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人工透析で障害年金はいつからもらえる?年金額はいくら?受給のポイントを徹底解説

人工透析は、腎不全の方にとって生命維持に不可欠な治療法です。

しかし、治療に伴う身体的・精神的な負担に加え、経済的な困窮も大きな課題となっています。

そこで、本記事では、人工透析を受ける人が障害年金を受給できる時期と、受給に向けて準備すべきポイントについて詳しく解説します。

最後まで読むと、障害年金の概要や年金額、人工透析の基礎知識もわかるので、人工透析での障害年金受給を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

障害年金とはどんな制度?

はじめに、障害年金の概要をご紹介します。

障害年金は、病気やけがによって一定程度の障害を負った現役世代の方に、生活の安定を支援するために年金として現金が支給される制度です。

障害の程度によって1級から3級までの等級が認定され、等級に応じて年金額が決定されます。
障害基礎年金は1級と2級

障害年金の種類

障害年金は、初診日に加入している年金制度により、受け取れる障害年金の種類が変わります。

初診日とは、障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日のこと

障害年金の種類と違いを下記に示します。

初診日に加入していた年金障害年金の種類障害の等級など
国民年金障害基礎年金1級、2級
厚生年金障害厚生年金1級、2級、3級
障害手当金
障害手当金とは、初診日から5年以内に病気やけがが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときに支給される一時金

障害基礎年金よりも、障害厚生年金の方が幅広い障害等級に対応しています。

参考:障害基礎年金の受給要件|日本年金機構

参考:障害厚生年金の受給要件|日本年金機構

障害年金の受給要件

障害年金の受給要件は以下の3つです。

  • 初診日要件

    初診日に国民年金か厚生年金に加入している

    20歳前か日本在住の60歳から64歳

  • 保険料納付要件

    初診日の前日において、年金の保険料を一定期間納付していること※1

  • 障害状態要件

    障害認定日※2に障害等級表に定める1級か2級の状態にあること
    (障害厚生年金は1級から3級に該当すること※3

※1 20歳前に初診日がある場合は納付要件は問われない
※2 障害認定日とは、初診日から1年6か月経過した日のこと
※3 障害認定日には障害が軽くても、後に重くなった場合は障害厚生年金を受けられることがある

上記の要件を1つでも満たせない場合は、障害年金を受給できません。

障害年金の受給要件は、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!で詳しくご紹介しています。

障害年金の年金額

障害年金は、障害によりどのくらい日常生活や仕事に支障があるかを見て等級分けし、年金額が決まる仕組みです

したがって、人工透析だからという理由で加算がされることはありません。

障害基礎年金と障害厚生年金の支給額をみていきましょう。

【障害基礎年金】令和6年度の年金額

1級1,020,000円
2級816,000円

子の加算額
障害基礎年金を受ける人に、以下のいずれかにあてはまる子がいると、加算がつきます。

  • 18歳の年度末までの子
  • 障害等級1級または2級の障害状態にある20歳までの子
子の加算額(1人目、2人目)各234,800円
子の加算額(3人目以降)各78,300円

子の加算額は、期間限定の家族手当のような役割を果たしています。

【障害厚生年金】令和6年度の年金額

1級報酬比例の年金額×1.25
+障害年金1級(1,020,000円)
+配偶者加給年金額(234,800円)
2級報酬比例の年金額
+障害年金2級(816,000円)
+配偶者加給年金額(234,800円)
3級報酬比例の年金額
(最低保障612,000円)
障害手当金(一時金)報酬比例の年金額×2年分
(最低保障あり)

報酬比例の年金額は、これまで納めた保険料や厚生年金の加入期間を元に年金額を算定する仕組みです。

そのため、障害厚生年金の年金額は、障害基礎年金のように定額ではなく、人により変わります。

なお、配偶者加給年金額は、障害厚生年金1級〜2級を受ける人に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。

配偶者加給年金額も、子の加算額と同じように期間限定の家族手当のようなものです。

障害年金でもらえる金額をもっと詳しく知りたい人は、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説!をご覧ください。

参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構

参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構

参考:障害年金ガイド|日本年金機構

人工透析とはどんな治療?

続いて、人工透析についてみていきましょう。

人工透析は、腎臓の機能が著しく低下した際に、人工的に血液を浄化する治療法です。

腎臓は、体内の余分な水分や老廃物、毒素などを尿として排泄する役割を担っています。

腎機能が低下すると、これらの排泄機能が低下し、体内に老廃物、毒素などが蓄積してしまい「尿毒症」を発症してしまうのです。

そこで、人工透析を行い、血液中の老廃物を排泄したり、体内の余分な水分と塩分を除去するなど、体内を浄化します。

人工透析には、以下の2種類があります。

種類方法や頻度など
血液透析・体外に血液を導き、人工腎臓を通して老廃物や水分を除去する方法
・浄化された血液を体内に戻す
・週に3回程度、医療機関に通院して行う
腹膜透析・腹腔内に透析液を注入し、腹膜を通して老廃物や水分を除去する方法
・自宅で自己管理で行う
参照:治療法について|全腎協

血液透析と腹膜透析は、いずれの方法でも障害年金の支給対象です。

人工透析は障害等級2級に該当する

日本年金機構では、人工透析の障害等級を下記のように示しています。

人工透析療法施行中のものは2級と認定する。
なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

引用:国民年金・厚生年金障害認定基準|日本年金機構

つまり、人工透析は障害等級2級に認定するとされていますが、検査の結果や日常生活の状況により障害等級1級になることもあります。

人工透析での障害年金請求|受給に向けた準備

障害年金の請求書は、年金事務所等に提出しますが、請求書のほかにも添付書類の作成が必要です。

障害年金受給のための事前確認や書類の提出先を紹介します。

順番に見ていきましょう。

初診日を証明できる資料を探す

障害年金は、初診日を証明できなければ不支給となります。

初診日を証明するためには、初診日がわかる書類を用意することが必要です。

初診日の証明に役立つ書類は、以下のようなものがあります。

  • 医療機関の領収書や診察券
  • 初診ごろのおくすり手帳
  • 処方薬の入っていた袋
  • 入院記録
  • 障害者手帳の申請時の診断書 など

長期の療養の場合、初めて医療機関にかかった日を忘れてしまうなど、初診日の証明が難しいことが多くみられます。

日記や家計簿などの記録から、初診日をたどれることもあるので、初診日頃の記録等がご自宅等に残っていないか確認しましょう。


参考:障害年金の初診日証明書類のご案内|日本年金機構

保険料納付要件を確認する

障害年金の受給要件のひとつに、保険料を一定程度納めていることが求められます。

保険料の納付状況は、年金事務所街角の年金相談センターで確認できます。

障害年金の請求を考えている人は、年金事務所等で早めに正確な納付状況の記録を入手しましょう。

請求書と添付書類の準備

障害年金の請求に必要な書類は多岐にわたりますが、全員に共通して必要となる書類は、以下のとおりです。

障害年金の請求に必ず必要な書類
  • 年金請求書
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書等
  • 診断書
  • 受診状況等証明書
  • 病歴・就労状況等申立書
  • 障害年金を受け取る金融機関の通帳やキャッシュカード

障害年金の審査で、特に重要視されるのは、「診断書」「病歴・就労状況等申立書」です。

診断書は主治医が作成し、病名や症状、治療内容などが記載されます。

病歴・就労状況等申立書は、基本的には本人が作成する書類です。

これまでの病歴や日常生活での困りごとなどを記載しますが、作成が難しく途中で断念するケースも多く見られます。

病歴・就労状況等申立書は、社労士が代行して作成することもできます。

自分で記載ができないと感じたら、社労士への依頼を視野に入れるといいでしょう。

このほかにも、扶養家族がいる場合は戸籍謄本や住民票の添付を求められたり、障害年金の初診日に関する調査票などが必要なケースもあります。

障害年金の請求に必要な書類は、これまでの病歴や家族構成などにより人それぞれ違います。

ご自身に必要となる書類は、年金事務所等で確認しましょう。


病歴・就労状況等申立書の書き方は、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介で詳しく解説しています。

社労士溝上裕紀

溝上社労士

ゆうき社会保険労務士事務所では、丁寧にヒアリングを行い、診断書と整合性のある病歴・就労状況等申立書を作成します。

お気軽にお問い合わせください。

参考:障害厚生年金を受けられるとき|日本年金機構

参考:障害基礎年金を受けられるとき|日本年金機構

請求書の提出先

請求書等の書類が完成したら、年金事務所等へ提出します。

障害基礎年金お住まいの市区町村役所
年金事務所か街角の年金相談センター
初診日が国民年金の第3号被保険者期間中の場合
障害厚生年金年金事務所か街角の年金相談センター

参考:障害厚生年金を受けられるとき|日本年金機構

参考:障害基礎年金を受けられるとき|日本年金機構

人工透析での障害年金受給は難しい?

人工透析を受けている場合、障害年金2級を受給できる可能性があることがわかりました。

しかし、初診日を証明できず、年金の請求ができないケースが数多く見受けられます。

そこで、初診日の証明方法についてご紹介します。

人工透析での障害年金受給|初診日とは?

初診日とは、障害の原因となる傷病で初めて医療機関で診療を受けた日のことです。

人工透析での障害年金請求をする場合の初診日は、「初診日がいつなのか」を間違ってしまうことが多くみられます。

次の例でみてみましょう。

 
会社の健康診断で、糖尿病について指摘事項があった
 
 
 
かかりつけ医を受診し、糖尿病の治療を始めた
 
 
 
数年後、腎臓の機能が悪くなった
 
 
 
腎臓の機能が回復せず、人工透析を受けることになった
 
 

上記の場合、腎臓の機能が悪化した原因が糖尿病ならば、糖尿病でかかりつけ医を初めて受診した日が「初診日」となります。

初診日は、人工透析を開始した日ではないので注意が必要です。

人工透析での障害年金受給|健康診断は「初診日」にならない?

腎不全の原因となることが多い糖尿病は、会社や自治体が行う健康診断で指摘されて初めて気づく人が多い疾患です。

「健康診断でわかったのだから、健診を受けた日が初診日でもいいのではないか」と考える人もいるでしょう。

しかし、健康診断は、原則として初診日とは認められません。

健康診断の取扱いについては、例外として厚生労働省は以下のように示しています。

ただし、初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証が得られない場合であって、医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果である場合については、請求者から健診日を初診日とするよう申立てがあれば、健診日を初診日とし、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を求めた上で、初診日を認めることができることとする。

引用:障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて|厚生労働省

つまり、医学的に見てすぐに治療が必要な健診結果の場合、請求者が申し立てをすることで健診日を初診日と認められることがあるということです。

健診日を初診日として申請しても、必ず初診日として認められるわけではありませんので注意しましょう。

人工透析での障害年金受給|初診日の証明が難しい理由

人工透析での年金請求でネックとなるのは、初診日の証明が難しいケースが多いことです。

人工透析に至るまでに、長期間糖尿病の治療をしていたケースでは、初診日証明の難易度が高いことがあります。

糖尿病から腎不全になった場合、障害年金の請求書に記載する初診日は糖尿病で初めて医療機関にかかった日です。

腎不全で人工透析に至るまで長い療養期間を経た結果、以下のようなことが起こることがあります。

  • 初診の医療機関が閉院している
  • 初診の医療機関がわからない
  • 初診の医療機関でカルテが破棄されている

初診日の証明は、医療機関で記載してもらうため、上記のようなケースでは初診日の証明ができず、障害年金の請求自体を諦めることもあるのです。

初診日の証明が難しい時は、障害年金専門の社労士へ相談すると解決の糸口が見つかるかもしれません。

人工透析での障害年金はいつからもらえる?

人工透析での障害年金の受給開始は、いつになるのかは「障害認定日がいつになるか」で差が出ます。

障害認定日とは、具体的にいつのことを指すのか、よくわからない方も多いでしょう。

まず、障害認定日について説明します。

障害認定日とは?

「障害認定日」とは、障害の状態を定める日のことです。

下図は、初診日と障害認定日の基本的な関係を図に表したものです。

出典:障害年金制度について|日本年金機構

下記のいずれかの日が、障害認定日となります。

  • 障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6か月を過ぎた日
  • 1年6か月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日

日本年金機構では、初診日から1年6か月以内に疾患が治ったり、症状が固定した場合は、その日を障害認定日とする扱いを特例として認めています。

障害認定日の特例に該当する病状や療法などの詳細は、さ行 障害認定日|日本年金機構でご確認ください。

人工透析の障害認定日の特例と障害認定日請求

人工透析の場合は前述した特例があり、以下のいずれか早い方が障害認定日となります。

  • 初診日から1年6か月を経過した日
  • 人工透析開始日から3か月を経過した日

つまり、この特例が適用されるのは、初診日から1年6か月以内に人工透析を開始したケースです。

例えば、高血圧からの腎不全などですぐに人工透析を行った場合、障害認定日の特例を利用すれば障害認定日請求よりも早く年金受給が始まります。

なお、障害認定日請求と障害認定日特例での請求は、年金の請求が遅れた場合でも障害認定日まで最大5年遡って年金支給が行われます。

障害認定日から5年以上経過している場合は、時効により5年以上前の年金は消滅し、受け取れません。障害年金の請求をお考えの方は、早めに手続きしましょう。

事後重症請求

これまでご説明したとおり、人工透析を受ける人の多くは、長期間療養していた糖尿病が悪化し、腎不全となったケースが多くみられます。

その場合、初診日は糖尿病で初めて医療機関で診療を受けた日となり、初診日から1年6か月の時点では、障害等級にあてはまるような障害状態ではありません。

このように長い期間を経て状態が悪化し、障害等級にあてはまるようになった場合は、「事後重症請求」で障害年金を請求することとなります。

下図は、人工透析を受ける人が事後重症請求で障害年金を受けるまでを表したものです。

事後重症請求(人工透析)の図解

出典:障害年金ガイド|日本年金機構

人工透析での障害年金請求の多くは、事後重症請求です。

事後重症請求では、請求の翌月から年金が支給されるため、請求が1か月遅れるともらえる年金が1か月消滅します。

スピーディーに障害年金の手続きを進めたい場合は、社労士への依頼を検討しましょう。

人工透析と障害年金|よくある質問

人工透析で障害年金を受ける場合に寄せられる質問に回答します。

人工透析を受けながら働いています。障害年金は受けられますか?

社労士溝上裕紀
溝上社労士

障害年金は、働いていても受けられます。

人工透析を受けている場合は、障害年金2級が受給できる可能性があるので、すぐに手続きを始めましょう。

人工透析を受けていますが、障害者手帳を持っていません。障害年金に影響はありますか?

社労士溝上裕紀
溝上社労士

障害者手帳がなくても障害年金の請求ができるので、早めに障害年金の請求をすることをおすすめします。

まとめ

人工透析を受けている場合、障害年金2級を受けられる可能性があります。

しかし、長期間にわたる療養を経て人工透析に至るケースが多く、初診日の証明が難しいことが多いです。
また、病歴・就労状況等申立書の記載ができずに、障害年金を諦めるケースも少なくありません。

初診日の証明や書類の作成に行き詰ったときは、ゆうき社会保険労務士事務所がお力添えします。

お気軽にご相談ください。