更新日:2024.11.18
障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!
「障害年金をもらいたいけれど、障害年金を請求するのになにか条件はあるのかな」
「障害年金が受けられるかわからない。どこに相談したらいいんだろう」
障害年金の請求を考えるときに、こんな不安を持つ人は少なくありません。
障害年金を受けるには3つの受給要件を満たすことが必要です。
そこで、この記事では障害年金の受給要件をわかりやすく解説します。
自分に障害年金を請求する資格があるのか気になる人は、ぜひ参考にしてください。
目次
障害年金の3つの受給要件とは
障害年金を受給するには、下記の3つの要件をすべて満たすことが必要です。
順番に詳しく解説します。
初診日要件
初診日要件では、障害の原因となったけがや病気で初めて医療機関にかかった日(初診日)に下記のいずれかに該当することを求めています。
- 国民年金か厚生年金のいずれかの被保険者であること
- 20歳未満
- 日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間
(老齢基礎年金を繰り上げしている場合は除く)
初診日について次章で詳しく説明します。
初診日とは
初診日は、障害の原因となるけがや病気で、初めて医師や歯科医師の診療を受けた日です。
初診日を特定する際によくある勘違いとしては、病名がなかなか診断されず、転院をした先で病名がわかった日を初診日だと思うケースがあります。
この場合は、転院前の医療機関で初めて診療を受けた日が「初診日」となります。
初診日の具体例を下表にまとめました。
経緯 | 初診日 |
---|---|
体調が悪くて内科に行ったところ、精神科へ受診を勧められ、そこでうつ病の診断を受けた | 内科を受診した日 |
不眠症で心療内科を受診したが改善しないので、精神科に転院したところ発達障害だとわかった | 心療内科を受診した日 |
うつ病かもしれないと精神科を受診して検査を受けたら、先天性の知的障害があることがわかった | 出生日※※先天性の知的障害は、出生日を初診日とする |
整骨院や鍼灸院などの受診は医師の診療ではないため、初診日ではありません。
また、原則として健康診断を受けた日も初診日とは認められません。
障害年金の種類
初診日に加入していた年金によって、受け取れる障害年金の種類が変わります。
- 初診日に国民年金に加入の人 障害基礎年金
- 初診日に厚生年金に加入の人 障害厚生年金
具体例を下表にまとめました。
障害基礎年金を受け取る人 | 障害厚生年金を受け取る人 |
---|---|
・会社員、公務員の配偶者に扶養されている人 ・自営業やフリーランスの人 ・無職の人・生まれつき障害のある人 ・子どものころに障害を負った人 ・60歳~64歳までで老齢年金を受給していない人 ・60歳~64歳までに初診日があって、日本に住んでいる人 | ・会社員 ・公務員 |
60歳~64歳の人でも、老齢基礎年金を繰り上げて受給している人は、障害年金を請求できません。
また、10代で会社員や公務員になり、20歳までの厚生年金保険加入期間に「初診日」がある人は、「障害厚生年金」の対象となります。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
保険料納付要件
保険料納付要件は以下のいずれかを満たすことが求められます。
- 3分の2要件
初診日の前日において、初診日の前々月までに支払義務のある年金額の3分の2以上を納めている - 直近1年要件
初診日の前日において、初診日の前々月までの直近1年間に未納がないこと
なお、20歳前に初診日がある場合は、納付要件は問われません。
国民年金の加入年齢は20歳です。
生まれつきの障害や子どもの頃の病気やけがで障害を負った場合、年金に加入していないので保険料の支払い義務がないことから、保険料の納付要件は問わないこととされています。
保険料納付要件をそれぞれ詳しくみていきましょう。
3分の2要件
3分の2要件では、被保険者期間のうち、保険料を納付したり、免除を受けた期間があわせて3分の2以上あることを求めています。
被保険者期間とは、年金制度に加入した日から初診日の2か月前までの期間のことです。
被保険者期間のうち、下記の期間が合わせて3分の2以上あれば要件を満たせます。
- 保険料納付済期間※
- 保険料免除期間
- 保険料納付猶予
- 学生納付特例
※厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む
下図を例として3分の2要件をご説明します。
初診日の月 | 令和4年9月 |
初診日の2か月前の月 | 令和4年7月 |
被保険者期間 | 令和3年5月~令和4年7月(15か月) |
被保険者期間の3分の2 | 15×3分の2=12か月※ ※12か月が保険料納付または免除されていれば条件をクリアできる |
上記の例では、保険料納付済期間(9か月)+免除期間(3か月)=12か月となるため、被保険者期間の3分の2以上を満たしており、障害年金の保険料納付要件をクリアしています。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
直近1年要件
初診日が令和8年3月31日までにあるときは、次のすべての条件に該当すれば納付要件を満たせます。
- 初診日において65歳未満であること
- 初診日の前日において、初診日がある月の2か月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
下図を例に直近1年要件をご説明します。
初診日の月 | 令和4年9月 |
初診日の2か月前の月 | 令和4年7月 |
直近1年間 | 令和3年8月~令和4年7月(15か月) |
上記の例では、保険料納付済期間(8か月)+免除期間(4か月)=12か月です。
直近1年間に未納期間がないので保険料納付要件を満たしています。
保険料納付要件をまとめると下記のようになります。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
保険料納付期間の確認方法
年金の納付記録は、年金事務所や街角の年金相談センターで確認できます。
障害年金の請求時には正確な保険料納付記録が必要です。請求を検討する方は、お早めに年金事務所等で保険料納付記録を確認することをおすすめします。
実際にご自身が保険料納付要件を満たしているか調べる際には、はじめに初診日の2か月前から直近1年の間に未納期間がないかを見ましょう。
直近1年の間に未納があるときは、年金に加入した日から初診日の2か月前までの期間のうち、3分の2以上の期間が保険料を納付または免除を受けているかを確認します。
なお、初診日を過ぎてから過去の保険料を納付した場合は、納付済期間とは扱われず「未納」扱いとなります。
免除についても同様に、初診日を過ぎてから免除申請をした場合は、納付済期間になりません。
保険料納付要件をクリアしているかの判断が難しいときは、年金事務所や障害年金専門の社労士にご相談ください。
参考:全国の相談・手続き窓口|日本年金機構
参考:街角の年金相談センター一覧|全国社会保険労務士会連合会
障害の状態
障害年金の裁定では、「障害認定日」に「障害の状態が国の定める基準にあるか」をみています。
詳しくみていきましょう。
障害認定日とは
障害認定日とは、原則として初診日から1年6か月を経過した日またはそれ以前に病気やけがが治った日のことです。
「治った」とは、症状が固定化してこれ以上治療をしても効果が期待できなくなったことを指し、全快して症状が良くなったということではありません。
初めて医師の診療を受けた日から1年6か月を迎える前に、下表に該当する日があるときは、その日が「障害認定日」となります。
状況 | 障害認定日 |
---|---|
人工透析を行っている | 初めて人工透析を受けてから3か月を経過した日 |
人工頭骨または人工関節を挿入置換した | 挿入置換をした日 |
心臓ペースメーカー、ICD、人工弁などを装着した | 装着した日 |
脳血管障害で機能障害が残った | 初診日から6か月経過し症状が固定した日 |
人工肛門造設・尿路変更術をした | 造設・手術から6か月が経過した日 |
咽頭を全摘出した | 全摘出した日 |
在宅酸素療法を行っている | 開始した日 |
参考:障害認定基準|厚生労働省
参考:さ行 障害認定日|日本年金機構
障害の状態はどのくらい?
障害年金がもらえる障害の状態については、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準に細かく定められています。
障害の目安は以下のとおりです。
障害等級 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 日常生活で、他人の介助が不可欠な状態 |
2級 | 日常生活が困難で、場合によっては他人の介助が必要な状態 |
3級(障害厚生年金のみ) | 労働に著しい制限を受ける |
障害手当金(障害厚生年金のみ) | 障害等級に該当しない障害が残り、症状が固定している状態 |
障害のために日常生活や労働に困難があったり、制限がある場合は、障害年金の対象となる可能性があります。
障害認定日に障害等級に該当しなくても、その後悪化して障害等級に該当すれば障害年金を受給可能です。
障害年金の対象となる病気やけが
障害年金というと、身体が不自由な状態をイメージする人が多いですが、うつ病などの精神疾患も障害年金の対象となります。
下記に対象となる主な病気やけがをまとめました。
身体障害 | 突発性難聴、緑内障、脊髄損傷、関節リウマチなど |
精神障害 | うつ病、統合失調症、発達障害(ADHD、ASD、LD)など |
脳の疾患 | 脳梗塞、くも膜下出血、高次脳機能障害、てんかんなど |
内部障害 | 気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎、糖尿病、人工透析、がんなど |
上記に挙げたのはほんの一部で、ほとんどの疾患が障害年金の対象です。
診断名や傷病名に注目しがちですが、障害年金は傷病名等ではなく、障害により日常生活や仕事にどのくらい制限や支障が出るかで判断されることが大きな特徴です。
「障害の状態」についてのまとめは以下のようになります。
障害年金の受給要件でよくある質問
障害年金の受給要件でいただく質問を集めました。
順番にみていきましょう。
初診日がわからないときはどうする?
長い期間療養している場合、初めて行った病院がわからなかったり、思い出せなかったりする人も少なくありません。
そんなときは、以下のような書面が手元に残っていないか確かめましょう。
- 過去の病院の領収書
- 過去のおくすり手帳
- 過去に通院していた病院の診察券
上記の書面から推測して、初めて受診した可能性のある医療機関に、初診日の証明が取れるかを確認します。
初めて診療を受けた医療機関でカルテが廃棄されていたり、医療機関の閉院などで初診日の証明が取れない場合は「受診状況等証明書が添付できない申立書」を年金事務所に提出します。
主な添付書類は下記のとおりです。
- 障害者手帳
- 障害者手帳を作成したときの診断書
- 当時の診察券
- 健康診断書 など
初診日が特定できない場合は、障害年金を請求できません。
自分で初診日を特定するのが難しいときは、障害年金専門の社労士に相談できます。
障害年金をもらうのに年齢は関係ある?
障害年金は、原則として20歳から64歳までの人が請求できるとされており、初診日に65歳以上の人は、障害年金を請求できません。
65歳以上の人でも請求できるケースはありますが、受け取れる障害年金は少額です。
年金は「1人1年金」と定められており、2つの年金が受け取れるときはどちらかを1つを選択します。
65歳以降の人の場合、老齢年金の方が年金額が多いため、障害年金を選択する人はほぼいません。
そのため、65歳以上の人で障害年金を請求するのはレアケースといえるでしょう。
働いていても障害年金はもらえる?
結論からいうと、障害年金は働いていても受け取れます。
目や耳の疾患など、障害の状態が数値で測れる障害は、仕事をしていても障害年金の審査や更新に影響が少ない傾向があります。
うつ病や発達障害などの精神疾患や、がんなどの内部障害は、障害の状態を数値で判断できないことから、働いていることで「障害が軽い」と判断されるケースが少なくありません。
そのようなときには、仕事について会社からどのようなサポートを受けているか、仕事内容や就労制限を診断書等の提出書類に反映することが大切です。
例えば、下記のような状態であれば、提出書類に記載するといいでしょう。
- 障害者雇用枠で働いている
- 障害があるために短時間の仕事をしている
- 簡単な作業だけ担当している
- 休職中である
厚生労働省の統計によると、障害年金を受ける人のうち約4割の人が仕事をしています。
「自分は働けるから障害年金は無理だろう」と諦めずに、年金事務所や障害年金専門の社労士へ、ご相談することをおすすめします。
参考:令和元年 年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)|厚生労働省
未納にしないで免除申請すると、どんなメリットがある?
先ほどご説明したように、保険料の免除や納付が猶予された期間は、年金の受給資格期間に算入されます。
病気やけがで障害が残ったときの障害年金や、一家の働き手が亡くなったときに遺族年金が受給可能です。
また、全額免除をすれば、保険料を支払わなくても老齢年金を受け取る際に年金額の2分の1が受け取れます。
例えば、40年間全額免除した場合は、年間で397,500円(令和5年度の額)の老齢基礎年金が支給されますが、手続きをせずに「未納」の場合は、0円です。
失業して保険料の支払いが難しい人や、学生で収入が少ない人はお住いの役所の国民年金の窓口や年金事務所で免除・納付猶予の手続きをしましょう。
まとめ
障害年金は、「初診日要件」「保険料納付要件」「障害の状態」の3つをすべて満たしたときに支給されます。
初めてかかった医療機関を忘れたり、カルテが残っていないなど、初診日を客観的に証明することが難しいケースも少なくありません。
また、保険料を一定期間納めているかもわかりづらく、障害年金の請求はハードルが高いと感じる方も多いでしょう。
主治医への診断書の依頼方法や、提出書類の書き方がわからないなど、障害年金の請求にお困りのときは、ゆうき社会保険労務士事務所におまかせください。