更新日:2025.11.02
障害年金が不支給になる理由10選!申請前に押さえたいポイントを社労士が解説
                                「障害年金を申請しても、もらえないことがあるって本当?」
はい、実際に不支給になる方は少なくありません。
その原因の多くは、症状の軽さではなく「書類の不備」や「初診日の誤り」など、ほんの些細なミスです。
この記事では、障害年金専門の社労士が不支給の10の理由と、申請前に確認すべきポイントをわかりやすく解説します。
なぜ障害年金は「もらえない人」が多いのか
障害年金が不支給になる最大の理由は、次の2つです。
- 制度の理解不足
 - 申請準備の不十分さ
 
障害年金は、障害が原因で生活に支障がある方を支える公的な制度ですが、実際には申請しても不支給となるケースが少なくありません。
その多くは、障害の重さではなく、制度や書類のルールを正しく理解できていないことが原因です。初診日の特定ミスや診断書の記載不備、病歴申立書の空白など、ほんの小さな誤りが不支給の理由になることもあります。
障害年金が不支給になる典型パターン10選
障害年金が不支給となる典型的なパターンは、以下の10点があります。
以下で、それぞれの理由と申請前のチェックポイントを解説します。
1. 初診日が特定できない・誤っている
初診日を特定できない、または誤っていると、障害年金は原則「不支給」となります。
障害年金申請で最も重要なのが初診日です。
初診日は、障害の原因となった病気やけがで最初に医療機関を受診した日を指します。この日を基準に保険料納付要件や受給資格が判断されます。
そのため、初診日が特定できない、あるいは間違っていると、「そもそも申請資格がない」とされ、不支給になる理由の一つとなるのです。
特に長い療養期間を経ている方は、転院やカルテ廃棄などで初素因日の証明が難しくなるケースが多いため注意が必要です。
- 診察券、領収書、紹介状、過去の診断書などを集める
 - 病歴を時系列で整理:「どこの病院で、いつ、どんな症状で受診したか」
 - 初診日を証明できる資料を揃えることで不支給リスクを大幅に減らせる
 
障害年金の初診日については、障害年金の初診日とは?カルテがないときの対処法もご紹介!でさらに詳しく解説しています。
2.初診日に被保険者でなかった「制度の“外”にいた」
初診日に年金制度の“外”にいた場合、障害年金は原則として不支給になります。
障害年金の受給には、「初診日の時点で年金の被保険者であること」が法律上の必須条件です。
つまり、その日に国民年金や厚生年金に加入していなかった場合、どんなに重い障害が残っていても、不支給となります。
よくあるのが、厚生年金を脱退してからしばらく無職だった期間や、海外在住中・学生時代などに初診日があるケースです。これらの時期は年金制度の“外”にあたるため、障害年金の対象外となります。
- 年金加入履歴を確認
 - 年金事務所や街角の年金相談センターで加入状況や未納期間を把握
 - 制度の“空白期間”を早めに特定
 
お近くの年金事務所や相談センターはこちらから検索できます。
▶全国の相談・手続き窓口|日本年金機構
3. 保険料納付要件を満たしていない
障害年金は、保険料納付要件を満たしていないと不支給になります。
障害年金の審査では、「初診日の時点で保険料をきちんと納めていたか」が重要な判断基準になります。
- 原則(3分の2要件):初診日の前々月までの期間の3分の2以上が納付済みまたは免除
 - 特例(直近1年要件):65歳未満で直近1年間に未納がなければ受給可能
 
この条件を知らずに「保険料を払っていなかったからダメだ」と諦めてしまう人も多く、制度を正しく理解していれば受給できたケースも少なくありません。
- 年金事務所で納付記録を確認
 - 長期間未納があっても、直近1年の納付・免除があれば受給可能
 
保険料の状況を正確に把握することが、障害年金受給の可否を探る第一歩です。
【障害年金の保険料納付要件まとめ】(初めての人向け)
| 区分 | 内容 | 具体例 | 対象となる人 | 
|---|---|---|---|
| 原則(3分の2要件) | 初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上が「納付済み」または「免除」になっていること | 加入期間が60か月なら、40か月以上が納付または免除されていればOK | すべての申請者が対象(基本ルール) | 
| 特例(直近1年要件) | ・初診日において65歳未満・初診日のある月の前々月までの1年間に未納がないこと | 「直近の1年間だけきちんと納付していればよい」という救済ルール。※令和18年3月31日までの初診に限る。 | 65歳未満の人(期間限定の特例) | 
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
障害年金の受給要件の詳細については、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!をご覧ください。
4. 障害認定基準に満たない(等級非該当)
障害認定基準に満たないと判断されると、障害年金は「等級非該当」となり不支給になります。
障害年金は、病名ではなく「日常生活や就労にどの程度支障があるか」で支給の可否が決まります。
日本年金機構の認定医が、医師の診断書をもとに障害の重さを1級~3級(基礎年金は1級・2級)で判定し、いずれにも該当しなければ不支給です。
つまり、症状があっても「軽度」と評価されると、障害年金の対象外になるということです。
- 医師に診断書を依頼する際、「できないこと」「困っていること」を具体的に伝える
 - 家事や通勤、職場での配慮、人付き合いなどの支障を丁寧に医師と共有
 
日常での支障を丁寧に共有すれば、実際の状態が正確に反映され、不支給となるリスクを減らせます。
精神疾患での障害等級の判定については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶【精神疾患で障害年金を申請する方へ】等級判定ガイドラインをわかりやすく解説
5. 認定日請求が通らず、事後重症でも等級に届かない
障害認定日請求が通らず、事後重症請求でも等級に届かない場合は、障害年金は不支給になります。
障害年金には「障害認定日請求」と「事後重症請求」の2つの方法があります。
「障害認定日請求」とは、初診日から1年6か月後(障害認定日)の時点で障害等級に該当する場合の請求です。一方、事後重症請求は、障害認定日時点では軽度だったものの、後に症状が悪化した場合に行う申請方法です。
事後重症請求でも障害の程度が等級に満たないと判断されれば、不支給となります。
- 症状悪化の経過や生活の困難を診断書・申立書に正確に記載
 - 医師に日常生活の具体的な支障を伝える
 
診断書や病歴・就労状況等申立書の記載内容が実態を反映していないことが、不支給の大きな理由になるため、丁寧な準備が欠かせません。
事後重症請求については、障害年金の事後重症請求とは?いつからもらえる?年金額や必要書類、申請の流れもご紹介でわかりやすく解説しています。
6. 病歴・就労状況等申立書の空白や矛盾
病歴・就労状況等申立書に「空白」や「矛盾」があると、障害年金は不支給になる可能性が高くなります。
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障害年金の審査では、診断書と並んで「病歴・就労状況等申立書」が非常に重要です。
これは、病気の経過や生活状況を時系列で説明する書類で、内容に「空白」や「矛盾」があると「症状が軽かった」「障害が継続していない」と判断され、不支給となる理由になります。
特に、通院していない期間の説明がない、または診断書と内容が食い違っている場合は、審査側が実態をつかめず不利に働きます。
- 通院歴や仕事・生活の変化を時系列で整理
 - 診断書との整合性を意識
 - 「家事は家族の助けが必要」「週1回通院」など具体的に記載
 
病歴・就労状況等申立書の書き方は、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介でわかりやすく解説しています。
さらに、ゆうき事務所代表社労士が動画で病歴・就労状況等申立書の書き方を解説しています。ぜひご覧ください。
7. 診断書の「記載内容」が実態を表していない
診断書が実際の生活や症状を正確に反映していないと、障害年金は不支給になる可能性が非常に高くなります。

障害年金の審査はすべて「書類だけ」で行われるため、診断書は最も重視される証拠です。
医師の記載が「自立している」「軽症」となっていれば、審査側は「日常生活に支障がない」と判断し、不支給という結果につながります。
原因の多くは、医師に実際の生活状況が十分に伝わっていないこと。
短時間の診察では伝えきれないことも多いため、普段の困りごとや援助の必要な場面を、具体的に説明することが重要です。診断書の内容が結果は大きく左右します。
- 生活の1日の流れを整理
 - 助けが必要な場面や頻度を具体的にまとめ、メモで医師に渡す
 - 社労士に相談し、診断書で重点的に書くべき点を確認
 
診断書に“実態どおり”に記載してもらい、適正な審査が受けられるようにしましょう。
障害年金の診断書については、以下の関連記事で詳しく解説しています。
▶【図解】障害年金診断書チェック完全ガイド|提出前に確認すべきポイント(精神疾患編)
▶障害年金の審査は診断書で決まる?知っておきたい注意点と社労士のサポート
8. 更新(再認定)で支給停止になる
障害年金は1~5年ごとに更新があり、提出する診断書の内容が実態とずれていると支給停止になることがあります。
例えば「自立している」「服薬なし」と記載されると、実際は生活に支障があっても「改善した」と判断されやすくなります。
また、就労中でも会社の配慮があったり、軽作業のみの場合、「一般就労」とだけ書かれると障害の影響が正しく伝わりません。
更新時の不支給の多くは、診断書の記載内容が原因です。医師に伝えるべき日常の困りごとを、事前に整理しておくことが大切です。
- 日常生活や就労の困難を医師に具体的に伝える
 - 買い物・家事・危険・援助の程度をメモにまとめて渡す
 - 通院・服薬状況も確認
 
診断書に空欄や誤記がないよう、受け取ったら必ず記載内容を確認しましょう。
障害年金の更新については、障害年金の更新は難しい?手続きの流れや注意するポイントをご紹介でさらに詳しく解説しています。
9. 20歳前障害で所得制限に引っかかる
20歳前障害の障害年金は、本人の所得が基準を超えると不支給(支給停止)になります。
20歳前に初診日がある「20歳前障害」は、他の障害年金と異なり、本人の所得額で支給の可否が判断されます。
受給資格があっても、所得が基準を超えると一部または全部が支給停止となります。
20歳前障害の所得制限(令和7年の例)
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判定は前年の所得をもとに行われ、給与・事業収入・障害者雇用での収入などがすべて対象になります。
親族がいない単身者では、所得が約370万円前後を超えると全額停止になる年が多く、毎年見直しが行われています。
- 前年の源泉徴収票や確定申告書で所得額を確認
 - 所得が基準を下回れば翌年再開可能
 
障害年金と収入の関係については、ゆうき事務所代表社労士が動画で解説しています。ぜひご覧ください。
10. 障害手当金と年金の混同(制度の理解不足)
障害年金と障害手当金を混同すると、申請しても不支給になり不満が残ることがあります。
障害年金の申請で意外と多い不支給のケースは、制度の理解不足で障害年金をもらえると勘違いしてしまうことです。
特に、「障害年金」と「障害手当金」は名称が似ているため、同じ制度と勘違いする人が少なくありません。
障害年金は、障害の状態が継続している人に定期的に支給されるのに対し、障害手当金は「症状が固定」した人に一度だけ支給される一時金です。
また、障害手当金は厚生年金加入者のみが対象で、国民年金加入者はそもそも受け取れません。
- 初診日と加入していた年金制度を確認
 - 「症状が固定している状態」か「障害が続いている状態」かを整理
 
自分が受け取れるのが年金なのか、一時金なのかわからないときは社労士に相談することをおすすめします。
障害年金の不支給でよくある質問(Q&A)
障害年金の不支給についていただく質問に回答していきます。
Q. 働いていたら障害年金は受け取れませんか?
A. 就労=不支給ではありません。
会社からの配慮の有無、勤務実態、欠勤や休職、支援の必要性など総合評価で、障害等級に該当すれば障害年金を受け取れます。
Q. 通院を続けていないと障害年金は受け取れないでしょうか?
A. 現在は通院中でなくても、障害認定日に障害等級相当の状態であったことがわかる診断書があれば障害年金受給の可能性はあります。
Q. 傷病手当金と一緒に障害年金を受け取れますか?
A. 併給は原則可能ですが、調整(支給額の差し引き等)が生じます。
同一傷病で傷病手当金と障害年金が受け取れるときは、障害年金が優先されます。
詳しくは傷病手当金と障害年金、どっちももらえる?併給の仕組みと知っておくべきポイントをご覧ください。
まとめ
障害年金が不支給となるパターンは、「初診日の証明ができない」「保険料納付要件がクリアできない」など多岐にわたり、さらに複数の項目が原因となることもあります。
専門的知識がなければ記載できない書類等もあり、特に精神疾患を抱える人にとってはハードルが高いのが現状です。
自分や家族だけで障害年金を申請できないと感じるときは、ゆうき事務所がお力添えできます。
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