更新日:2026.10.11
統合失調症で障害年金はもらえない?実は通りやすい理由と申請の3つのポイントを社労士が解説
統合失調症でも、障害年金はもらえます。
国の審査の基準に、年金の対象になる人が多いと書かれているほど、受給につながりやすい病気です。
ただ、書類の準備でつまずいて不支給になる人もいるため、「もらえない」といわれることもあります。だからこそ、暮らしの困りごとは、ありのまま正確に書類で伝えましょう。
この記事では、受給の条件、申請のポイント、等級と年金額を、障害年金専門の社会保険労務士が解説します。
統合失調症でも障害年金はもらえる「対象になりやすい病気のひとつ」
統合失調症は、障害年金を受け取れる病気のひとつです。
国の審査の基準(障害認定基準)では、精神の障害のグループの最初に統合失調症が挙げられています。統合失調症の症状で暮らしや仕事が大きく制限されていれば、受け取れる可能性があります。
一方、次のような誤解から申請を見送る方もいます。
- 障害者手帳を持っていないと申請できない
- 家族の扶養に入っていると対象外になる
- 入院していないともらえない
上記は、いずれも誤りです。手帳・扶養・入院の有無は、障害年金を受け取る条件に含まれていません。
障害年金の仕組みから知りたい方は、障害年金とは?もらえる条件ともらえない人の特徴を社労士が解説をご覧ください。
代表社労士が話す解説動画もあります。
統合失調症が障害年金で通りやすいといわれる理由
「通りやすい」といわれる一番の理由は、障害認定基準の書き方にあります。統合失調症は、回復が難しい場合もあり、障害年金の等級に当てはまる人が多い病気として扱われています。
一方で基準には、発病から数年〜十数年のうちに症状が良くなることも、急に悪くなることもあると書かれています。そのため審査では、受診した日の様子だけでなく、発病からの経過もあわせて判断されます。
ただし、統合失調症と診断されれば、誰でも障害年金をもらえるわけではありません。
厚生労働省の報告書には、精神障害の審査で、診断書の評価では2級が目安だったのに、3級とされた例も載っています。
主なものは次のとおりです。
| 申請した人の状況 | 審査での判断 |
|---|---|
| 一人暮らしで、福祉サービスは使っていない | 日常生活はある程度できると見られ、3級に |
| カルテに「症状は落ち着いている」「買い物ができる」とあり、一般雇用で単純作業をしているが、休みがち | これらを総合して、働くことに制限がある状態として3級に |
障害基礎年金には3級がないため、初診日に国民年金に加入していた人や20歳前だった人は、3級だと不支給になります。
家族の手助けや職場の配慮は、書類に書いてはじめて審査する側に伝わります。
実際の暮らしの様子を、ありのまま書類へ反映させましょう。
参考:令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書|厚生労働省
障害年金全体で審査が厳しくなった背景は、障害年金の審査は厳しい?不支給率13.0%へ急増した理由と受給のポイントを解説で詳しく取り上げています。
統合失調症で障害年金がもらえないといわれる理由
「もらえない」という声の背景には、申請の準備で起こりやすい3つの行き違いがあります。
主な理由と対策は次のとおりです。
| もらえないといわれる理由 | 対策 |
|---|---|
| 初診日がわからない | 受診の記録をたどり、初診日を確かめる |
| 診断書が実際の生活より軽く書かれる | 日常の困りごとをメモにして医師と共有する |
| 書類どうしの内容が食い違う | 申立書を診断書の内容とそろえる |
どれも、前もって知っていれば備えられます。
統合失調症で障害年金を受け取る3つの条件
統合失調症で障害年金を受け取るには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
【障害年金を受給できる3つの条件】
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 初診日 | 統合失調症で初めて医師の診察を受けた日(初診日)に、国民年金か厚生年金に加入していること。 20歳前や、国内に住む60〜64歳で年金に未加入の期間も対象 |
| 保険料 | 初診日の前日までに、一定期間の保険料を納めているか、免除を受けていること |
| 障害の状態 | 初診日から1年6か月たった日(障害認定日)に、国が定める障害等級に当てはまること |
3つの条件については、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!でさらに掘り下げています。
ご自身が条件に当てはまるかどうかは、こちらの動画でもチェックできます。
統合失調症の初診日は「症状で初めて受診した日」
初診日は、障害の原因となった病気で、初めて医師の診察を受けた日のことです。
診断された日や、精神科に初めて行った日とは限らないので注意しましょう。
この受診が統合失調症の症状によるものと判断されれば、耳鼻科の受診日が初診日になることがあります。
初診日に加入していた年金と、申請できる年金の関係は次のとおりです。
| 初診日に加入していた年金 | 申請できる年金 |
|---|---|
| 国民年金 (自営業、学生、専業主婦・主夫など)または20歳前 | 障害基礎年金(1級・2級) |
| 厚生年金 (会社員、公務員など) | 障害厚生年金(1〜3級) 1級・2級なら障害基礎年金も |
初診日は、申請の出発点になります。
お薬手帳や診察券、当時の日記など、受診の記録をご家族の力も借りながら探してみてください。
記録が見つからないときの対処法は、障害年金の初診日とは?カルテがないときの対処法もご紹介!にまとめています。
押さえておきたいポイントは、動画でもお話ししています。
保険料の条件は「2つのうちどちらか」を満たせばOK
保険料の条件は、正式には「保険料納付要件」といいます。
確認されるのは初診日の前日の時点の納付状況で、次の2つのうちどちらかに当てはまれば条件を満たします。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 原則(3分の2要件) | 初診日のある月の前々月までの加入期間のうち、3分の2以上が納付済みか免除 |
| 特例(直近1年要件) | 初診日のある月の前々月までの1年間に未納がない※初診日が令和18年3月末日までで65歳未満の場合 |
注意したいのは、初診日のあとに未納分を納めても、計算に入らない点です。
免除の期間は、保険料を納めた期間と同じく条件を満たす期間として数えられますが、こちらも初診日より前に免除を申請していた期間に限られます。
なお、20歳前に初診日がある人は、保険料の条件を問われません。
障害の状態は「初診日から1年6か月たった日」の症状で判断される
初診日から1年6か月たった日は「障害認定日」と呼ばれ、障害年金を申請できる最初の区切りです。
審査では、この日から3か月以内の症状を記した診断書をもとに、等級に当てはまるかが判断されます。
なお、20歳前に初診日がある人は、障害認定日と20歳の誕生日の前日のうち、遅いほうの日の状態で判断されます。
1年6か月の時点で基準に届かなくても、その後に症状が重くなれば申請できます(事後重症による請求)。期限は65歳の誕生日の前々日までです。
事後重症についてもっと知りたい方は、関連記事をご覧ください。
▶障害年金の事後重症請求とは?いつからもらえる?年金額や必要書類、申請の流れもご紹介
統合失調症で障害年金を申請するときの3つのポイント
統合失調症で障害年金を申請するときに押さえておきたいポイントは3つです。
- 日常の困りごとをメモにまとめて医師と共有する
- 受け取った診断書は提出前に内容を確認する
- 病歴・就労状況等申立書の内容を診断書とそろえる
それぞれ見ていきましょう。
日常の困りごとをメモにまとめて医師と共有する
障害年金審査の中心は、医師が作成する診断書です。
ただ、短い診察時間では、診断書の作成に必要な自宅での様子まで医師に伝わりきらないことがよくあります。
たまたま調子のよい日に受診して「落ち着いていますね」と言われ、診察が終わることもあります。
そこで、ふだんの困りごとをメモにまとめ、診察のときに医師へ渡す方法をおすすめします。
書く内容の例を以下にまとめます。
| 生活の場面 | メモに書くことの例 |
|---|---|
| 食事 | 自分で用意できるか、家族が作っているか |
| 身の回り・お金 | 入浴や着替えの頻度、買い物や支払いを自分でできるか |
| 仕事・人づきあい | 職場の配慮や休みの頻度、家族以外の人と話せるか |
| 支援 | 家族の手助けの内容、利用している福祉サービスとその頻度 |
メモには「つらい」といった気持ちより、「入浴は週1回」「食事は母が用意」のように、事実を具体的に書くのがコツです。
本人が伝えにくいときは、ご家族が診察に付き添って家での様子を医師に伝える方法もあります。
診断書がどれほど審査に影響するかは、障害年金の審査は診断書で決まる?知っておきたい注意点と社労士のサポートもあわせてお読みください。
受け取った診断書は提出前に内容を確認する

医師から診断書を受け取ったら、提出する前に必ず中身に目を通してください。封がされていても、開けてかまいません。
- メモで伝えた困りごとが反映されているか
- 記入漏れや日付・傷病名の誤りがないか
気になる点は、実際の生活とどう違うかを整理して医師に相談しましょう。診断書は医師が医学的に判断して書くものなので、「変えてほしい」と頼むのではなく、具体的な事実を添えて伝えることが大切です。
自分で診断書の内容が適切か判断が難しい場合や、専門的な視点からの確認が必要だと感じたら、障害年金に詳しい社会保険労務士(社労士)にご相談ください。
診断書の事前チェックについては、【図解】障害年金診断書チェック完全ガイド|提出前に確認すべきポイント(精神疾患編)で詳細がわかります。ぜひご一読ください。
病歴・就労状況等申立書の内容を診断書とそろえる
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病歴・就労状況等申立書は、発病からの経過や日常生活・仕事の様子を、本人や家族がまとめる書類です。審査では、診断書との食い違いも確かめられます。
例えば、診断書に「家事はおおむねできる」とあるのに、申立書に「一日中寝たきり」と書くと、審査する側はどちらが本当の姿か判断できません。
診断書と同じ時期・同じ場面を、より具体的に書き足すつもりで作りましょう。
記入するときの注意点は、病歴・就労状況等申立書の書き方のコツは5つ!障害年金の重要書類で失敗しないためのポイントを参考にしてください。
申立書を書く前に、こちらの動画でコツをつかんでおきましょう。
統合失調症の障害等級は1級から3級「暮らしと仕事への支障の大きさで決まる」
障害等級は、病名ではなく、症状で暮らしや仕事にどれだけ支障が出ているかで決まります。
国の障害認定基準をもとにした目安は、次のとおりです。
| 等級 | 状態の目安 |
|---|---|
| 1級 | 身の回りのことも含め、ほぼすべてに手助けが必要 |
| 2級 | 日常生活に大きな制限があり、働いて収入を得るのは難しい |
| 3級 | 身の回りのことはおおむねできるが、仕事は時間や内容を大きく減らさないと続けられない(障害厚生年金のみ) |
審査では、幻聴や妄想だけでなく、「残遺状態」がどれくらい続いているかも重視されます。
幻覚や妄想が落ち着いたあとも、意欲の低下や感情の乏しさ、考えのまとまりにくさが続いている状態。
また精神の障害では、診断書の日常生活の評価から等級の目安を出す「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」も使われます。
等級が決まるまでの流れは、【精神疾患で障害年金を申請する方へ】等級判定ガイドラインをわかりやすく解説でひとつずつ説明しています。
統合失調症で障害年金はいくらもらえる?「等級と加入していた年金で金額が決まる」
障害年金の年金額は、等級と、初診日に加入していた年金の組み合わせで変わります。
※ 令和8年度の障害基礎年金の2級は年847,300円です。
障害認定日までさかのぼって認められれば過去の分もまとめて支給されますが、さかのぼれるのは5年分までです。
障害基礎年金の1級・2級の金額
対象は「国民年金に加入していた人・20歳前の人」
令和8年度の年額(昭和31年4月2日以後生まれ)は、次のとおりです。
| 等級 | 年額 |
|---|---|
| 1級 | 1,059,125円+子の加算 |
| 2級 | 847,300円+子の加算 |
子の加算は、本人が生計を維持している子のうち、18歳になった後の最初の3月31日までの子か、20歳未満で1級・2級の障害がある子がいる場合に上乗せされます。
2人目までは1人243,800円、3人目からは1人81,300円です。
なお、20歳前に初診日がある人は、本人の所得による制限があります。
扶養親族がいない場合、前年の所得が3,761,000円を超えると半分、4,794,000円を超えると全額が止まります。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等|日本年金機構
障害厚生年金の1級〜3級の金額
対象は「厚生年金に加入していた人」
令和8年度の年額(昭和31年4月2日以後生まれ)は、次のとおりです。
| 等級 | 年額 |
|---|---|
| 1級 | 報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額 |
| 2級 | 報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額 |
| 3級 | 報酬比例の年金額(最低保障額635,500円) |
1級・2級なら、障害厚生年金と障害基礎年金の両方を受け取れます。
報酬比例の年金額は、厚生年金の加入期間と給与・賞与をもとに計算します。
加入期間が300月(25年)未満でも、300月加入したものとみなされます。
なお、配偶者の加給年金額(243,800円)は、1級・2級の人に、その人が生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に上乗せされます。
ただし、配偶者が障害年金や、加入期間20年以上の老齢厚生年金を受け取れる場合、加給年金額は止まります。
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
年金額のしくみは、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説で確認できます。
令和8年度の年金額を、動画で確かめることもできます。
統合失調症の障害年金でよくある質問
Q.統合失調症で働きながらでも障害年金はもらえる?
A.働きながらでも、障害年金はもらえます。
国の審査の基準には「働いているだけで、生活する力が回復したとはみなさない」という趣旨の記載があり、仕事の内容や職場の配慮まで確かめて判断されます。
短時間勤務や残業の免除、業務の調整といった配慮や、欠勤・遅刻・早退の頻度は、主治医に具体的に伝え、申立書にも書きましょう。
実際に受給できた例は、障害年金は働きながらもらえる?受給のポイントを解説【精神疾患の実例つき】に載っています。
Q.統合失調症の症状が落ち着いていても障害年金はもらえる?
A.薬で幻聴や妄想などの症状が落ち着いていても、受け取れる可能性はあります。
等級判定ガイドラインでは、残遺状態が長く続き、身の回りのことや社会での役割をこなす力に著しい制限があれば、1級または2級に当たるかを検討するとしています。
薬の種類や量、きちんと飲めているかといった治療の状況も判断材料のひとつです。「今は落ち着いている」で終わらせず、薬を飲んでも残る困りごとは、メモにまとめて診察に持っていくと伝えやすくなります。
Q.統合失調症の障害年金に落ちたらどうすればいい?
A.不支給になっても、申請し直せます。
まずは不支給決定通知書で理由を確かめ、どの書類のどこが足りなかったかをはっきりさせてから、次の申請に進みましょう。
決定に納得できない場合は、「審査請求」という不服申立ての制度もあります。期限は、決定を知った日の翌日から3か月以内です。
なお、ゆうき事務所では審査請求は受託しておりません。予めご了承ください。
Q.統合失調症の障害年金は一生もらえる?更新はある?
A.一度認められてもずっと受け取れるとは限らず、多くの場合は更新があります。
決められた年に本人が「障害状態確認届(診断書)」を出し、日本年金機構が引き続き等級に当てはまるかを確認します。
この届は誕生月の3か月前の月末に日本年金機構から送られ、提出期限は誕生月の末日です。症状が軽くなり等級に当てはまらなくなると、支給が止まることもあります。
更新のない認定については、障害年金の「永久認定」とは?有期認定との違いやメリットについて解説で違いを整理しています。
なお、ゆうき事務所では更新手続きを受託しておりません。
統合失調症で障害者手帳がもらえなくても障害年金は申請できる?
A.申請できます。
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別の制度なので、手帳がなくても、手帳の申請が通らなくても、障害年金の申請に影響はありません。
なお、精神障害で障害年金を受け取っている人は、年金証書の写しで手帳を申請でき、手帳の等級は年金と同じになります。
参考:年金証書等の写しによる精神障害者保健福祉手帳の障害等級の認定事務についての一部改正について|厚生労働省
2つの制度の違いは、障害年金と障害者手帳の違いとは?生活を支える制度をわかりやすく解説で比べています。
障害年金の申請でお困りの方へ
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