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COLUMN

発達障害で障害年金をもらうのは難しい?支給額はいくら?受給例もご紹介

発達障害のある人は、「自分も障害年金が受給できるのかな?」と考えることも多いのではないでしょうか。

発達障害の特性によって日常生活や仕事に支障が出ている場合、障害年金を受給できる可能性があります。

この記事では、発達障害と障害年金について、次のようなことをわかりやすく解説していきます。

この記事を読むメリット
  • 障害年金について基礎知識を習得できる
  • 発達障害で障害年金が受給できる可能性があるか、大まかに把握できる
  • 実際に障害年金を受給している方の事例もご紹介

ぜひ最後まで読んで、あなたの障害年金の申請にお役立てください。

発達障害で障害年金はもらえるの?

結論からいうと、発達障害で障害年金を受け取ることができます。

障害年金を受け取るための条件のひとつに、「国が定める障害認定基準にあてはまること」があります。発達障害は、障害認定基準のなかで精神の障害として列記されており、障害年金の対象疾患であることが明確に示されています。

したがって、発達障害の特性からくる困りごとで生活や仕事に支障があり、障害年金の受給要件を満たせれば、発達障害で障害年金を受け取れる可能性があるといえるでしょう。

参考:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準,p56|日本年金機構

発達障害で障害年金をもらうのは難しい?

発達障害で障害年金を受け取るのは、簡単なことではありません。

発達障害での障害年金の受給のハードルを上げているのは、「初診日」がいつになるかを確認するのが難しいということです。

初診日とは、障害の原因となった病気やけがで初めて医療機関で診療を受けた日のことで、発達障害のある人は、発達障害の診断を受ける前にうつ病などの精神疾患で通院していたり、先天的な知的障害があったりするケースが多く、「発達障害の初診日」の見極めが難しいのです。

発達障害での初診日の考え方は、のちほど詳しくご紹介します。

発達障害で障害年金をもらえる人とは?

発達障害の診断を受け、障害年金の3つの受給要件を満たすことができる人は、障害年金を受け取れる可能性があります。

障害年金の3つの受給要件についてみていきましょう。

障害年金の3つの受給要件とは?

障害年金は、次の3つの受給要件をすべて満たすと申請できます。

障害年金の3つの受給要件
  • 初診日※(1)に国民年金か厚生年金の被保険者であること(初診日要件)
  • 初診日の前日時点で保険料を一定期間納付していること(保険料納付要件)
  • 障害認定日※(2)において、国が定める障害認定基準に該当すること(障害程度要件)

※(1)初診日とは、障害の原因となった傷病で初めて医療機関で診療を受けた日のこと

※(2)障害認定日とは、初診日から1年6か月を経過した日のこと

初診日に国民年金に加入していた人は「障害基礎年金」厚生年金に加入していた人「障害厚生年金」と「障害基礎年金」を受給できます。

障害基礎年金と障害厚生年金の受給のイメージは下図のようになります。

国民年金と厚生年金の図

なお、障害年金の受給要件の詳細は、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!で紹介していますので、興味のある人はぜひご一読ください。

障害年金の等級は?

障害年金の等級は、受けられる障害年金の種類により異なります。

下表は、初診日と障害年金の等級の関係性を示したものです。

初診日に加入していた年金障害年金の種類障害の等級など
国民年金障害基礎年金1級、2級
厚生年金障害厚生年金1級、2級、3級
障害手当金
障害手当金とは、初診日から5年以内に病気やけがが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときに支給される一時金

上記の表から、障害基礎年金よりも障害厚生年金の方が幅広い障害等級に対応していることがわかります。

また、障害年金は「障害の状態にある期間に受給することができる」ことも大きな特徴のひとつで、失業保険のようにあらかじめ受給期間が定められているものではありません。なお、障害年金については、障害年金とは?何歳から請求できる?社労士がわかりやすく解説でさらに詳しくご紹介しています。

参考:障害基礎年金の受給要件|日本年金機構

参考:障害厚生年金の受給要件|日本年金機構

発達障害で障害年金はいくらもらえる?

障害年金は、障害等級や年金制度により支給額が変わる制度なので、「発達障害だから」という理由で、年金額が変わることはありません。

障害年金の年金額を表にまとめて示します。

【障害年金で受け取れる年金額】令和6年度の金額

障害の程度障害基礎年金障害厚生年金
1級
1,020,000円+子の加算額報酬比例の年金額×1.25
+配偶者の加算
2級816,000円 +子の加算額報酬比例の年金額
+配偶者の加算
3級なし報酬比例の年金額
最低保証額612,000円
障害手当金なし報酬比例の年金額×2
支給は一度のみ

障害厚生年金の年金額は「報酬比例の年金額」と呼ばれ、公務員や会社員として長く勤務し、高い給与を得ていた人ほど高い年金額が受け取れます。報酬比例の年金額の計算は難しいので、正確な金額が知りたいときは年金事務所や街角の年金相談センターでの試算をおすすめします。

また、誕生月に届く「ねんきん定期便」でもおおよその報酬比例の年金額がわかるので、参考にしてみるのもよいでしょう。

障害年金の支給額については、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説!でさらに詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構

参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構

発達障害で障害年金をもらえる障害の程度とは?

日本年金機構が示す障害認定基準では、以下のように障害等級の目安を記しています。

障害の程度障害の状態
1級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
3級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの
引用:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準,p61|日本年金機構

また、障害認定基準では次のような点も含めて、発達障害での障害年金の受給の可否を判断することとしています。

  • たとえ知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係を築いたり、意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う
  • 日常生活能力等の判定では、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める
  • 働いているからといって、日常生活能力が向上したものと捉えず、療養状況を考慮し、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断する

障害認定基準の内容をすべて理解するのは難しいですが、発達障害があって次のようなことがある人は障害年金が受け取れる可能性があります。

  • 他人とコミュニケーションをとるのが苦手で、友人や同僚との交流がうまくできない
  • 自分の体や部屋を清潔に保ったり、身のまわりの整理整頓ができない
  • 家族やまわりのサポートがなければ、日常生活が送れない
  • 会社から特別な配慮を受けて働いている
  • 仕事上でのミスや失敗が多く、会社に行くのが辛い

発達障害があって、上記のようなことに心当たりのある人は、障害年金が受給できるか年金事務所や障害年金専門の社労士に相談してみましょう。

発達障害で障害年金をもらうためのポイント

発達障害で障害年金を受給するために、申請の際に押さえておきたい点を3つご紹介します。

それぞれ順番にみていきましょう。

発達障害の初診日がいつなのかを確認する

発達障害で障害年金を申請するときには、「初診日」がいつなのかを確認することは欠かせません。

「初診日」とは、障害の原因となった病気やけがで初めて医療機関で診療を受けた日のことを指し、発達障害のある人の場合は「発達障害で初めて医療機関で診療を受けた日」が初診日となります。

発達障害のある人は、初診の医療機関で発達障害と診断されないことも多く、「初診日がいつなのか」がわかりづらい傾向があります。

医療機関への受診の経緯や症状による初診日の違いを表にまとめます。

経緯や症状初診日
先天性の知的障害を伴う発達障害出生日
知的障害を伴わない発達障害自覚症状があって初めて診療を受けた日
発達障害の診断前に精神疾患の診断を受けている精神疾患で初めて診療を受けた日

例えば、発達障害のある人が抑うつなどの精神症状があって医療機関を受診したケースでみてみましょう。

 
最初の医療機関では「うつ病」と診断された
 
 
 
症状が良くならず、医師のすすめで転院をした
 
 
 
転院先の医療機関で「発達障害」と診断を受けた
 

上記の場合、最初の病院で発達障害と診断されていなくても、抑うつなどの精神症状で受診したのであれば、最初の医療機関にかかった日が初診日となります。

参考:障害年金講座|日本年金機構

自分の状況が正しく反映された診断書を準備する

発達障害は、MRIやCTなどの検査で障害の程度がわかる疾患ではないため、日本年金機構では診断書に記載された日常生活能力や労働能力、通院歴などをもとに障害の状態を判断しています。

つまり、診断書に現在の状態よりも軽い障害状態であると記載された場合、実際は障害等級にあてはまる状況であっても審査する人には伝わらず、障害年金が不支給になることもあるのです。

自分の状況が正しく反映された診断書を準備するためのポイントを2つご紹介します。

【主治医とコミュニケーションをとり、現状を理解してもらう】

自分の状態が診断書に正しく反映されるためには、主治医と積極的にコミュニケーションをとることが必要です。

障害年金の認定や障害等級の判定の審査の肝となる「日常生活能力」について、主治医の客観的な視点で適切に診断書に記してもらうために、主治医に日常生活について知ってもらいましょう。

ふだんの診察から「日常生活では、こんなことで困っている」「職場では、こういうサポートを受けている」「こういうことはうまくできなくて、誰かにお願いしている」などを主治医に話せる関係性を築くことが理想的です。

しかし、診察時間が限られていたり、うまく伝えられるか不安なときは、診察前に事前にメモしてまとめておき、主治医に渡す方法もあります。

ご自分がスムーズに主治医とコミュニケーションをとれる方法を探し、日常生活の困りごとを伝えましょう。

【家族や代理人から医師に伝えてもらう】

自分から主治医とコミュニケーションをとることが難しいときは、家族や代理人から伝えてもらいましょう。

主治医とのコミュニケーションが大切なのはわかるけれど、メモしておくなどの事前準備ができないという人も少なくありません。

そんなときは家族に診察に付き添ってもらい、日常生活の様子や周囲のサポート内容などを詳しく主治医に伝えてもらう方法があります。

ふだんの様子を知る家族からの情報は、主治医にとって今後の診察の参考にできることもあるでしょう。また、家族にとっては診察に立ち会うことで現在の病状を知ったり、主治医に困りごとや不安なことを相談ができたりするなどのメリットもあるのです。

このほかにも、障害年金専門の社労士に事前に生活の困りごとや会社からの支援の内容などを書面にまとめてもらい、診察時に主治医に手渡すこともできます。

社労士溝上裕紀

溝上社労士

ゆうき事務所では、ご相談者さまに丁寧へヒアリングを行い、日常生活や周囲のサポート内容をまとめたリポートを作成し、主治医に伝えるお手伝いをしています。
主治医とのコミュニケーションに不安のある方は、ぜひご相談ください。

病歴・就労状況等申立書には出生時から現在までの状況を記載する

発達障害での申請の場合、病歴・就労状況等申立書は出生時から現在までを記しましょう。

診断書は主治医が医学的観点から作成しますが、病歴・就労状況等申立書は基本的には障害年金を申請する人が作成します。

病歴・就労状況等申立書は、診断書ではわからない日常生活での困りごとや周囲のサポート内容などを記載するもので、審査する人に自分の状況を伝えることができる唯一の書類です。

病歴・就労状況等申立書(表面)

出典:病歴・就労状況等申立書(表面)|日本年金機構

出典:病歴・就労状況等申立書(裏面)|日本年金機構

書類を作成するのが苦手な人にとって、年金の審査をする人に伝わるように病歴・就労状況等申立書を作成することは難しいですが、ポイントをしっかりと押さえると書きやすくなります。

病歴・就労状況等申立書を書くときには、次のような点に注意しましょう。

病歴・就労状況等申立書を作成する際に注意するポイント
  • 出生時から現在までを切れ目なく書く
  • 医療機関を受診している期間は、医療機関ごとに区切る
  • 医療機関を受診していない期間は、受診していない理由や自覚症状、日常生活や仕事について詳しく記載する

病歴・就労状況等申立書は、障害認定基準で明記された審査の対象事項について記載することが大切です。「辛い」「悲しい」などの心情や経済的な不安などを記載しても、審査の対象にはなりません。

MEMO

診断書と病歴・就労状況等申立書の記載内容に違いがないかを確認し、整合性のある書類作りをしましょう。

 

病歴・就労状況等申立書の具体的な書き方は、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介でわかりやすく紹介しています。

社労士溝上裕紀

溝上社労士

病歴・就労状況等申立書の作成が難しいときは、代理人に代筆を依頼できます。
ゆうき事務所では、病歴や現在の状態を正しく反映した病歴・就労状況等申立書を作成していますので、お困りの方はどうぞお気軽にお問い合わせください。

発達障害と障害年金|ゆうき事務所の受給事例

ゆうき事務所にご相談いただき、発達障害で障害年金を受給できた事例をご紹介します。

発達障害で障害基礎年金2級を受給

  • ご相談者 40代 女性
  • 認定結果 障害基礎年金2級
  • 支給額  年間約130万円+遡及分約500万円

【ご相談者様の状況】

幼少期から発達障害の傾向があり、就職をしても長続きせず短期間での転職をくり返しています。現在は就労移行支援事業所に通所していますが、就職活動がうまくいかず焦りを感じていました。
日常生活では掃除や洗濯が苦手で、自分ひとりでは片づけられず部屋が散乱している状態であることから、同居のご主人様より「妻は障害年金の対象になるのではないか」とご相談をいただきました。

【相談から障害年金請求までのサポート内容】

ゆうき事務所の社労士がご相談者さまへヒアリングしたところ、初診日が6年以上前にあることがわかり、遡及請求を視野に入れて申請準備を進めました。

このほかにも生活面での様子や困りごととしてわかったことは、次のようなことです。

  • 洗濯や掃除が苦手で部屋が散らかっているので、週に2回訪問介護サービスを利用している
  • 金銭管理が出来ないので、家計の管理は全て同居のご主人様が行っている
  • 注意力散漫で運転中に2回事故を起こし、その後車を売却している

日常生活全般において同居のご主人様や訪問介護サービスによるサポートを受けており、一人で暮らすことは難しいことを社労士がわかりやすく書面にまとめて主治医にお知らせし、診断書に反映していただきました。

【審査の結果】

障害基礎年金2級(約130万円)+遡及分(約500万円)が認められました。

「3人の小さな子どもを抱え、将来はどうなるのかと金銭的な不安がありましたが、障害年金の受給が決まって心身ともに安定しました」とのお言葉をいただきました。

まとめ

障害年金は、身体の障害だけでなく発達障害でも受け取れますが、初診日の証明が必要です。

また、発達障害は視力や聴力のように障害の程度が検査で客観的にわかる疾患ではないので、診断書や病歴・就労状況等申立書にご自身の病状や生活の様子、周囲のサポートなどを、年金の審査をする人に伝わるように記載しましょう。

発達障害のある人が障害年金を受け取ることは簡単ではありませんが、障害年金専門の社労士がお力添えでききます。

ゆうき事務所では、発達障害での障害年金申請代行の経験豊富な社労士がご相談に応じます。「自分や家族だけで障害年金の申請ができないかもしれない…」と不安に思う人は、ぜひお問い合わせください。