更新日:2024.11.29
【最大5年分まとめて支給】障害年金の遡及請求は難しい?必要書類や受給事例もご紹介
障害年金は、現役世代の人が病気やけがで障害を負い、日常生活や仕事に支障がある場合に請求できる制度です。
障害のある人の生活を支えるために経済的な支援を行うものですが、障害年金の存在を知らず、後になって請求をするケースも多く見られます。
この記事では、障害年金を後から請求する「遡及請求」について解説します。
遡及請求に必要な書類や、弊所での受給事例もご紹介するので、最後まで読んで遡及請求の理解にお役立てください。
目次
障害年金の遡及請求とは?
障害年金の遡及請求(そきゅうせいきゅう)とは、過去に遡って障害年金を請求することです。
障害年金の存在を知らずに請求していなかったり、何か事情があって障害年金の請求をしていなかったりする場合でも、遡って請求することができます。
障害年金の請求は、請求する時期により遡及請求のほかに2つの方法があります。
障害年金の3つの請求方法
障害年金の請求の方法には、「障害認定日請求」「遡及請求」「事後重症請求」の3つのパターンがあります。
次章でそれぞれみていきましょう。
障害認定日請求
障害認定日請求とは、障害認定日から1年以内に障害年金を請求することです。
障害認定日請求は「本来請求」とも呼ばれ、障害年金の通常の請求方法です。
障害認定日※時点の障害の状態を審査するため、障害認定日から3か月以内の診断書を用意します。
障害認定日請求が認められると、年金は障害認定日の翌月から支給されます。
※ 障害認定日とは、初診日から1年6か月を経過した日、または1年6カ月以内に傷病が治った(症状が固定した)場合はその日のこと
遡及請求
遡及請求は、障害認定日から1年以上経過して障害年金を請求する方法のことです。
障害年金を長期間請求していなかったとしても、障害認定日の時点に遡って請求することができます。
遡ることができるのは「障害認定日」で、症状が重かった時点や希望する時点に遡るものではありません。
また、遡及請求で受給できる年金は5年分のみであることにも注意が必要です。
以下の例でみてみましょう。
- 障害認定日は7年前が認められますが、年金の支給がされるは5年分(約400万円)です。
- 2年分(約160万円)は時効で支給されず、もらい損ねることになります。
初診日が5年以上前にある人は、早急に障害年金の申請手続きをしましょう。
事後重症請求
事後重症請求とは、障害認定日には障害の状態が軽かったけれども、徐々に進行して障害等級に該当する状態に至ったときに請求する方法です。
事後重症請求では、請求書を提出した翌月から年金の支給が始まり、遡って年金を受給できません。
事後重症請求をする場合は、早急に手続きしましょう。
事後重症にあてはまりやすい疾患としては、糖尿病や脊髄小脳変性症、パーキンソン病など症状が徐々に進行するものが挙げられます。
また、障害が悪化した場合だけでなく、以下のようなケースでも事後重症請求を選択します。
- 障害認定日時点で医療機関を受診しておらず、診断書が用意できない
- カルテが破棄されていて、障害認定日時点の診断書の作成が不可能
なお、事後重症請求ができるのは、65歳の誕生日の2日前までです。
ただし、老齢年金を繰上げ請求している場合は、65歳前であっても事後重症請求はできません。
持病のある方は、障害年金の事後重症請求を視野に入れて、老齢年金の繰上げ請求を検討することをおすすめします。
障害年金の遡及請求のポイント
障害年金の遡及請求ができるかを判断するには、次の3つのポイントがあります。
順番にみていきましょう。
障害認定日に障害等級に該当すること
障害認定日に障害等級に該当しなければ、遡及請求はできません。
障害等級と状態の目安を下表にまとめました。
障害等級 | 状態の目安 |
---|---|
1級 | ・他人の介助がなければ、日常生活をほとんど送れない |
2級 | ・必ずしも他人の助けは必要ない ・日常生活を送ることが困難 ・働いて収入を得ることは難しい |
3級 ※ 障害厚生年金のみ | ・日常生活に支障が少ない ・働くことに著しい制限を受ける |
なお、障害等級については、障害の種類ごとに詳細な基準があります。
障害等級の基準について詳しく知りたい方は、国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構をご確認ください。
障害認定日から3か月以内の診断書が用意できること
遡及請求の申請の場合、日本年金機構では障害認定日時点の状態を審査するために「障害認定日から3か月以内の診断書」の提出を求めています。
診断書を作成するには「障害認定日ごろのカルテがある」ことが不可欠ですが、カルテの保存義務の期間が過ぎると破棄してしまう医療機関があります。
診断書が用意できなければ、遡及請求が認められることは難しいです。
障害認定日から3か月以内の診断書が準備できるかは、遡及請求の大きなポイントといえるでしょう。
障害年金の請求日にも障害の状態にあること
遡及請求が認められる要件としては、障害年金を請求する日も障害等級にあてはまることが必須です。
遡及請求の際は「年金の請求日から3か月以内の診断書」も添付し、現在の障害の状態も合わせて審査されます。
障害認定日に障害等級に該当するような状態であっても、請求日には症状が改善している場合には、遡及請求が認められるのは難しいです。
例えば、うつ病で長期間療養している例でみてみましょう。
上記の場合は、現状ではうつ病の症状が良くなっているので、遡及請求が認められる可能性は低いといえます。
障害年金の遡及請求は難しい?
遡及請求の最大の難関は、「障害認定日から3か月以内の診断書」を用意することです。
例えば、療養期間が長い人の場合は初診日が10年以上前ということも少なくありません。
医療機関でのカルテの保存義務は5年なので、療養期間が長期にわたる場合は、カルテが破棄されていることがあります。
たとえ障害認定日当時に障害等級に該当するような状態であったとしても、カルテがないために診断書が作成できず、遡及請求を断念するケースも少なくありません。
また、運よくカルテが残っていたとしても、当時の医師が退職していることを理由に、障害認定日時点での診断書の作成を断られることもあります。
このように障害認定日から3か月以内の診断書の用意ができるか、とても難しいケースがあるのです。
また、初診の医療機関が閉院になっていたり、転院をくり返している場合は初診の医療機関がわからず、初診日の証明が困難になるケースも多くみられます。
遡及請求を考えている場合、カルテが保存されている期間に診断書等を作成してもらえるように、早急に準備することが重要です。
障害年金の遡及請求|必要書類は?
障害年金の遡及請求で必ず準備する書類は、次のようなものがあります。
- 年金請求書
- 基礎年金番号が確認できるもの(年金手帳など)
- 診断書(障害認定日より3か月以内のもの、年金請求日から3か月以内の現症のもの)
- 受診状況等証明書
- 病歴・就労状況等申立書
- 請求事由確認書
- 通帳のコピー
配偶者や扶養家族がいる場合は、このほかにも戸籍謄本や住民票、配偶者の所得証明などが必要になることがあります。
また、病歴や通院歴、家族構成などにより、障害年金の必要書類は人それぞれで異なります。
実際に障害年金を請求する際には、年金事務所や社労士にご相談ください。
障害年金の必要書類は、障害年金の必要書類一覧!ケース別でわかりやすくご紹介でさらに詳しく紹介しているので、興味のある方はぜひご覧ください。
参考:障害厚生年金を受けられるとき|日本年金機構
参考:障害基礎年金を受けられるとき|日本年金機構
障害年金の遡及請求|よくある質問
障害年金の遡及請求について寄せられる質問に回答していきます。
障害年金の遡及請求の成功率はどのくらいですか?
障害年金の遡及請求の成功率については、統計がなく断言することはできません。
ただし、以下のようなケースでは、遡及請求が認められやすい傾向があります。
- 人工関節やペースメーカーの装着など、いつ症状が固定したかがわかりやすい傷病
- 精神疾患の場合は、障害認定日に通院しており、仕事ができない状態であること
手足の切断や人工関節の装着など、症状の固定した日が特定できる傷病の場合、年金の審査の際に障害認定日が認められやすい傾向があり、遡及請求も認められる可能性が高いといえます。
一方で、糖尿病やパーキンソン病など、症状が次第に進行する疾患は、症状が固定せず障害認定日の証明が難しいため、遡及請求が認められる可能性は低いです。
また、障害認定日に症状が軽い場合も、遡及請求は認められないことが多いです。
遡及請求ができるかは病状や通院歴などによっても変わります。
不安のある方は障害年金専門の社労士にご相談ください。
障害年金の遡及請求のデメリットはなんですか?
ほかの制度の手当金を受け取っている人に、障害年金の遡及請求が認められると、ほかの制度の手当金に調整が入ります。
例えば、健康保険から支給される傷病手当金を受けていた場合、「同一傷病」により同時期に障害年金を受け取れるようになった際には、傷病手当金を返還することになります。
ただし、傷病手当金の日額が障害年金の日額よりも高い場合は、その差額を受け取ることが可能です。
参考:傷病手当金と老齢年金等の併給について|協会けんぽみやざき
5年遡れると聞きましたが、遡る時期は自分で選べますか?
遡及請求は、障害認定日時点まで遡って障害年金を請求することです。
したがって、自分の希望する時点に戻れるわけではありません。
また、障害認定日は5年以上前でも遡れますが、年金の受給ができるのは5年分のみです。
年金請求日から5年以上前の年金は時効によって消滅し、受け取れません。
障害年金の遡及請求|ゆうき事務所の受給事例
弊所にご依頼いただき、遡及請求が認められた事例をご紹介します。
うつ病で障害基礎年金2級を受給
- ご相談者 30代 男性
- 認定結果 障害基礎年金 2級
- 支給額 年間約79万円 遡及分として約400万円
【ご相談者様の状況】
職場の人間関係が原因で、うつ病となりました。
その後、退職して短期間のアルバイトを転々としていました。
知り合いの方から障害年金のことを聞き、弊所のご相談をいただきました。
【相談から障害年金請求までのサポート内容】
うつ病で初めて医療機関を受診したのが15年以上前なので、障害年金の請求自体を諦めている状況でした。
しかし、医療機関に問い合わせたところ、当時のカルテが残っていることがわかり、障害認定日当時の診断書を作成していただけました。
また、現在の状況について弊所の社労士がご相談者様にヒアリングしたところ、わかったのは次のようなことです。
- きちんとした食事がとれていない
- 十分な睡眠がとれない
- パニックになって、過呼吸を起こすことがある
主治医からは、「あなたの症状では障害年金は難しい」と言われていましたが、上記のように日常生活に大きな支障があることをお伝えし、診断書に反映していただきました。
【審査の結果】
障害基礎年金 2級(約79万円)+遡及分(約400万円)の支給が決定しました。
ご相談者様は、障害年金が認められただけでなく、遡及請求もできたことでとても喜んでおられました。
ゆうき事務所では、ご相談者様へ丁寧にヒアリングを行い、判明した内容を適切に書類に反映するお手伝いをしています。
うつ病で障害厚生年金3級を受給
- ご相談者 60代 男性
- 認定結果 障害厚生年金 3級
- 支給額 年間約160万円 遡及分として約340万円
【ご相談者様の状況】
大手企業で管理職として従事していたところ、仕事のプレッシャーと職場の人間関係の悪化からうつ病となりました。
その後、会社を退職しましたが、老齢年金を受け取れるまでは数年あり、生活のために再就職をするか悩んでいたときに、ご家族から弊所にご相談をいただきました。
【相談から障害年金請求までのサポート内容】
ご相談者様から主治医へ障害年金の相談をしたことがあり、「この病状では障害年金は受給できない」と言われて、障害年金の請求を諦めている状況でした。
そこで、弊所の社労士がご相談者様と奥様へ丁寧にヒアリングを行い、日常生活での困りごとが主治医へ正しく伝わるようにサポートいたしました。
また、ご相談者様にはストレスによる帯状疱疹も見られたため、病歴・就労状況等申立書へ記載しました。
【審査の結果】
障害厚生年金3級(約160万円)と遡及分(約340万円)が認められました。
「経済的な不安が軽くなって、老齢年金がもらえるまで生活ができます」とお喜びの声をいただきました。
主治医から障害年金の受給が難しいと言われた場合でも、諦めずにご相談ください。
まとめ
障害年金は、現役世代の人が障害の状態となった際に請求できる年金保険です。
しかし、障害年金の存在を知らず、長期間請求せずにいるケースも多く見られます。
障害年金は、後からでも請求できます。
遡及請求が認められた場合、年金を受給できるのは請求してから最大で5年分です。
たとえ10年以上前に障害の状態にあったとしても、5年分しか受け取ることができません。
そのため、障害年金の請求は、できるだけ早く手続きすることをおすすめします。
ゆうき事務所では、障害年金のご相談を無料で受けております。
「自分は遡及請求できるのか」「そもそも障害年金がもらえるのかわからない」などの疑問や不安がありましたら、お気軽にご相談ください。