更新日:2025.04.29
障害年金の時効は5年?過ぎたら申請できない?社労士が解説

「もしかして、障害年金は5年を過ぎるともう申請できなくなってしまうの…?」
障害年金の申請を考えている方のなかには、こうした疑問や不安を感じている人も多いかもしれません。
障害年金は、病気やけがによって日常生活や仕事に支障が出た場合に、国から現金が支給される大切な年金制度です。
しかし、この障害年金には、「5年」という時効が存在し、その期間を過ぎてしまうと、本来受け取れるはずだった年金を受け取ることができなくなる可能性があるのです。
この記事では、時効の基本的な仕組みや、時効が迫っている場合や過ぎてしまった場合にどうすれば良いのかまで、具体的な情報をお届けします。
この記事を読むことで、障害年金の時効についての疑問を解消し、ご自身の状況に合わせて取るべき行動が明確になるはずです。
後悔しないためにも、ぜひ最後までお読みください。
目次
障害年金の時効は5年?2つの時効の種類とは
時効とは、一言でいうと「権利を行使しない期間が続くと権利が消滅すること」です。
障害年金には、次の2つの時効があります。
- 障害年金を受ける権利(基本権)の時効
- 障害年金の支給を受ける権利(支分権)の時効
それぞれ見ていきましょう。
障害年金を受ける権利(基本権)の時効
結論からお伝えすると、基本権にも時効はありますが、「申立書」を提出すれば申請開始時期から5年を過ぎても遅れても障害年金の申請ができます。
障害年金を受け取るための最初の権利(基本権)は、原則としてその権利が発生した日から5年で時効を迎えます。
しかし、実際には「制度を知らなかった」「申請できる状態だと気づかなかった」など、やむを得ない理由で時効期間を経過してしまうケースも少なくありません。
こうした、ご自身の責任とは言えないやむを得ない事情がある場合は、「年金裁定請求の遅延に関する申立書」を提出することで基本権の時効がなくなります。
つまり、基本権が時効の問題となることはありません。

参考:年金の時効|日本年金機構
障害年金の支給を受ける権利(支分権)の時効
障害年金の支給を受ける権利(支分権)は、5年の時効を迎えると消滅します。
例えば、年金を申請できる日から10年経ってから申請した場合、無事に年金が認定されても、5年以上前の年金は時効で消滅し、もらえなくなります。
支分権とは、障害年金の受給権を得て初めて発生する権利です。
障害年金の申請をして保険者(国や共済組合)から障害年金の決定をもらうことで、障害年金の支給を受ける権利が発生します。
せっかく障害年金の受給資格を得ても、時効によって受け取れる金額が減ってしまうことのないように、障害年金の申請は早めに手続きすることが大切です。
1年以上遡って障害年金を申請する「遡及請求」については、下記の関連記事で詳しく説明しています。
▶【最大5年分まとめて支給】障害年金の遡及請求は難しい?必要書類や受給事例もご紹介
年金が消滅する時効の起算日はいつ?
年金が消滅する時効の起算日は「支払期月の翌月の初日」と定められています。
支払期月とは、年金が実際に振り込まれる月のことです。
年金の支払期月と支給月の関係を下表にまとめました。
支給される月 | 支給日※(支払期月) | 支払期月の翌月の初日 (支分権の時効の起算日) |
---|---|---|
前年の12月と1月 | 2月15日 | 3月1日 |
2月と3月 | 4月15日 | 5月1日 |
4月と5月 | 6月15日 | 7月1日 |
6月と7月 | 8月15日 | 9月1日 |
8月と9月 | 10月15日 | 11月1日 |
10月と11月 | 12月15日 | 翌年の1月1日 |
※支給日が金融機関休業日の場合は前日に支給
具体的な例でみてみましょう。
- 初診日 令和2年7月20日
- 障害認定日 令和4年1月20日
この例では、障害認定日の翌月である令和4年2月から障害年金の支給が始まります。上記の表のとおり、支払期月(支給日)は令和4年4月15日となり、その翌月の初日(令和4年5月1日)が時効の起算日です。
つまり、この例で障害年金の申請が大幅に遅れた場合、令和4年5月1日から5年を経過した分は時効により消滅し、年金が受け取れないことになります。
なお、この時効の考え方は、老齢年金や遺族年金でも同じです。
- 障害年金を申請し、受給が認められる
- 障害認定日の翌月から年金の受給が始まる
- 初回の振り込み(遡及請求の場合は遡った分も含む)
- 以降は偶数月の15日に年金が振り込まれる
なぜ時効に注意が必要?知らないと後悔する理由は3つ
障害年金の時効を知らずにいた場合、後悔する理由は次の3つが挙げられます。
- 経済的な損失
- 精神的な負担
- 申請に必要な書類紛失のリスク
それぞれ見ていきましょう。
経済的な損失
障害年金の時効を知らずにいると、本来受け取れるはずだった大切な年金を失うという、大きな経済的な損失につながります。
障害年金の申請が遅れてしまうと、時効があるために過去に遡って受け取れるはずだった年金が消滅してしまうのです。
例えば、障害基礎年金2級を受給できる場合、年間で約80万円の年金を受け取ることができます。
もし、障害の状態に該当してから10年後に初めて障害年金の申請を行った場合、時効によって過去5年分の年金、つまり約400万円もの金額を受け取ることができなくなってしまいます。
これは、ご本人だけでなく、ご家族の生活にも大きな影響を与えるでしょう。
精神的な負担
障害年金の時効を知らずに申請が遅れてしまうと、経済的な損失だけでなく、精神的にも大きな負担を抱えることになります。
「もっと早く申請していれば…」という後悔の念は、時間とともに大きくなり、精神的な安定を損なうこともあります。
本来受け取れるはずだった障害年金を受け取れないという事実は、経済的な不安を増大させ、将来への見通しを暗くしてしまうでしょう。
申請に必要な書類紛失のリスク
障害年金の申請は、時間が経つほど必要書類の入手が困難になるというリスクを伴います。
申請に不可欠な診断書は、初診当時の医療機関に作成を依頼しますが、障害年金の申請が大幅に遅れてしまうと医療機関が廃院したり、カルテが保存期間を過ぎて廃棄されていたりすることがあります。
また、受診状況等証明書や病歴・就労状況等申立書を作成する上で重要な記録なども、年月とともに紛失してしまう可能性が高まります。
障害年金の申請は、早めに必要な書類の確認し、準備を始めることが重要です。
後悔しないために!今すぐできることはこの3つ
時効で障害年金が消滅する前に、今からできることは次の3つが挙げられます。
- 自分自身の状況を確認する
- 年金事務所への相談と記録の確認
- 社労士への依頼を検討する
順番に見ていきましょう。
自分自身の状況を確認する
後悔しないために今すぐできることの一つとして、まずはご自身の状況を正確に把握することがとても重要です。
障害年金の申請を検討するときに、ご自身の障害の状態、そして最も重要な初診日を明確にすることは、時効のリスクを避けるためにも不可欠です。
この初診日の特定が困難なケースは少なくありません。
そのため、ご自身の病歴や通院歴を改めて整理し、当時の記憶をたどることが大切です。
もし、初診の病院の診察券や領収書、お薬手帳などが残っていれば、有力な証拠となります。
また、転院を繰り返している場合は、最初の病院の情報が重要になります。
障害年金の初診日については下記の関連記事でわかりやすくご紹介しています。
▶ 障害年金の初診日とは?カルテがないときの対処法もご紹介!
年金事務所への相談と記録の確認
後悔しないために今すぐできることの2つ目は、年金事務所や街角の年金相談センターへ相談し、ご自身の年金加入記録や保険料納付状況を確認することです。
障害年金を申請するには、一定期間保険料を納付している必要があるため、保険料納付状況の確認はとても重要です。
保険料の未納が多い場合は、障害の状態が重くても障害年金を受け取ることができないことがあります。
また、初診日にどの年金制度に加入していたかによって、申請できる障害年金の種類(障害基礎年金または障害厚生年金)が変わってきます。
そのため、ご自身の年金加入記録を早めに入手し、どの制度に加入していたのか、加入月数はどのくらいかなどを正確に把握しておくことは、スムーズな申請準備の第一歩となります。
参考:全国の相談・手続き窓口|日本年金機構
参考:街角の年金相談センター一覧|全国社会保険労務士会連合会
社労士への依頼を検討する
もし、ご自身やご家族だけで障害年金の申請を行うのが難しいと感じた場合は、社会保険労務士(社労士)への依頼を検討することをおすすめします。
特に、長期間にわたって療養生活を送られている人や早く申請手続きを進めたい人、年金事務所へ通うことが難しい人にとって、社労士は強力な味方となります。
障害年金の制度は複雑で、申請に必要な書類も多岐にわたります。
社労士のサポートを受けることで、時間と労力を大幅に節約してみませんか。
障害年金を社労士に依頼するメリットの詳細は、関連記事をご覧ください。
▶ 障害年金の申請を依頼するメリットは4つ!【社労士の選び方もわかりやすく解説】
信頼できる社労士の選び方
障害年金の申請代行を社労士に依頼する際、最も重要なのは信頼できる人を選ぶことです。
後悔しないためには、以下の3つのポイントを押さえて社労士を選ぶようにしましょう。
障害年金に関する実績が豊富であること
ホームページなどで受給事例が具体的に紹介されているかを確認することは、社労士の専門知識や経験の度合いを測るうえでとても大切です。
障害年金専門、あるいは障害年金に力を入れている社労士を選ぶことをおすすめします。
親身になって相談に乗ってくれること
社労士事務所の無料相談などを積極的に利用し、社労士との相性や人柄を確認しましょう。
疑問や不安に対して丁寧に答えてくれるかどうかも重要な判断基準です。
また、最近ではSNSで情報発信をする社労士も増えているので、発信内容からも人柄や考え方を知ることができるでしょう。
料金体系が明確であること
契約前に費用についてしっかりと説明を受け、納得のいく料金体系であることを確認しましょう。
また、実際にサービスを利用した人の口コミや評判も参考に、総合的に判断することが大切です。
信頼できる社労士を選ぶことは、障害年金の申請をスムーズに進め、時効のリスクを避ける上で重要です。
上記のポイントを参考に、ご自身にとって最適な社労士を見つけてください。
まとめ
障害年金は、時期が遅くなっても申請できますが、5年以上前の年金は時効により消滅し受け取るません。
療養期間が長い人や、障害の原因となった傷病で医療機関を初めて受診したのが5年以上前だという人は、時効により障害年金が消滅する可能性があるので、早く申請することをおすすめします。
また、時効までまだ時間があるという人でも、「自分で障害年金を申請するのが難しい」と感じたら、社労士に相談してみてください。
ゆうき事務所では、メンタル疾患のある方の障害年金申請をサポートします。
あなたやご家族が障害年金でお困りのときは、どうぞお気軽にご相談ください。