更新日:2025.04.21
大人になってから発達障害になる?特徴や支援制度もご紹介

「なんだか生きづらい」
「周りの人と同じようにできないことが多い」
こんな思いを抱えていませんか?
もしかしたら、それは大人の発達障害によるものかもしれません。
大人の発達障害がある人は、日常生活や仕事に困難を感じ、経済的な不安を抱えることが多いです。
そんな方々を支える制度の一つに「障害年金」があります。
この制度を知り、活用することで、経済的な負担を軽減し、より安心して生活を送るための一歩を踏み出せる可能性があります。
この記事では、大人の発達障害とはなにか、そして障害のある人を経済的に支援する障害年金についてをご紹介します。
また、障害年金以外にも活用できる支援制度もお知らせするので、まずはこの記事を読み進めて、あなたに合った支援を探してみましょう。
目次
発達障害とは?
発達障害とは、生まれつきの脳の特性によって、日常生活で困りごとが生じやすい状態のことです。
.png)
発達障害は、脳の発達や情報処理の仕方に特徴があることによって現れます。
大人になってから気づくことも多く、「なぜか仕事が続かない」「人間関係がうまくいかない」などの悩みの背景に、発達障害が隠れている場合があります。
発達障害は先天的な脳の特性によるもので、育て方や本人の努力不足が原因ではありません。
大人になってから発達障害と診断される人も増えており、社会人になってから強い生きづらさを感じることで、はじめてその存在に気づくことも少なくありません。
大人になって発達障害になる?
発達障害は大人になって発症するものではなく、生まれつきの脳の特性によるものです。
発達障害はもともと先天的な脳の働き方の違いによって起こるため、実際には子どもの頃からその特徴が見られます。
例えば、大人の発達障害では、「ケアレスミスが多い」「時間管理が苦手」「対人関係がぎくしゃくしやすい」などの特徴が見られます。
また、苦手なことが目立つ一方で、特定の分野で優れた才能を発揮するケースもあります。
大人の発達障害としては、主にADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)が多く診断され、LD(学習障害)はあまりありません。
この記事では、大人の発達障害として多くみられる「ADHD」と「ASD」の特徴について詳しく紹介していきます。
大人の発達障害(1)ADHDの特徴
ADHD(注意欠如多動症)は、子どもだけでなく大人にも見られる発達障害の一つです。
大人のADHDは、家庭生活など社会的な責任が増す中で、うまくできないことが多くあって初めて気づく人が多くいます。
ADHDの特徴を、それぞれご紹介します。
【不注意からくる特徴】
主な特徴 | 具体例 |
---|---|
注意力の持続が難しい | ・作業に集中できず、気が散りやすい ・忘れ物が多く、物をなくしやすい |
順序立てて行動するのが苦手 | ・約束や期限を忘れる ・ケアレスミスや小さな失敗が多い ・指示を聞き逃しやすい |
計画性に欠ける | ・マルチタスクが苦手 ・優先順位がつけられない |
【多動性からくる特徴】
主な特徴 | 具体例 |
---|---|
落ち着いてじっとしていることが難しい | ・会議中にそわそわしてしまう ・長時間座っていられず、体を動かしたくなる ・話す口調が早い ・手足を動かす癖がある |
【衝動性からくる特徴】
主な特徴 | 具体例 |
---|---|
思いつきで行動してしまう | ・衝動買いをしてしまう ・順番を待てない |
感情や発言のコントロールが難しい | ・感情が不安定になりやすい ・衝動的な発言や行動で対人関係トラブルが起こる |
ADHDのある人でも、その特徴を活かした職業に就いたり、周りのサポートを受けたりすることで、自身の能力を十分に発揮できることもあります。
ADHDの特徴や向いている仕事についてもっと知りたい人は、下記の関連記事をご覧ください。
▶大人のADHDとは?特徴や向いている仕事、障害年金請求のポイントを解説
大人の発達障害(2)ASDの特徴
大人のASD(自閉スペクトラム症)は、子どもの頃には気づかずにいたものの、大人になって人づきあいができなかったり、仕事ができなくて初めて気づく発達障害です。
大人のASDの主な特徴を下表にまとめます。
【大人のASDの特徴】
主な特徴 | 具体例 |
---|---|
他人との関わりが難しい | ・人と悩みを共有するのが苦手 ・会話中に相手の表情やジェスチャーを読み取れない ・相手の気持ちや意図を理解しにくい ・集団活動が苦手で孤立しやすい ・場の空気を読めず、場違いな発言・行動をしてしまう |
コミュニケーションが苦手 | ・会話が一方的になりやすい ・自分の興味のある話題ばかり話す ・冗談やあいまいな表現が理解しづらい ・話すタイミングがわからず、会話の流れに乗れない |
興味・関心・行動のこだわり | ・特定の分野に強い関心やこだわりを持つ ・仕事のルールや手順に強いこだわり ・予想外の変化やイレギュラーな事態に弱い ・同じ行動や習慣を繰り返す傾向がある |
感覚の過敏・鈍麻 | ・音、光、匂い、触感などに対して過剰に反応、または鈍感 ・感覚刺激への反応が一般と異なる(例:服のタグが気になる、人混みが苦手など) |
ASDの特徴や診断方法などをもっと知りたい人は、関連記事をご覧ください。
▶ASD(自閉症スペクトラム症)で障害年金をもらうのは難しい?受給条件や年金額もご紹介!
▶大人のASD(自閉症スペクトラム症)とは?特徴や診断、支援先もご紹介
参考:No.1 職域で問題となる大人の自閉症スペクトラム障害|こころの耳
大人の発達障害で「障害年金」がもらえる?
障害年金は、病気やけがなどで日常生活や就労が難しくなった人を経済的に支える制度です。
大人の発達障害もその対象で、ADHDやASDなどによって生活や仕事に著しい支障がある場合、申請できる可能性があります。
発達障害のある人が「働きたいのに続かない」「人間関係がうまく築けない」といった理由で困っている場合、障害年金が申請できないか検討してみましょう。
発達障害で悩む人にとって、障害年金は心強い支援のひとつです。
大人の発達障害で障害年金が申請できる条件は3つ
大人の発達障害と診断されたとしても、障害年金を申請するには満たすべき3つの重要な条件があります。
これらの条件を全て満たしていなければ、残念ながら障害年金を申請することはできません。
しっかりと確認しておきましょう。
初診日要件
1つ目の条件は「初診日要件」です。
これは、障害の原因となった大人の発達障害に関して、初めて医師の診察を受けた日(初診日)に、国民年金または厚生年金保険のいずれかの年金制度に加入している必要があります。
保険料納付要件
2つ目の条件は「保険料納付要件」です。
初診日の前日において、以下のいずれかを満たすことが求められます。
- 初診日の前々月までに納付義務のある国民年金保険料の3分の2以上を納めている
- 初診日の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がない
保険料を未納のまま放置していると、この要件を満たせないことがあります。
失業などで保険料の納付が難しいときは、免除や猶予の手続きをしておきましょう。
大人の発達障害と診断された後に保険料を納めても、初診日以前の未納期間は遡って納付とは認められないため注意が必要です。
障害状態要件
3つ目の条件が「障害状態要件」です。
これは、原則として、障害認定日(初診日から1年6ヶ月経過した日、または症状が固定した日)において、発達障害による状態が、国で定められた障害等級に該当する程度の重さであることが必要です。
障害等級は、日常生活や就労における困難さを総合的に判断されます。
これらの3つの条件をすべて満たして初めて、大人の発達障害による障害年金の申請が可能となります。
ご自身の状況を照らし合わせ、不明な点があれば年金事務所や社労士に相談することをおすすめします。
障害年金の受給条件の詳細は、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!でご確認いただけます。
なお、発達障害での障害年金受給については、以下の記事でわかりやすく解説しています。
▶発達障害で障害年金をもらうのは難しい?支給額はいくら?受給例もご紹介
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
障害年金だけじゃない!生活を支えるさまざまな支援制度
大人の発達障害のある人が活用できる制度は、生活や仕事での困りごとを相談できるなど多岐にわたります。
主な支援制度や福祉サービスは、次のようなものです。
- 障害者手帳
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
- 精神保健福祉センター
- 地域若者サポートステーション(サポステ)
- そのほかの相談先
順番にみていきましょう。
障害者手帳
大人の発達障害がある人は、障害者手帳を取得することで多くの支援を受けられます。
障害者手帳は、障害のある方が生活しやすくなるよう、支援やサービスを受けるための公的な証明書です。
大人の発達障害がある人は「精神障害者保健福祉手帳」の対象になることが多く、申請することで生活上の負担を軽くするさまざまなサポートを受けることができます。
手帳を持つことで受けられる主なサービスは、以下の通りです。
- JRやバス、タクシー、航空機などの運賃割引
- 映画館、テーマパーク、公共施設の入場料割引
- 所得税・住民税・自動車税などの減税・免除
- NHK受信料や水道料金などの公共料金の減免
- 医療費の自己負担軽減や就労支援サービスの利用
- 自治体による独自の助成やサポート制度
このように、大人の発達障害を抱える人がより安心して暮らすための制度が整っています。まずはお住まいの自治体に相談してみましょう。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、大人の発達障害のある人が仕事で困らないように支援してくれる専門機関です。
発達障害を含むすべての障害のある方に対して、職業に関する支援やアドバイスを無料で提供しています。
大人の発達障害がある人にとっては、働くうえでの困りごとを相談でき、一人ひとりに合った職業訓練や職場環境の調整方法などを提案してくれる心強い存在といえるでしょう。
また、障害者手帳がなくても利用できるため、「自分は手帳を持っていないから対象外かも…」という人でも、まず地域障害者職業センターに相談に訪れてはいかがでしょうか。
- 職業適性の診断テキスト
- 就職に向けた個別支援
- 働き続けるためのアドバイス
- 企業との連携支援
こうしたサポートを通じて、大人の発達障害がある人が無理なく働き続けられる環境づくりを後押ししています。
お近くのセンターは、地域障害者職業センターで確認してください。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
「なかぽつ」は、大人の発達障害がある人の就職と日常生活の両方をサポートする心強い支援機関です。
障害者就業・生活支援センター、通称「なかぽつ」は、発達障害を含む障害のある人の「働くこと」と「暮らすこと」を一体的に支援する公的な窓口です。
大人の発達障害がある人にとっては、職探しや職場定着の支援だけでなく、生活全般に関するアドバイスが受けられる点が大きなメリットです。
- 希望や特性に合った仕事を一緒に探す
- 働くためのスキルやマナーの習得をサポート
- 金銭管理や生活リズムに関する相談も可能
- 就職後も継続的にフォローしてくれる
このように「なかぽつ」は、大人の発達障害がある方が仕事と生活のバランスを取りながら、自分らしく安定した毎日を送れるよう支援してくれます。
お近くのセンターは、障害者就業・生活支援センターについてをご覧ください。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、心の不調や生きづらさなどの悩みを専門家に無料で相談できる公的な窓口です。
大人の発達障害がある人は、社会との関わりや職場でのストレス、人間関係の難しさなど、さまざまな悩みを抱えがちです。
そんなときに、このセンターでは医師や精神保健福祉士などの専門家が無料で相談に応じてくれます。
- 発達障害に関するメンタルヘルスの相談
- 医療機関や福祉サービスとの連携支援
- 社会復帰や生活改善に向けたアドバイス
- 家族からの相談にも対応可能
大人の発達障害を抱えて「誰に相談したらいいのかわからない」と感じている人にとって、頼れる相談先です。
ひとりで抱え込まず、まずは一歩踏み出してみましょう。
近くのセンターは全国の精神保健福祉センターでご覧ください。
地域若者サポートステーション(サポステ)
サポステは、大人の発達障害がある若者が自分に合った働き方を見つけるための支援をしてくれる場所です。
地域若者サポートステーション(通称:サポステ)は、15歳から49歳までの就労に悩みを抱える若者を対象に、働くための準備を支援しています。
大人の発達障害がある人も多く利用しており、コミュニケーションの不安や職場での失敗経験などに寄り添いながら、一人ひとりに合った就職支援を行っています。
- 働けなかった理由を問わず支援可能
- 発達障害に配慮したキャリアカウンセリング
- ビジネスマナーやコミュニケーション講座の実施
- 実習や職場体験のサポートもあり
「大人になっても働く自信がない」「発達障害があるから就職が不安」と感じている方にとって、サポステは新しい一歩を踏み出すきっかけになるはずです。
参考:サポステ
そのほかの相談先
公的な機関のほかにも、以下のようなところでも相談できます。
相談先 | 利用できる人 | 特徴など |
---|---|---|
学生相談室 | 学生 | ・自身の学校の学生相談室で学生生活や就職に関する相談ができる・カウンセリングセンターなどと呼ばれる学校もある |
産業医 | 会社員 | ・職場での健康面やストレス等の相談ができる ・産業医がいない会社もある |
当事者団体 | 発達障害のある人やその家族 | ・情報交換をしたり、支えあう団体 ・悩みを共有できるのが最大の特徴 |
発達障害からくる困りごとを一人で解決するのは難しいので、相談機関や周囲の人などの力を借りることも大切です。
複雑な手続きはプロにお任せ!社労士という強い味方
障害年金の申請は、大人の発達障害のある人にとって社労士のサポートが大きな助けになります。
障害年金の申請は、障害者手帳と比べて複雑で時間もかかり、大人の発達障害がある人にとっては大きな負担になることが少なくありません。
必要書類の準備や、専門的な文書作成、年金事務所とのやりとりは、体調を崩すほどのストレスになることもあります。
そんなとき頼りになるのが、社会保険労務士(社労士)です。
社労士は、大人の発達障害に関するケースにも詳しく、申請書類の作成から提出まで代行できます。
- 自分の状況に合った申請方法を提案
- 面倒な手続きをサポート
- 年金事務所との連絡も代行してくれる
- 精神的な負担を大きく軽減できる
大人の発達障害で障害年金を検討している人は、まず社労士に相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
大人の発達障害とは、子どものころに気づかなかった特性が大人になってから顕著になり、「発達障害」と診断されるものです。
「発達障害」は、生まれつきの脳発達の偏りからさまざまな特性が表れるもので、大人になって発症するものではありません。
大人になってからわかる発達障害の診断名は、ADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉症スペクトラム症)が大半を占め、LD(学習障害)と診断されることはほとんどありません。
発達障害で困りごとがあるときは、地域障害者職業センターなどの公的機関で相談できるほか、障害年金を申請できることもあります。
障害年金の申請は、自分や家族だけでは難しいことも多いです。
もし、お困りのときは障害年金専門のゆうき事務所がお力になります。
ぜひ、お気軽にご相談ください。