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COLUMN

障害年金を受けると国民健康保険の保険料は免除される?社労士が徹底解説

障害年金を受給されている方の中には、「国民健康保険の保険料も免除されるのでは?」と思う人が多いかもしれません。

残念ながら、障害年金を受けていても国民健康保険の保険料が一律に免除される制度はありません。

しかし、障害年金受給者の方のために、保険料の負担を軽減する措置がいくつか存在します。

この記事では、なぜ障害年金を受給していても国民健康保険の保険料を支払う必要があるのか、その理由を詳しく解説いたします。

また、障害年金を受給されている方が利用できる国民健康保険料の軽減措置や、保険料の支払いが困難な場合の対処法についてもご紹介します。

障害年金と国民健康保険に関する疑問を解消していきますので、ぜひ最後までお読みください。

障害年金を受けていても国民健康保険は免除されない!

結論からお伝えすると、障害年金を受給する人は国民健康保険の保険料は免除されません。

障害年金を受けている人でも、収入に応じて国民健康保険の保険料を納めなければならないのです。

ただし、障害年金を受けている場合は、保険料の軽減措置が受けられることがあります。

障害年金受給者が受けられる軽減措置とは?

障害年金受給を理由とした国民健康保険料の一律免除制度はありませんが、軽減措置が受けられることがあります。

障害年金受給者が受けられる国民健康保険の主な軽減措置は以下のとおりです。

それぞれ見ていきましょう。

(1)所得計算上の優遇

障害年金受給者は、国民健康保険の保険料を計算する際に、優遇が受けられます。

国民健康保険は、世帯全員の所得に応じて保険料を計算する仕組みです。

つまり、世帯全体の所得が多い家庭では、国民健康保険料が高くなります。

障害年金は国民健康保険料の計算における所得に含まれないこととされており、同じ額の収入がある人と比べて保険料が低く抑えられるというメリットがあります。

参考:国民健康保険 よくある質問|国分寺市

(2)低所得者軽減制度

障害年金を受ける人の世帯所得が一定額を下回る場合、低所得者軽減制度が利用できます。

低所得者軽減制度とは、世帯の総所得金額等が一定額以下の場合、均等割額が7割・5割・2割の割合で軽減されるものです。

具体的には、以下の表のように計算をします。

【令和6年度均等割額の減額基準】

減額区分世帯主および国保加入者の総所得金額等の合計が下記の金額以下の世帯
7割減額43万円(1)
5割減額43万円(1)+(29.5万円×国保加入者数)
2割減額43万円(1)+(54.5万円×国保加入者数)

(1)給与・年金所得者の人数が2人以上のときは、43万円+10万円×(給与・年金所得者数-1)

MEMO

※ 国保加入者には、後期高齢者医療制度に移行する前に国民健康保険に加入していた人も含まれます。

国民健康保険の保険料を計算するときには、世帯主が国保加入者でない場合でも、世帯主の所得を加算して判定することに注意しましょう。

したがって、世帯主と国保加入者全員の所得が判明していないと均等割額の減額判定ができません。

収入がない場合や障害年金等の非課税所得がある場合でも、確定申告(または市県民税の申告)を忘れずに行っておきましょう。

なお、確定申告等が確認できれば自動的に判定されるので、お住まいの市区町村役所へ保険料の軽減措置を受けるための申請は必要ありません。

参考:国民健康保険料の軽減|江東区
参考:国民健康保険(保険料の減額)|札幌市

(3)失業者等に対する軽減措置

障害年金を受ける人が失業している場合、「失業者等に対する軽減措置」を利用できることがあります。

障害年金を受ける人のなかには、障害の状態によって会社を辞めざるを得ないという人も多いでしょう。

「非自発的失業者に対する国民健康保険料の軽減」と呼ばれる制度にあてはまれば、国民健康保険の減免が受けられます。

この制度の主な特徴を表にまとめました。

対象者・離職時に65歳未満の方
・雇用保険受給資格者証に以下の記載がある特定受給資格者(離職理由コード11、12、21、22、31、32)
特定理由離職者(離職理由コード23、33、34
軽減内容前年の給与所得を30%として保険料を算定
保険料が軽減される期間離職日の翌日が属する月から、その年度の翌年度末まで
申請方法以下の書類を役所に提出
1. 届書
2. 本人確認書類
3. 雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知

対象となる人は、雇用保険受給資格者証(原本必須)または雇用保険受給資格通知、本人確認ができる書類(マイナンバーカードや免許証)を持参して、お住まいの市区町村役所で手続きをしましょう。

参考:国民健康保険料の軽減・減免のご案内|船橋市

参考:国民健康保険料の軽減|江東区

なぜ障害年金受給者も国民健康保険の保険料を払うの?

国民健康保険は、公平性や財政的な持続可能性を維持するために、障害年金を受給している人であっても、保険料の負担を求めています。

障害年金受給者が国民健康保険料が原則免除されない理由は次の3つです。

(1)公平性の維持

国民健康保険は、公平性を維持するために、すべての加入者に保険料の負担を求めています。

国民健康保険は相互扶助の精神に基づき運営されている制度です。

国民健康保険に加入するすべての人が、能力に応じて保険料を負担することで、医療サービスを支えています。

つまり、障害の有無に関わらず、すべての加入者が制度を維持するために保険料を納めて、公平性を維持しています。

(2)財政的な持続可能性

国民健康保険の財政を安定させ、制度を長く続けるためには、障害年金受給者からも保険料を負担してもらう必要があります。

もし、障害年金受給者を一律に免除すると、国民健康保険制度の財政基盤が弱くなる可能性が高まり、制度を存続するのが難しくなることも考えられます。

例えば、2023年度(令和5年度)には町田市で20億円の赤字が発生し、市税等を財源とした一般会計からの繰入で補填されました。

また、厚生労働省によると、国民健康保険(市町村国保)財政状況は、2022年度(令和4年度)には1,067億円の赤字となり、前年度から1,000億円の増加となっています。

そのため、国民健康保険制度の安定性を確保するためには、多くの加入者から保険料を徴収する必要があります。

参考:国民健康保険の財政状況をお知らせします|町田市

参考:令和4年度国民健康保険(市町村国保)の財政状況について |厚生労働省

(3)障害年金受給者向けの免除制度がない

国民健康保険には、障害年金を受けている人に対して一律で保険料を免除するという制度がありません。

ただし、前述したとおり、障害年金受給者に対しては「軽減措置」が設けられており、同じ金額の所得を得る人よりも保険料が安く抑えられています。

障害年金受給者もそれぞれの経済状況に基づいて、適切な負担を求められています。

なお、市区町村によっては独自の軽減制度を設けている場合があります。

障害年金受給者が利用できる国民健康保険料の免除制度があるかは、お住まいの役所にお問い合わせください。

国民健康保険料が払えないときは?

国民健康保険は、保険料を加入者が負担するうえに、健康保険のように「扶養」制度がありません。

そのため、家族全員が国民健康保険に加入する家庭では、国民健康保険の保険料が高額になることがあります。

国民健康保険料が払えない場合は、次のような対処法があります。

(1)市区町村の窓口に相談する

国民健康保険料の支払いが難しい場合、減免制度徴収猶予制度を利用できる可能性があります。

以下に減免制度と徴収免除制度の概要をまとめました。

対象者内容申請方法
減免制度・前年度と比べて所得が大幅に減少した場合・災害や失業で収入が著しく減少した場合・所得状況に応じて2割・5割・7割減額
(市区町村の判断により割合が変わることもある)
・収入証明書や退職証明書、り災証明書を添えて市区町村役所の窓口へ
徴収猶予制度・災害・失業・事業休廃止などで一時的に支払い困難な場合・6か月の支払い猶予(自治体により異なる)・給与明細や退職証明書、り災証明書を添えて申請

上記の制度を利用するには事前申請が必要ですが、災害など緊急性が高いときは事後申請が認められることがあります。

制度の詳細は市区町村によって異なるため、お住まいの市区町村役所へご確認ください。

参考:国民健康保険料のお支払いが難しい場合はお早めにご相談ください!|大阪市
参考:国民健康保険料の徴収猶予|大阪市

(2)家族の健康保険の扶養に入る

国民健康保険料の負担が厳しい場合、家族の健康保険の被扶養者になり、国民健康保険を脱退するケースもあります。

健康保険の扶養に入るには、年間収入130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)などの条件を満たす必要があります。

手続き前に、家族の勤務先の健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)へ相談し、必要書類を確認しましょう。

なお、国民健康保険料を滞納していた場合、国民健康保険を脱退しても滞納した保険料は支払わなければなりません。

国民健康保険料は、滞納のまま放置しないこと

国民健康保険料は、滞納のまま放置しないことが重要です。

滞納が続くと、以下のような厳しい措置が取られる可能性があります。

  • 督促状の送付
  • 保険証の返還要求
  • 財産の差し押さえ

国民健康保険料が払えないとわかったときは、すぐに役所に相談するなどの対応をし、未納を避けることが大切だといえます。

障害年金受給者は国民年金が全額免除されることも

障害年金1~2級を受ける人は、国民年金の法定免除を受けられます。

以下に国民年金の法定免除についてまとめました。

対象者障害基礎年金、障害厚生年金の1級または2級を受けている人
法定免除が始まる月障害年金の受給権を取得した日の属する月の前月分から免除される
対象外のケース障害年金受給開始当初から3級の人
法定免除の継続期間・1級・2級から3級に変更になった場合でも、法定免除はそのまま継続・3級にも該当しなくなったときは、該当しなくなった日から3年間のみ免除が継続
法定免除期間の影響・免除期間は年金受給資格期間に含まれる・将来受ける老齢基礎年金は減額される
追納制度・法定免除された期間の過去10年分まで遡って納付できる
手続き・お住まいの市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ届書を提出

法定免除を受けた期間は保険料の全額が免除され、老齢基礎年金額の計算では保険料の2分の1が納付されたものとして計算されます。

つまり、法定免除を受けると、将来受け取る老齢基礎年金額が減額されるということです。

自身の障害の状態が今後改善して行く見込みがある場合は、将来受け取る老齢年金の減額を避けるために、法定免除は受けずに国民年金の保険料を納めることも検討しましょう。

また、遡及請求により障害年金が認定された場合、過去の国民年金保険料もさかのぼって法定免除されます。

なお、法定免除を受けるには、お住まいの役所に以下の国民年金被保険者関係届を添えて手続きしましょう。

出典:国民年金被保険者関係届(表面)|日本年金機構

本文中に出てくる「障害年金の遡及請求」については、【最大5年分まとめて支給】障害年金の遡及請求は難しい?必要書類や受給事例もご紹介でわかりやすく解説しています。

参考:国民年金保険料の法定免除制度|日本年金機構

参考:国民年金保険料の追納制度|日本年金機構

参考:国民年金保険料の法定免除制度|宇部市

障害年金と国民健康保険|よくある質問

障害年金と国民健康保険について寄せられる質問に回答していきます。

障害年金を受け取ると国民健康保険料があがりますか?

障害年金の額は国民健康保険料を計算するときには、所得には含めないことになっています。

つまり、同じ額の現金収入がある人と比較すれば、障害年金の受給者は保険料額が低く抑えられるということです。

なお、このほかにも遺族年金や雇用保険からの手当等も所得には含めません。

国民健康保険とはなんですか?健康保険とは違うものですか?

国民健康保険と健康保険は、公的医療保険のひとつで、けがや病気で医療機関を受診した際に3割の負担で利用できる制度です。

健康保険との主な違いは下表のようになります。

国民健康保険(国保)健康保険
加入対象・職場の健康保険に加入していない人
・自営業者
・農業従事者
・無職の人
・会社員・公務員など
運営主体市区町村が運営・健康保険組合
・全国健康保険協会(協会けんぽ)
保険料の計算世帯の所得に応じて決定し、全額を加入者が負担給与に応じて決定し、事業主と被保険者で折半
自己負担割合医療機関での自己負担は原則3割医療機関での自己負担は原則3割

なお、健康保険には「扶養」制度があり、被扶養者が増えても保険料が変わらないことも国民健康保険との大きな違いといえるでしょう。

まとめ

障害年金を受給していても、国民健康保険の保険料が免除されることはありません。

しかし、障害年金受給者の方々の経済的な負担を軽減するための措置がいくつか存在します。

国民健康保険の保険料の支払いが難しい場合は、市区町村の窓口に相談することで、減免や猶予などの措置を受けられる可能性があります。

また、ご家族の健康保険の扶養に入るという選択肢もあります。

障害年金と国民健康保険を正しく理解し、必要な手続きを行うことで、安心して生活を送るための環境を整えましょう。