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COLUMN

大人のASDとは?生活や仕事の困りごとと障害年金の備え方

「人との会話がかみ合わない」「急な予定変更が苦手」「仕事でミスが多いと言われる」――。

こんな悩みを感じている方は、ASD(自閉スペクトラム症)の可能性があります。

ASDは子どもの発達障害のイメージがありますが、大人になって初めて自分の特性に気づく人も少なくありません。

本記事では、大人のASDの特徴や生活・仕事での困りごと、さらに経済的支援である障害年金のポイントもわかりやすく解説します。

大人のASD(自閉症スペクトラム症)とは?

ASD(自閉スペクトラム症)は、生まれつき脳の発達に偏りがあることで、行動や考え方に特徴が現れる障害です。

大人になってASDになるわけではなく、幼少期から脳の特性として存在しています。
子どものころは周囲のサポートや環境によって特性が目立たず、本人も「自分はちょっと変わっているけれど…」くらいにしか感じないことがあります。

大人になり、社会生活や仕事で困りごとが増えて初めて「もしかして自分はASDなのかもしれない」と気づくのが、「大人のASD」です。

ASDは決して性格や努力の問題ではなく、脳の先天的な特性によるものです。

出典:発達障害ってなんだろう?|政府広報オンライン

発達障害の種類

発達障害は主に以下の3つに分類されます。

  • ASD(自閉症スペクトラム症)
  • ADHD(注意欠如・多動症)
  • LD(学習障害)

大人になってわかる発達障害は、ASDとADHDが多く、LDはほとんどありません。

なお、以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」と呼ばれていましたが、現在はこれらをまとめて「ASD」と診断されます。

参考:発達障害(神経発達症)|こころの情報サイト

参考:大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!|政府広報オンライン

大人のASDチェックリスト|自分の特性を理解するための簡単セルフチェック

ASDの特性は人によってさまざまです。
「もしかして自分もそうかも」と感じている方は、次の質問に「はい/いいえ」で答えてみましょう。

テキスト大人のASDチェックリスト
  • 人と話していると、相手の気持ちや空気がつかみにくい
  • 雑談や世間話が苦手で、何を話せばいいかわからない
  • 自分なりのルールや順番が崩れるとイライラする
  • 興味のあることは何時間でも続けられるが、興味のないことは集中できない
  • 音・光・においなどに敏感、または鈍感だと感じる
  • 言葉どおりに受け取りやすく、冗談やあいまいな表現が苦手
  • 人混みや大きな音の場所が苦手で疲れやすい
  • 予定の変更や突然の出来事に強いストレスを感じる
  • チームで動くより、一人で作業する方が楽
  • 相手の反応を気にせず一方的に話してしまうことがある
  • 忘れ物やうっかりミスが多い
  • 「変わっている」と言われることがある
  • 感情をうまく表現できず、誤解されやすい
  • 子どもの頃から集団が苦手だった

チェックの結果

  • 「はい」が 5個以上:ASDの傾向があるかもしれません。
  • 「はい」が 8個以上:生活や仕事で困りごとがある場合は、発達障害に詳しい医療機関へ相談をおすすめします。

このチェックリストは自己理解の目安です。正式な診断を知りたい人は医療機関を受診しましょう。

大人のASDの生活・仕事での困りごと

ASDの特徴は、対人関係・仕事・日常生活にさまざまな困りごととして現れます。ここでは表を使って整理します。

対人関係で見られる特徴と困りごと

ASDのある人が対人関係で見られる特徴と困りごとは、以下のようなことがあります。

特徴困りごと
言葉以外でのコミュニケーションが苦手相手の表情、声のトーン、ジェスチャーなどの意味を読み取るのが難しい
会話が不自然になる自分が一方的に話してしまい、相手と相互理解ができない
場の空気を読むのが苦手場違いな発言や行動をしてしまう
親しい関係を築くことが難しい相手の気持ちに共感することが難しく、孤立してしまう

入試や就職活動の面接では面接官とのやり取りがうまくできず、苦労することがあります。

仕事や学習で見られる特徴と困りごと

続いて、職場や学校で見られる特徴や困りごとをみていきましょう。

特徴困りごと
相手からの指示が理解できない曖昧な指示や複雑な手順を理解できず、ミスをしてしまう
柔軟な対応が苦手予定外の変更や突発的な出来事に対応することができない
集中力を持続することが難しい興味のない分野は集中力が続かない
こだわりが強い特定の物事や手順に強いこだわりがあり、いつもと違う状況になると混乱する
感覚が鋭い音や光、においなどに敏感で、集中力が途切れてしまう

複数の業務を同時にこなしたり、臨機応変な対応ができず、「要領の悪い人だ」「手際が悪くて困る」などと言われて、社内の評価を落としてしまうことがあります。

日常生活で見られる特徴と困りごと

ASDのある人の日常生活で見られる特徴や困りごとは次のようなことがあります。

特徴困りごと
時間管理やスケジュール管理が苦手時間の感覚が曖昧で、遅刻したり約束を忘れたりすることがよくある
家事や身の回りの世話ができない手順や段取りを理解することが難しく、うまくできないことがある
外出があまり好きではない人混みや騒音が苦手で、外出を避けてしまうことがある

友達との約束を忘れることが続き、「信用できない人だ」と言われて、自信を失うこともあります。

二次障害が起きることも

ASDのある人は、環境とのミスマッチによってうつ病や不安障害といった二次障害を起こすことがあります。

しかし、ASDの特徴の出方には個人差が大きく、日常生活での不自由を感じることなく過ごせる人もいます。プログラミングやデザイン、研究職など、興味のある分野では集中力を発揮し、大きな成果をあげることもできます。

参考:発達障害(神経発達症)|こころの情報サイト

参考:大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!|政府広報オンライン

大人のASD(自閉スペクトラム症)の診断と医療機関

ASDの診断には、精神科や心療内科の受診が必要です。診断は問診と検査を通じて行われます。

大人のASD診断の流れ

ASDの診断を受けるには、精神科や心療内科を受診します。診断までの流れは次のとおりです。

大人のASD診断までの流れ
  1. 精神科や心療内科を受診
  2. 問診:子どものころの様子、成長過程、生活・仕事の困りごとを確認
  3. 検査:心理検査、血液検査、必要に応じて脳波など
  4. 診断:半年程度通院し、症状の継続性を確認して診断

発達障害を診察する医療機関は多くなく、予約が数カ月先になることもあります。受診前に、発達障害の診察が可能かを確認しましょう。

MEMO
自治体によっては、発達障害を診る医療機関のリストを公開しています。事前にお住まいの自治体のホームページをチェックしてください。

医療機関受診の準備

大人のASDは、主に問診と検査で診断します。

問診では、子どものころの様子や成長過程、現在の生活・仕事での困りごと、健康状態などを詳しく聞かれます。あらかじめメモしてまとめておきましょう。

問診のときに次のようなものを持参すると、医師が情報を集めるのに役立ちます。

  • 母子手帳
  • 小学校などの連絡帳
  • 通知表
  • 子どものころの成長記録 など

できる限りで構わないので、事前に上記のような準備しておくとスムーズに診察に臨めるでしょう。

 

大人のASD(自閉症スペクトラム症)の検査

発達障害を診断する検査では、発達障害と似ている疾病があるかを判断するために行います。

例えば、血液検査をして甲状腺の病気を調べたり、脳波を測定しててんかんの可能性がないかを探ります。

通常、一度の診察で診断が出ることはなく、半年程度通院したのちにASDの症状が継続している場合にASDと診断されます。

大人のASDと共に生きるための3つのポイント

ASDと診断されると、「自分はやっぱりそうだった」と納得すると同時に、これからの生活への不安も出てきます。
ここでは、ASDとの付き合い方を3つのポイントにまとめました。

順番にみていきましょう。

自分の特徴を理解する

自分にはどんな特徴があるかを理解すると、ASDと付き合いやすくなります。

これまでの生活や困りごとを振り返り、「何ができなかったか」「どんな場面で困ったか」を書き出してみましょう。得意なことや自慢できることも同時に整理すると、自信や生活の工夫につながり、自己肯定感もアップします。

生活を工夫する

自分の困りごとに応じて環境を整えたり、習慣を変えたりするとに日常生活が楽になります。
困りごとの対策を3つ例示します。

困りごと対 策
柔軟な対応が苦手・変更のないルーティン作業の仕事に就く
相手からの指示が理解できない・口頭だけではなく、メールなど文字でも指示をもらう
・相手の了承を得て、指示を動画に撮っておく
時間やスケジュール管理が苦手・スマホのアラーム機能やスケジュール機能を活用する
・家族と自分の予定を共有して、事前に知らせてもらう

スマホやスマートウォッチなどのデジタル機器をうまく活用し、自分の苦手な分野を補える機能があれば積極的に取り入れましょう。

自分のできないことは周りにフォローしてもらう

自分で工夫しても難しいことは、周囲に手伝ってもらいましょう。

フォローをお願いするときは、「何ができないか」「どんな支援が必要か」を具体的に伝えるとスムーズです。
また、自分の日常生活や仕事のことを相談したいときや、生活上のサポートを受けたいときには次章で紹介する公的な支援機関の利用も検討しましょう。

大人のASD(自閉スペクトラム症)の支援する5つの機関

ASDを含む発達障害を支援する5つの機関を一覧表にしました。

支援機関主な内容・特徴利用のポイント
発達障害者支援センター・発達障害のある人と家族の相談・助言
・就労や医療、生活支援など
・診断がなくても利用可
・「発達障害かも」と思ったら相談できる
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)・就業支援と生活の自立支援
・健康・金銭・住まい・年金・仕事の相談など
・ハローワーク
・医療機関と連携
・自治体HPで最寄りを確認
精神保健福祉センター・心の健康や精神疾患の相談
・社会復帰やメンタルサポート
・医師や専門相談員が対応
・無料で相談できる
市区町村役所・障害者手帳の申請
・税金優遇
・自立支援医療(医療費の1割負担)
・発達障害の診断が必要
・手帳の申請窓口は役所で確認
年金事務所
社労士事務所
・障害年金の請求・生活の安定、経済的負担の軽減・ASDも障害年金の対象
・社労士事務所では専門的に相談・申請もサポート

相談のポイント

発達の特性による生きづらさを感じたときは、まず「発達障害者支援センター」や「なかぽつ(地域の相談支援センター)」などに相談してみましょう。
一人で抱え込まず、専門の支援員と一緒に「今、どんなことが困っているのか」「どんなサポートが必要か」を整理していくことが大切です。

医療機関で正式な診断を受けたあとは、状況に応じて「障害者手帳」や「自立支援医療」「障害年金」などの制度を利用することもできます。
診察や相談の前に、日常で感じている困りごとをメモしておくと、話がスムーズに進みやすくなります。

安心して暮らせる環境を整えていきましょう。

大人のASDで障害年金を受け取るためのポイント

ASDは、症状が重く日常生活や就労が難しい場合に障害年金の対象となります。
ただし、診断名だけで受給できるわけではなく、生活への支障がどの程度あるかが重要です。

審査では、次のような点が重視されます。

  • 医師の診断書に「日常生活能力の程度」が具体的に記載されているか
  • 就労状況(職場での配慮・支援の有無)
  • 対人関係やコミュニケーションの困難さ

例えば、「指示を理解できず仕事が続かない」「感情のコントロールが難しく人間関係が維持できない」「外出や買い物が一人でできない」といった状態であれば、障害年金が認められる可能性があります。

ASDでの障害年金受給については、ASD(自閉症スペクトラム症)で障害年金をもらうのは難しい?受給条件や年金額もご紹介!でわかりやすく解説しています。

ゆうき事務所代表社労士が、動画で「障害年金」について解説しています。ぜひご覧ください。

大人のASDでの障害年金を申請するときの注意点

大人のASDで障害年金を申請する際は、診断書の書き方や書類の準備が重要です。医師がASD特性を十分に理解していないと、症状が正確に反映されず不支給になるケースもあります。

発達障害や障害年金の申請に詳しい社労士に相談すると、書類作成や診断書の依頼がスムーズになります。

社労士溝上裕紀
溝上社労士

ゆうき事務所では、発達障害やうつ病での障害年金申請の代行を承ります。「主治医とコミュニケーションが取れない」「書類が難しくて書けない」などでお困りのときはお気軽にご相談ください。

障害年金を詳しく知りたい方は、障害年金とは?何歳から請求できる?社労士がわかりやすく解説でわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。

まとめ

大人のASDは、「努力不足」や「性格の問題」ではありません。
先天的な 脳の特性によるものであり、適切な理解と支援があれば、安心して生活することができます。

ASDでの困りごとで仕事や日常生活に支障が出ている場合は、障害年金の受給を検討する価値があります。

書類作成や診断書の準備に不安がある場合は、障害年金専門の社労士へ相談しましょう。

 

 

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