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お役立ちコラム

COLUMN

【精神疾患で障害年金を申請する方へ】等級判定ガイドラインをわかりやすく解説

「精神疾患の障害等級はどうやって決まるのかな」
「発達障害は検査で障害の程度がわからないから、公平に等級が判定されるのか心配…」

うつ病や発達障害などの精神疾患で障害年金を申請する人の多くは、こんな疑問や不安をお持ちかもしれません。

そこで、この記事では精神疾患の障害等級の判定に欠かせない「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」について解説します。

ふだん聞き慣れないガイドラインですが、障害等級の判定において重要な役割を果たしています。これから精神疾患で障害年金を申請しようと考えている人は、ぜひ押さえておきたいポイントといえるでしょう。

この記事を読むと次のようなことがわかります。

この記事でわかること
  • 障害等級の目安はどう決まるのか
  • 判定の基準とは?
  • 主治医への診断書依頼の不安も解決

ぜひ最後まで読んで「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を理解し、あなたの障害年金申請にお役立てください。

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」とは?

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」は、精神障害や知的障害の障害等級の判定の不公平をなくすため、2016年(平成28年)から運用されています。

従来、精神障害や知的障害の障害等級の判定は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」により行われ、医師の診断書の内容や申請者の状況などを総合的に判断していました。

しかし、地域により判定にばらつきが生じる傾向があったため、全国的に統一された基準を設ける必要性が生じ、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が策定されたのです。

MEMO

現在、日本年金機構では「障害認定基準」と「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を併せて、精神障害や知的障害の障害等級を判定しています。

なお、てんかんは「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」から除かれています。

次章では「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」について詳しくみていきましょう。

この記事では「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を「ガイドライン」と表記します。

参考:『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等|日本年金機構

障害等級の目安とは?

ガイドラインでは、「日常生活能力の判定」の平均値と「日常生活能力の程度」の評価を下の表にあてはめて、障害等級の目安としています。

下表の「程度」とは、診断書に記載された「日常生活能力の程度」の5段階評価を示し、「判定平均」は、診断書に記載された「日常生活能力の判定」の評価を指します。

判定平均\程度(5)(4)(3)(2)(1)
3.5以上1級1級または2級
3.0以上3.5未満1級または2級2級2級
2.5以上3.0未満2級2級または3級
2.0以上2.5未満2級2級または3級3級または非該当
1.5以上2.0未満3級3級または非該当
1.5未満3級非該当3級非該当
【表の見方】
「程度」は、診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」の5段階評価を指す。
「判定平均」は、診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」の4段階評価について、程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出したものである。
表内の「3級」は、障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換えることとする。

引用:国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン,p5|厚生労働省

例えば、日常生活能力の判定の平均値が2.8、日常生活能力の判定が(4)の場合は、2級相当となります。

ここからは「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」の詳細についてみていきましょう。

【日常生活能力の程度はどうやって判断するの?】

「日常生活能力の程度」は、診断書の裏面に記載されている(1)から(5)のうち、主治医が日常生活の状況に近いと思うものを選択します。

下図は、精神障害の診断書の一部を抜粋したものです。
日常生活能力の判定は赤で囲んだ部分に、日常生活能力の程度は青で囲んだ部分に記載されています。

出典:国民年金・厚生年金保険 診断書(精神の障害用)|日本年金機構

例として「精神障害」についてみていきましょう。
先ほど提示した診断書の青く囲んだ部分に明記されている項目は、以下のとおりです。

(1)精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。

(2)精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。

(3)精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。

(4)精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。

(5)精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
引用:国民年金・厚生年金保険 診断書(精神の障害用)|日本年金機構

主治医が診断書に記載された上記の5つから〇をつけて選択した数字が、「日常生活能力の程度」となります。

【日常生活能力の判定はどうやって決まるの?】

「日常生活能力の判定」は、診断書の裏面に記載されている項目を主治医が4段階で評価し、それぞれの項目の評価の平均を「日常生活能力の判定」の値とします。

なお、日常生活能力の判定の際には、家族のサポートを受けていたり、グループホーム等に入所している場合であっても「一人暮らしだと想定して評価」します。

下記は、診断書の一部を抜粋したものです。

日常生活能力の判定(精神障害の診断書より抜粋)
出典:国民年金・厚生年金保険 診断書(精神の障害用)|日本年金機構

診断書に明記されている「日常生活能力の判定」の項目は、次のとおりです。

日常生活能力の判定の項目
  1. 適切な食事
  2. 身辺の清潔保持
  3. 金銭管理と買い物
  4. 通院と服薬(要・不要)
  5. 他人との意思伝達及び対人関係
  6. 身辺の安全保持及び危機対応
  7. 社会性

それぞれの評価の点数は以下のようになります。

評価点数
できる1点
おおむねできるが時には助言や指導を必要とする2点
助言や指導があればできる3点
助言や指導をしてもできない若しくは行わない4点
障害の状態が重いほど高い配点となっており、7項目の平均点が「判定平均」となります。

例えば、家族に「きちんと野菜も食べて」と言われなければ野菜を食べることはなく、献立や調理も家族に頼っているようなケースは、自発的に行動しているとはいえないでしょう。

この場合、結果的にバランスの良い食生活を送っているとしても「できる」という評価にはなりません。

したがって、このような日常生活の細かなことを主治医にお知らせし、診断書に障害の状態を正確に反映してもらう必要があるということです。

社労士溝上裕紀

溝上社労士

障害等級の目安の決め手となる「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」は、主治医の作成する診断書の記載内容から判断されます。

つまり「診断書」は、障害年金の審査において重要な役割を果たしているのです。

参考:国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン|厚生労働省

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」で注意すること

先ほどご紹介した「障害等級の目安」は障害等級判定の鍵となる要素のひとつですが、それだけで障害等級が決定するわけではなく、診断書などの記載内容も踏まえて総合的に判断されます。

ガイドラインでは、診断書の記載項目のうち「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」を除き、次の5つの分野に区分して総合評価に際に考慮することを記しています。

内容は多岐にわたるため、一部を抜粋して下表にまとめます。

(1)現在の病状または状態

考慮すべき要素
共通事項・複数の精神疾患が併存しているときは、諸症状を総合的に判断する 
・ひきこもりについては、精神障害の病状の影響により、継続して日常生活に制限が生じている場合は、それを考慮する
統合失調症・療養及び症状の経過や予後の見通しを考慮する
・妄想・幻覚・自閉・感情の平板化・意欲の減退などの有無を考慮する
気分(感情)障害・現在の症状だけでなく、症状の経過や日常生活の状態や予後の見通しを考慮する
知的障害・知能指数を考慮する
・日常生活の様々な場面における援助の必要度を考慮する
発達障害・知能指数が高くても日常生活能力が低い場合は、それを考慮する。 
・臭気、光、音、気温などの感覚過敏があり、日常生活に制限があれば考慮する

(2)療養状況

考慮すべき要素
共通事項・通院の状況を考慮する(頻度や治療内容など)
・薬物治療を行っている場合は、その目的や内容、服薬状況も考慮する
精神障害・入院時の状況を考慮する
(入院期間、院内での病状の経過、入院の理由など)
・在宅での療養状況を考慮する
知的障害
発達障害
・著しい不適応行動を伴う場合や精神疾患が併存している場合は、その療養状況も考慮する

(3)生活環境

考慮すべき要素
共通事項・家族等の日常生活上の援助や福祉サービスの有無を考慮する
・支援が常態化した環境下では日常生活が安定している場合でも、単身で生活するとしたときに必要となる支援の状況を考慮する
・独居の場合、その理由や独居になった時期を考慮する
精神障害
知的障害
発達障害
・在宅での援助の状況を考慮する
・施設入所の有無、入所時の状況を考慮する

(4)就労状況

考慮すべき項目
共通事項・働いていることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない
・就労状況や援助の内容、周囲とのコミュニケーションの状況を確認し、日常生活能力を判断する
精神障害・安定した就労ができているか考慮する
・発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの状況を考慮する
・精神障害による出勤状況への影響を考慮する
・仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する
知的障害・仕事の内容が単純・反復的な業務であれば、それを考慮する
・仕事場での意思疎通の状況を考慮する
発達障害・仕事の内容が単純・反復的な業務であれば、それを考慮する
・執着が強く、臨機応変な対応が困難である等により常時の管理・指導が必要な場合は、それを考慮する
・仕事場での意思疎通の状況を考慮する

(5)その他

考慮すべき要素
共通事項・日常生活能力の「判定」と「程度」に食い違いがあれば、それを考慮する
・「日常生活能力の判定」の平均が低い場合であっても、各障害の特性に応じて特定の項目に著しく偏りがあり、日常生活に大きな支障が生じていると考えられる場合は、その状況を考慮する
精神障害・依存症については、精神病性障害を示さない急性中毒の場合及び明らかな身体依存が見られるか否かを考慮する
知的障害・発育・養育歴、教育歴などについて、考慮する

なお、上記の5つの分野ごとの具体的な内容例は、厚生労働省が公開している精神の障害に係る等級判定ガイドライン(6~10ページ)でご確認いただけます。

参考:精神の障害に係る等級判定ガイドライン|厚生労働省

精神の障害に係る等級判定ガイドライン|よくある質問

等級判定ガイドラインに関して寄せられる質問に回答していきます。

主治医にどのように診断書を依頼したらいいのかわかりません…

主治医に診断書を依頼しづらいときは、家族に診察に同行してもらい、自分の代わりにお願いしてもらう方法があります。

精神疾患のある人は、人とコミュニケーションを取ることが苦手なことが多く、主治医に自分の意思をうまく伝えられないことがあるので、家族から主治医に伝えてもらいましょう。

また、診察に立ち会ってくれる家族がいないときは、社労士に相談することもできます。
社労士がご相談者にヒアリングした内容を書面にしてくれたり、具体的な依頼方法を提示することも可能です。

「自分ひとりの力では無理かもしれない…」と思うときは、まわりの人たちや専門家にサポートをお願いしましょう。

診断書が封印されてきました。開封してもいいですか?

診断書が封印されている場合でも開封し、記載内容を確認しましょう。

「開けてしまったら使えなくなるかも…」と心配になりますが、問題ありません。診断書に日付などの記入漏れなどがないかを確認し、訂正や追記をお願いすることもあります。

記載内容が正しい場合は、診断書のコピーをとっておきましょう。障害年金は1~5年ごとに更新をする「有期認定」となることが多いです。前回提出した診断書のコピーがあれば、更新をするときに参考にできます。

社労士への相談はどのような場合に必要ですか?

「障害年金の申請が大変だ」「自分と家族だけでは難しい」と感じるときは、早めに社労士に相談しましょう。

例えば「病歴・就労状況等申立書」は作成の難しい書類のひとつで、仕上げるのに時間がかかります。自分や家族だけで「病歴・就労状況等申立書」を作成すると、2か月以上かかってしまったり、申請自体を諦めたりすることもあるようです。

障害年金の申請は遅くなってもできますが、遡って支給されるのは最大5年なので、社労士に依頼して早急に申請することをおすすめします。

社労士溝上裕紀

溝上社労士

ゆうき事務所では相談料0円で、経験豊富な社労士がお話を伺います。
オンライン面談も可能ですので、遠方の方や外出が大変だという方も、どうぞお気軽にお問い合わせください。

なお、社労士に申請代行を依頼する利点については、障害年金の申請を依頼するメリットは4つ!【社労士の選び方もわかりやすく解説】でくわしくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

まとめ

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」は、精神障害の障害年金の審査での不公平を解消するため、2016年に策定されました。
現在、日本年金機構では「障害認定基準」と「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を併せて、精神障害や知的障害の障害等級が判定されています。

ガイドラインが導入され、障害等級の目安がわかりやすくなり、何級に該当しそうかある程度見通しがつくようになりました。

しかし、あくまで目安であって、等級の判定は考慮すべき項目を踏まえたうえでの総合評価となります。

「自分の等級はどのくらいになるのかわからない…」
「診断書をどうやってお願いしたらいいのかと不安になる」

こんなお困りごとがありましたら、ゆうき事務所へぜひお問い合わせください。