更新日:2025.06.20
障害年金の審査は診断書で決まる?知っておきたい注意点と社労士のサポート

障害年金の申請で最も重要となる書類は「診断書」だということをご存知ですか。
医師が作成する診断書に記載された内容は、障害年金の受給や障害等級の決定の大きな判断材料となっています。
しかし、「診断書って、いつの時点のものなの?」「有効期限はあるの?」など診断書について疑問を持つ人も多いようです。
そこでこの記事では、障害年金の診断書について、医師への依頼方法や有効期限、必要枚数などを中心にお伝えしていきます。
障害年金の診断書について疑問や不安のある人はぜひ最後まで読んで、お役立てください。
目次
障害年金の審査は診断書で決まるって本当?
結論からお伝えすると、診断書は障害年金の審査において最重要書類であり、受給の可否を決めると言っても過言ではありません。
障害年金の受給決定には、ご自身の障害の程度や日常生活への影響を、客観的かつ医学的に証明することが不可欠だからです。
その中心となるのが、主治医によって作成される「診断書」です。
日本年金機構の審査官は、提出された診断書の内容に基づき、障害認定基準に照らし合わせて受給の可否を判断します。
いくらご本人が年金事務所の職員に症状のつらさを訴えても、診断書にそれが適切に反映されていなければ、残念ながら不支給となってしまうケースも少なくありません。
障害年金の申請を検討されている方は、まずこの点を強く認識しておきましょう。
障害年金の審査で見られる診断書のポイントはどこ?
障害年金の審査の際に、診断書で見るポイントは次のようなことが挙げられます。
- 障害の程度・状態の正確な記載
- 日常生活への影響
- 客観的な根拠
- 「病歴・就労状況等申立書」との整合性
- 初診日の証明
順番に見ていきましょう。
障害の程度・状態の正確な記載
障害年金の診断書では、あなたの障害の程度や状態が、審査官に伝わるように正確に記載されていることが重要です。
診断書に症状や障害の程度が正しく記載されていなければ、本来受給できるはずの障害年金が不支給になってしまう可能性も否定できません。
これまでの治療歴や現在の治療内容、今後の見通しなど、障害年金の審査に必要となる情報をすべて盛り込んだ診断書を作成してもらえるように、医師に伝えることが大切です。
日常生活への影響
診断書には、単に病名や症状だけでなく、その障害によって具体的にどのような形で日常生活が困難になっているのかを記載してもらうことが不可欠です。
障害年金の審査では、あなたの障害が日常生活にどれほど影響を与えているかが重視されます。
例えば、食事の準備や入浴、着替えといった基本的な動作から、家事全般、公共交通機関の利用、対人関係の構築、さらには就労といった社会活動に至るまで、日常生活の自立度が低下している具体的な状況が示される必要があります。
客観的な根拠
診断書に記載される内容は、単に主観的な症状の訴えだけでなく、それを裏付ける医学的なデータや事実に基づいている必要があります。
障害年金の審査では、あなたの障害状態を示す客観的な根拠が重要視されます。
例えば、身体疾患であれば、血液検査の数値、レントゲンやMRIなどの画像診断の結果、心電図や脳波といった専門的な機能検査の結果などが挙げられます。
これらの具体的な数値やデータが、あなたの障害の程度を裏付ける強力な証拠となります。
【 精神疾患の場合は? 】
うつ病や統合失調症などの精神疾患の場合、数値で明確に表せるデータがないため、診断書には別の種類の「客観性」が求められます。
主治医に診断書を依頼する際は、具体的な検査データや日常生活での困りごとを明確に伝え、反映してもらうよう心がけましょう。
「病歴・就労状況等申立書」との整合性
医師が作成する診断書と、ご自身で作成する「病歴・就労状況等申立書」に整合性があることは障害年金の審査では重要視されるポイントです。
障害年金の審査では、提出するすべての書類の間に矛盾がないかどうかが厳しくチェックされます。
「病歴・就労状況等申立書」は、あなたの病気の歴史や治療経過、そして現在どのような症状があり、それが日常生活や仕事にどう影響しているのかを、ご自身の視点でまとめる書類です。
これは、医学的な視点から書かれた診断書だけでは伝えきれない、あなたの具体的な困りごとや生活の実態を補完する役割を持っています。
もし診断書に書かれている内容と、「病歴・就労状況等申立書」に書かれている内容が食い違っていると、審査官はどちらの記述を信じてよいか判断に迷い、結果として不支給となるリスクが高まります。
障害年金の申請においては、これらの書類が互いに補完し合い、一貫した情報を提供できるよう、診断書の内容を十分に理解した上で、申立書を作成することが大切だといえるでしょう。
病歴・就労状況等申立書の詳細は、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介をご覧ください。
初診日の証明
障害年金の診断書には、あなたがその病気やけがで初めて医師の診察を受けた「初診日」が明確に記載されている必要があります。
障害年金の申請において、初診日を正確に証明することは、受給資格を満たすための絶対条件です。
もし、診断書に初診日が記載されていなかったり、記載されていてもそれが客観的な証拠と一致しなかったりすると、障害年金の審査が滞ったり、最悪の場合、受給資格がないと判断されてしまう可能性があります。
特に、長い年月が経過している場合や、複数の医療機関を受診している場合など、初診日の特定が困難なケースも少なくありません。
なお、障害年金の初診日については、障害年金の初診日とは?カルテがないときの対処法もご紹介!で詳しく解説しています。
障害年金の審査時に診断書で見るポイントまとめ
障害年金の審査時に診断書で見るポイントを下表にまとめました。
チェックポイント | 内容例 |
---|---|
診断名・症状の詳細 | 病名、具体的な症状、発症時期、経過など |
検査や治療歴 | 検査結果、治療内容、治療の効果、今後の見通しなど |
日常生活能力 | 食事、入浴、着替え、移動、対人関係、就労への影響など |
介助の必要性・頻度 | どの程度の支援が必要か、どのくらいの頻度か |
ほかの書類との整合性 | 病歴・就労状況等申立書などと内容が矛盾していないか |
初診日の記載 | 初診日が明確に記載されているか |
医師に診断書をお願いするときのポイント
障害年金の審査に必要な「正確な診断書」を医師に作成してもらうには、以下のようなことを医師に伝えておきましょう。
- 日常生活で困っていることを伝える
- コミュニケーションに不安があるときは、書面で伝える
それぞれ見ていきます。
日常生活で困っていることを伝える
医師に障害年金用の診断書を依頼する際は、日頃の診察からあなたの日常生活での具体的な困りごとを積極的に伝え、認識のずれがないようにすることが大切です。
医師は病気の治療が専門であり、障害年金の制度や審査基準について詳しいとは限りません。
そのため、ふだんの診察の中で、次のようなことを医師に積極的に伝えておきましょう。
- あなたの症状が日常生活(食事、入浴、着替え、外出など)や仕事にどのように影響しているのか
- 家族や周囲からどのようなサポートを受けているのか
医師とはふだんから情報を具体的に共有しておくことが理想的です。
コミュニケーションに不安があるときは、書面で伝える
医師との情報共有に不安があるときは、書面で伝える方法をおすすめします。
診察時にコミュニケーションがうまく取れないと感じる場合や、伝えたいことが診断書に適切に反映されるか不安なこともあるでしょう。
そんなときには、ご自身の症状や日常生活の困難さを具体的にまとめたメモや文書を医師に渡すのも有効な方法です。
例えば、「この症状のために、週に〇日は外出が困難です」「〇〇の作業が〇分以上できません」など、具体的なエピソードを交えると、医師も診断書作成の際に参考にしやすくなります。
診断書の記載内容は、医師との協力関係によって大きく変わることがあります。
医師との認識違いをなくすことが、適切な診断書作成への第一歩です。
障害年金の診断書の用紙はどこでもらえる?
障害年金の診断書は、年金事務所や街角の年金相談センターでもらえるほか、日本年金機構のホームページでもダウンロードできます。
障害年金の診断書は8種類あり、障害の部位や症状などにより記載する診断書が異なるので注意しましょう。
- 眼用(様式120号の1)
- 聴覚・鼻腔・平衡機能・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用(様式120号の2)
- 肢体用(様式120号の3)
- 精神用(様式120号の4)
- 呼吸器用(様式120号の5)
- 循環器用(様式120号6-1)
- 腎疾患・肝疾患・糖尿病用(様式120号の6-2)
- 血液・造血器・その他(様式120号の7)
障害の種類や程度によっては、どの診断書の用紙を使うのかの判断が難しいことがあります。
必ず年金事務所等で取得する診断書の種類を確認してから、医師に診断書を依頼しましょう。
障害年金の診断書は何枚必要?有効期限は?
障害年金の診断書は、申請の方法などにより必要枚数が変わります。
また、診断書には有効期限もあるので、いつ診断書を取得するか迷う人も多いです。
障害年金の申請方法別に見ていきましょう。
障害認定日請求(初診日から1年6か月後)
障害認定日請求で必要となる診断書と有効期限は、以下のとおりです。
- 「障害認定日から3か月以内に作成されたもの」が原則として1枚必要
- 有効期限は障害認定日から1年未満
障害認定日請求とは、原則として、障害の原因となった病気やけがの「初診日」から1年6か月が経過した日(障害認定日)の時点の障害状態を基に障害年金を請求する方法です。
1年を過ぎてしまうと「遡及請求」となり、新たに現在の病状を記した診断書が必要となります。
なお、「遡及請求」での診断書については後ほど詳しくご紹介します。
事後重症請求(認定日以降に悪化した場合)
事後重症請求で障害年金を申請する場合、必要となる診断書は以下のとおりです。
- 「申請日以前3か月以内」に作成されたものが1枚
- 有効期限は現症日より3か月以内
この方法は、障害認定日(初診日から1年6か月経過した日)時点では障害等級に該当するほどではなかったものの、その後症状が悪化して、改めて障害年金の基準を満たすようになった人が利用できます。
また、障害認定日の診断書が取れなかった場合でも事後重症請求で申請するケースもあります。
なお、診断書の有効期限は、現症日から3か月以内です。
つまり、1月15日が診断書の現症日の場合は4月15日までに障害年金を申請しなければならないということです。
3か月を過ぎると、診断書を取り直すこととなるので注意しましょう。
現症日は、下図のように診断書の中ほどあたりにあります。

なお、事後重症請求の詳細については、障害年金の事後重症請求とは?いつからもらえる?年金額や必要書類、申請の流れもご紹介をご覧ください。
遡及請求(過去にさかのぼって請求する場合)
障害年金の遡及請求を行う場合に必要な診断書は2枚で、有効期限は次のとおりです。
【1枚目の診断書】
- 障害認定日から3か月以内に作成された、その時点でのあなたの障害状態を証明するもの
有効期限:なし
【2枚目の診断書】
- 障害年金の「申請日以前3か月以内」に作成された、現在のあなたの障害状態を証明するもの
有効期限:現症日から3か月以内
2つの診断書の有効期限が異なりますので、注意してください。
つまり、障害年金が受け取れる状態だったにもかかわらず、申請が遅れてしまった場合に、過去の分もまとめて受け取りたいときに利用します。
なお、遡及請求の詳細は、【最大5年分まとめて支給】障害年金の遡及請求は難しい?必要書類や受給事例もご紹介でわかりやすくご紹介しています。
診断書の枚数・種類まとめ一覧表
障害年金の申請方法別に、診断書の枚数と有効期限を下表にまとめました。
請求方法 | 必要となる診断書 | 必要枚数 | 有効期限 |
---|---|---|---|
障害認定日請求 | ・障害認定日から3か月以内の症状が記載された診断書 | 1枚 | 障害認定日から1年未満 |
事後重症請求 | ・現症が記載された診断書 | 1枚 | 現症日から3か月以内 |
遡及請求 | ・障害認定日より3か月以内の現症の診断書 ・現症が記載された診断書 | 各1枚 | ・障害認定日時点の診断書は有効期限なし ・現症の診断書は現症日から3か月以内 |
必要となる診断書は、通院歴や病歴等により変わることがあります。
自分はどの診断書を作成するのかを、年金事務所等で確認しましょう。
お近くの年金事務所は、日本年金機構が公開している全国の相談・手続き窓口で検索できます。
障害年金の診断書で注意したところはこの2つ
診断書を受け取ったら、開封して次の2点がもれなく記載されているかを確かめましょう。
- 記載内容と実態があっているか
- 記入漏れはないか
それぞれご説明していきます。
記載内容と実態があっているか
医師が作成した診断書の記載内容が、ご自身の実際の症状や日常生活での困りごとと正確に一致しているかを必ず確認しましょう。
例えば、「入浴はできる」と診断書に記載されていても、実際には家族の介助がなければ困難である、といった認識のずれが生じることがあります。
プロの目線で診断書をチェックし、必要な情報が網羅されているか、あるいは修正が必要な点がないかなどをアドバイスしてくれます。
記入漏れはないか
診断書を受け取ったら、記入漏れがないか隅々まで入念にチェックしましょう。
記載内容が適切であったとしても、わずかな記入漏れがあるだけで、障害年金の審査がストップしてしまったり、差し戻されて手続きが遅れたりする原因になりかねません。
特に注意が必要なのは、初診日や発病日などの日付欄です。
これらの日付は、障害年金の受給資格を判断する上で極めて重要な情報であり、記入漏れがあると審査が進まない可能性があります。
また、医師の署名や捺印、医療機関の名称や所在地、診断書の作成年月日なども、見落としがちなポイントです。
障害年金の診断書や提出書類はコピーを取ろう
障害年金の診断書を提出する前に、必ずコピーを取って手元に保管しておきましょう。
診断書に限らず、障害年金の申請で提出する書類はすべてコピーしておくことをおすすめします。
これは、障害年金の申請手続きにおいて、心強い「備え」となります。
日本年金機構へ提出する診断書は原則として原本であり、一度提出してしまうと手元には残りません。
しかし、審査の過程で、日本年金機構から診断書の内容について問い合わせがあったり、追加で情報提供を求められたりするケースが少なくありません。
手元にコピーがあれば、スムーズに内容を確認し、適切な対応をすることができます。
提出書類のコピーは、あなたの障害年金申請を円滑に進めるための必須アイテムと考えてください。
診断書で困ったら障害年金専門の社労士に相談を
障害年金の診断書について困ったり、不安を感じたりするときは、迷わず障害年金専門の社労士に相談することをおすすめします。
例えば、医師に自身の症状や日常生活の困難さがうまく伝わっているか不安な場合、社労士は、医師への効果的な伝え方や、必要な情報をまとめた資料の作成方法など、具体的なアドバイスを提供できます。
さらに、診断書と「病歴・就労状況等申立書」との整合性を取ることも重要ですが、これも専門知識がなければ難しい作業です。
障害年金の申請は複雑ですが、社労士に申請代行を依頼することで不安や手間は大きく軽減されるでしょう。
まとめ
障害年金は「診断書が審査のカギ」とも言われており、診断書の記載内容が最重要視されています。
障害年金の診断書は8種類あり、通院歴や病歴、傷病や障害のある部位や症状などにより診断書の種類が変わります。
どの診断書が何枚必要なのかは、年金事務所等で確認をしましょう。
自分の状態が正しく記載された診断書を作成してもらうには、医師に自分の生活や仕事での困りごとについて知ってもらうことが大前提として必要になります。
医師とのコミュニケーションに不安がある人や、障害年金の申請が難しいと感じるときは、ゆうき事務所にお気軽にご相談ください。
経験豊富な社労士が丁寧にヒアリングをして、あなたの障害年金申請をサポートします。