更新日:2024.02.27
大人のASD(自閉症スペクトラム症)とは?特徴や診断、支援先もご紹介
ASD(自閉症スペクトラム症)などの大人の発達障害は、最近テレビやネットニュースなどでよく聞かれるようになりました。
ASDのある人は、悪気はないのに「ちょっと変わっている人」「話しづらい人」と思われがちで、誤解されることが多くあります。
この記事では、大人の発達障害のひとつ「ASD」の特徴や診断について解説します。
ASDの支援先も紹介するので、ASDを詳しく知りたい人は参考にしてください。
目次
大人のASD(自閉症スペクトラム症)とは?
ASD(自閉症スペクトラム症)は、発達障害のひとつです。
発達障害は大きく3つに分類されます。
- ASD(自閉症スペクトラム症)
- ADHD(注意欠如・多動症)
- LD(学習障害)
ASDは、先天的に脳機能の発達がアンバランスであることから行動や態度に様々な特徴が表れる障害で、幼少期から特徴が表れます。
生まれつきの脳機能によるものなので、大人になってASDになるわけではありません。
子どものころは親や先生など周囲のフォローを受けて、発達障害の特徴に気づかず成長します。
大人になって困りごとに直面して初めて「ASD」だと気づくのが「大人のASD(自閉症スペクトラム症)」です。
大人になってわかる発達障害は、ASDとADHDが多く、LDはほとんどありません。
参考:大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!|政府広報オンライン
大人のASD(自閉症スペクトラム症)の特徴と困りごと
大人のASDで見られる特徴と困りごとをみていきましょう。
対人関係で見られる特徴と困りごと
ASDのある人が対人関係で見られる特徴と困りごとは、以下のようなことがあります。
特徴 | 困りごと |
---|---|
言葉以外でのコミュニケーションが苦手 | 相手の表情、声のトーン、ジェスチャーなどの意味を読み取るのが難しい |
会話が不自然になる | 自分が一方的に話してしまい、相手と相互理解ができない |
場の空気を読むのが苦手 | 場違いな発言や行動をしてしまう |
親しい関係を築くことが難しい | 相手の気持ちに共感することが難しく、孤立してしまう |
ASDのある人は、相手とコミュニケーションをとることが苦手です。
特に、面接では面接官とのやり取りがうまくできず、就職活動に苦労する人も少なくありません。
また、悪気なく発言したことで相手を怒らせるなど、人と信頼関係を築くのが苦手な傾向があり、友人関係を築くことが難しいこともあります。
仕事や学習で見られる特徴と困りごと
続いて、職場や学校で見られる特徴や困りごとをみていきましょう。
特徴 | 困りごと |
---|---|
相手からの指示が理解できない | 曖昧な指示や複雑な手順を理解できず、ミスをしてしまう |
柔軟な対応が苦手 | 予定外の変更や突発的な出来事に対応することができない |
集中力を持続することが難しい | 興味のない分野は集中力が続かない |
こだわりが強い | 特定の物事や手順に強いこだわりがあり、いつもと違う状況になると混乱する |
感覚が鋭い | 音や光、においなどに敏感で、集中力が途切れてしまう |
ASDのある人は、仕事を進めるなかで臨機応変な対応ができなかったり、複数の業務を並行して取り組んだりすることが苦手です。
そのため、「要領の悪い人だ」「手際が悪くて困る」などと言われて、社内の評価を落としてしまうことがあります。
日常生活で見られる特徴と困りごと
ASDのある人の日常生活で見られる特徴や困りごとは次のようなことがあります。
特徴 | 困りごと |
---|---|
時間管理やスケジュール管理が苦手 | 時間の感覚が曖昧で、遅刻したり約束を忘れたりすることがよくある |
家事や身の回りの世話ができない | 手順や段取りを理解することが難しく、うまくできないことがある |
外出があまり好きではない | 人混みや騒音が苦手で、外出を避けてしまうことがある |
友達との約束を忘れることが続き、「信用できない人だ」と言われて、自信を失うこともあります。
二次障害が起きることも
ASDのある人は、周囲とコミュニケーションを取ることが苦手なため、会社や学校では孤立しやすくなります。
段取りを理解したり、相手の意思を組んで行動するのが難しいため、仕事や人づきあいで失敗することが多くあるのです。
このような状況が長く続くと、自己肯定感が低下して、自分の能力に自信が持てなくなり、落ち込んでしまうこともあるでしょう。
さらに、社会生活や経済的な不安が重なり、自分の将来を悲観して、うつ病や不安症を発症してしまうこともあります。
しかし、ASDの特徴の出方には個人差が大きく、日常生活での不自由を感じることなく過ごせる人もいます。
例えば、興味のある分野で集中力を発揮できる特徴を生かせる仕事であれば、とことんまで突き詰めて作業ができるので、大きな成果をあげることもできるでしょう。
このようにASDの特徴が自分の生活や環境にマッチすれば、生きづらさを感じずに生活できることもあるのです。
参考:大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!|政府広報オンライン
大人のASD(自閉症スペクトラム症)の診断
ASDの診断を受けたいと思ったとき、どこに相談すればいいのでしょうか。
ASDの診断ができる場所や診断方法をご紹介します。
大人のASD(自閉症スペクトラム症)の診断場所
ASDを含む発達障害は、精神科やメンタルクリニックで診断できます。
現在、大人の発達障害を診察できる医療機関は、あまり多くありません。
受診予定のクリニック等で発達障害を診てもらえるか、事前に確認しましょう。
お住まいの地域によって、発達障害を診る医療機関の数や規模には差があります。
いざ診察を受けようとしても、診察の予約が数カ月先となることも多いので、早めに確認して予約をすることがおすすめです。
また、自治体によっては、発達障害を診察する医療機関を調べてリスト化し、ホームページで公開しています。
それぞれの医療機関で受けられる検査項目や対応できる疾病など、詳細な情報を網羅したリストを公開する自治体もあります。
お住まいの自治体のホームページを確認してみましょう。
大人のASD(自閉症スペクトラム症)の診断方法
ASDを含む発達障害は、主に問診と検査を行い診断を行います。
大人のASD(自閉症スペクトラム症)の問診
問診では、出生から現在までの生活の様子や困りごと、成長過程を聞かれます。
問診の際に、医師から質問されることをまとめました。
項目 | 聞かれること |
---|---|
子どものころの様子 | ・どんな子どもだったのか ・成長過程 ・子どものころの困りごと ・学校の成績 ・友達関係 など |
現在のこと | ・今の生活の様子 ・生活で困っていること ・仕事の内容 ・仕事上の悩みや困りごと ・友達関係 など |
健康のこと | ・現在かかっている病気 ・既往歴 ・家族や親族の病歴 など |
問診では、生まれてからこれまでの生活や困りごとを幅広く聞かれるので、あらかじめメモしてまとめておきましょう。
また、問診のときに次のようなものを持参すると、医師が情報を集めるのに役立ちます。
- 母子手帳
- 小学校などの連絡帳
- 通知表
- 子どものころの成長記録 など
できる限りで構わないので、事前に上記のような準備しておくとスムーズに診察に臨めるでしょう。
大人のASD(自閉症スペクトラム症)の検査
発達障害を診断する検査では、発達障害と似ている疾病があるかを判断するために行います。
例えば、血液検査をして甲状腺の病気を調べたり、脳波を測定しててんかんの可能性がないかを探ります。
通常、一度の診察で診断が出ることはなく、半年程度通院したのちにASDの症状が継続している場合にASDと診断されます。
大人のASD(自閉症スペクトラム症)と共に生きる方法
ASDとの診断を受けて「やっぱり自分はASDだったんだ」と腑に落ちると同時に、これからどうしたらいいのかと不安になる人も多いでしょう。
そこで、ASDとの付き合い方を3つご紹介します。
順番にみていきましょう。
自分の特徴を理解する
ASDとうまく付き合うためには、自分の特徴をしっかりと理解することが大切です。
ひとくちに「ASD」と言っても、特徴は人それぞれで特徴の出方も違います。
まず、これまでの生活や困りごとを思い出して、「どんなときに何ができなかったのか」を書き出してみましょう。
自分の不得意なことがわかれば、これからの生活で困ったことが起きても対策が立てやすくなります。
これまでの自分を改めて振り返ると、できないことだけではなく、得意なことや人よりもうまくできることがあることにも気づくかもしれません。
得意なことや自慢できることを見つけたら、忘れずに書き留めておきましょう。
生活を工夫する
ASDの特徴からくる困りごとは、生活を工夫することで改善できます。
困りごとと対策をいくつか例示します。
困りごと | 対 策 |
---|---|
柔軟な対応が苦手 | ・変更のないルーティン作業の仕事に就く |
相手からの指示が理解できない | ・口頭だけではなく、メールなど文字でも指示をもらう ・相手の了承を得て、指示を動画に撮っておく |
時間やスケジュール管理が苦手 | ・スマホのアラーム機能やスケジュール機能を活用する ・家族と自分の予定を共有して、事前に知らせてもらう |
スマホやスマートウォッチなどのデジタル機器をうまく活用し、自分の苦手な分野を補える機能があれば積極的に取り入れましょう。
自分のできないことは周りにフォローしてもらう
自分で工夫してもできないことは、周りの人に手伝ってもらうことを検討しましょう。
人に頼ることが「申し訳ない」と感じるかもしれませんが、結果的にできない方が迷惑をかけることも多くあります。
周囲にフォローをお願いするときは、「自分のできないことはどんなことか、どんな手助けが必要か」を具体的に説明するのが大切です。
また、自分の日常生活や仕事のことを相談したいときや、生活のサポートを受けたいときには、次章で紹介する支援先を利用することも視野に入れましょう。
大人のASD(自閉症スペクトラム症)の支援先
ASDを含む発達障害を支援するところを5つご紹介します。
それぞれみていきましょう。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、地域における総合的な支援ネットワークを構築し、発達障害のある人とその家族からのさまざまな相談に応じ、指導と助言を行う機関です。
発達障害のある人とその家族が豊かな地域生活を送れるように、就労や医療の相談、支援の方法などの相談を無料で行っています。
発達障害者支援センターは、発達障害の診断がなくても利用できます。
「もしかしたら発達障害かもしれない」と不安に思う人は、一度訪れてみてはいかがでしょうか。
お近くの発達障害者支援センターは、発達障害者支援センター・一覧でご覧ください。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害者の就業と生活の自立を目指している機関です。
ハローワークや保健所、医療機関と連携して就業と生活の相談・支援を行っており、通称「なかぽつ」とも呼ばれています。
健康管理、金銭管理等の相談や、住まいや年金などの生活設計、仕事での困りごとなど幅広い相談を受けています。
お近くのセンターは、障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省で確認できるほか、お住まいの自治体のホームページにも掲載されています。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、心の健康に関する相談を受け付け、必要な支援につなげるための支援機関です。
心の悩みや精神疾患のある人やその家族などが無料で相談できます。
医師や精神保健福祉士などの専門の相談員が、精神科医療や社会復帰、メンタルヘルスなどさまざまな相談にのり、社会復帰に向けてサポートしています。
近くのセンターは全国の精神保健福祉センター|厚生労働省でご覧ください。
お住まいの市区町村役所
発達障害の診断が出ると、障害者手帳の申請ができることがあります。
障害者手帳を所持すると、所得税や自動車税などの税金の優遇や医療費の助成などが受けられたり、障害者雇用枠での就職ができたりします。
障害者手帳の相談と申請は、お住まいの市区町村役所へお問い合わせください。
年金事務所や社労士事務所
発達障害の診断が出ると、障害年金の請求ができることがあります。
障害年金は、現役世代の人が障害を負ったときに請求できる年金で、ASDを含む発達障害も請求の対象です。
障害年金を受ける大きなメリットは、経済的な負担が軽減され、生活が安定することです。
金銭面での不安が減れば、治療や療育を継続しやすくなるでしょう。
障害年金の相談や申請は、年金事務所や街角の年金相談センターで対応しています。
お近くの年金事務所は、全国の相談・手続き窓口|日本年金機構でご確認ください。
街角の年金相談センター一覧からお近くのセンターをご覧いただけます。
また、障害年金は「障害年金専門の社労士事務所」でもご相談いただけます。
ゆうき社会保険労務士事務所では、発達障害やうつ病での障害年金の請求の相談を受け付けています。
障害年金を詳しく知りたい方は、障害年金とは?何歳から請求できる?社労士がわかりやすく解説でわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
ASDを含む発達障害は、先天的な脳の発達がアンバランスなことが原因でおこる障害です。
生まれつきの疾患なので、大人になって発症するわけではなく、幼少期からASDの特徴が表れます。
ASDであっても、周りの人に助けてもらったり、スマホなどのデジタル機器を利用することで、困りごとを減らしていくことが可能です。
精神科やメンタルクリニックでアドバイスを受けたり、発達障害者支援センターなどの支援機関をうまく利用しましょう。
ASDと診断されると、障害年金を請求できることがあります。
障害年金を受ければ、経済的な負担を減らし、生活が安定して療養をつづけられます。
障害年金の請求が難しいときは、ゆうき社会保険労務士事務所へご相談ください。