の準備を進めましょう。
障害年金の申請手続き|よくある質問
障害年金の申請手続きについて寄せられる質問に回答していきます。
障害年金はいつからもらえますか?
障害年金の申請から審査の結果が出るまでおおよそ3か月を要し、支給が決定すると「年金証書」と「決定通知書」が郵送でご自宅に届きます。その後、年金の支給が始まるまでには更に1か月ほどかかります。
障害年金の申請準備に4か月ほどかかるとすると、申請準備を始めてから支給されるまでに8か月以上を要することになります。
審査に時間がかかり、結果が出るのが遅れた場合でも支給される年金が減ることはありませんが、早く障害年金の手続きをしたいときには社会保険労務士に申請代行を依頼することを検討しましょう。
障害年金の申請で失敗しないためには、どうしたらいいですか?
障害年金の申請で失敗しないためには、請求書や病歴・就労状況等申立書などの書類をもれなく揃え、わかりやすく記載することが大切です。
足りない書類があったり、記載内容が不明瞭だったりすると年金の審査が滞るので、提出前によく確認してください。
また、年金は遅くなっても申請できますが、年金を遡って受け取れるのは最大で5年分なので早めに申請手続きをすることも念頭にいれておきましょう。
障害年金申請をサポートしてくれる機関はありますか?
障害年金申請をサポートしてくれる機関は以下のようなところがあります。
サポート機関 | 内容や特徴など |
---|---|
お住まいの市区町村役所 | ・相談できるのは、障害基礎年金のみ |
年金事務所 | ・相談だけではなく、申請のためのアドバイスももらえる |
街角の年金相談センター | ・年金事務所とほぼ同じサービスが受けられる |
社会保険労務士 | ・相談だけではなく、申請代行も依頼できる |
大きな医療機関ではソーシャルワーカーが年金の相談を受けるほか、通所されている方の障害年金申請をサポートする就労移行支援事業所もあります。
障害年金申請のサポート機関については、障害年金はどこで相談できる?悩みを解決する6つの窓口と利用法ガイドで更にわかりやすく解説していますので、ぜひご一読ください。
社会保険労務士は、高い専門知識と豊富な経験からあなたの障害年金の申請に正確なアドバイスを行います。
「自分で申請するのは大変だ」と感じる方へは代理人として申請代行いたしますので、障害年金でお困りの際は、ゆうき事務所にお気軽にお問い合わせください。
社会保険労務士への申請代行は障害年金の申請を依頼するメリットは4つ!【社労士の選び方もわかりやすく解説】で詳しく紹介しています。
まとめ
障害年金の手続きでは多様な書類を作成し、戸籍謄本などの必要書類を準備します。
障害年金の必要書類は、病歴や通院歴、家族構成などにより異なるため、「複雑でよくわからない」と感じる人も少なくありません。
「一発勝負の障害年金で失敗したくない」「体調が不安定で年金事務所に行けない」など自分や家族だけで障害年金の申請ができるのかと不安なときは、障害年金専門の社会保険労務士に申請代行を依頼してはいかがでしょうか。