更新日:2024.12.28
うつ病で障害年金はいくらもらえる?申請が難しい理由も解説
うつ病は、多くの人が悩む心の病気です。
日常生活や仕事に支障をきたすほど症状が重い場合、障害年金を受給できる可能性があります。
障害年金は、障害のある人の生活を経済的に支える重要な制度ですが、実際にどれくらいの金額がもらえるのか、申請手続きがどれほど難しいのかといった点で不安を抱える人も多いでしょう。
この記事では、うつ病で障害年金を受け取る際の金額の目安や、障害基礎年金、障害厚生年金の加算額について詳しく解説します。
また、うつ病で障害年金を申請する際に直面しやすい課題や、その解決方法についてもお伝えします。
この記事をきっかけに、障害年金の申請を一歩前向きに進めるお手伝いができれば幸いです。
うつ病でもらえる障害年金の金額
令和6年度の年金額は以下のようになります。
障害基礎年金 | 障害基礎年金 | |
---|---|---|
1級 | 1,020,000円 ※子の加算額あり | 報酬比例の年金額×1.25 ※配偶者の加算あり |
2級 | 816,000円 ※子の加算額あり | 報酬比例の年金額 ※配偶者の加算あり |
3級 | なし | 報酬比例の年金額 ※最低保証額612,000 円 |
障害手当金 | なし | 報酬比例の年金額×2 ※支給は一度のみ |
報酬比例の年金額とは、厚生年金に加入した期間や納めた保険料により算定されるものです。
厚生年金への加入期間が長く、保険料を多く納めた人は年金額が高くなります。
障害年金は、障害によりどのくらい生活や仕事に影響があるかによって等級が判定されるため、「うつ病だから」という理由で年金額が増減することはありません。
また、初診日に国民年金に加入していると「障害基礎年金」、厚生年金に加入していると「障害基礎年金」と「障害厚生年金」が受け取れます。
初診日とは、障害の原因となった傷病で初めて医療機関で診療を受けた日
以下は、障害厚生年金の受給状況を図解したものです。
上図のとおり、障害厚生年金3級では障害基礎年金は受け取れません。
なお、障害年金を受ける人に扶養されている配偶者や子がいる場合、期間限定で加算がつくことがあります。
次章では、障害年金につく加算についてみていきましょう。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
障害基礎年金に加算される金額|子の加算額
障害基礎年金を受ける人が次のような子を扶養している場合は、年金額が加算されます。
- 18歳になった後の最初の3月31日までの子
- 20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子
加算される金額は下表のとおりです。
子の数 | 加算される金額子の数 |
---|---|
1人・2人 | それぞれ234,800円 |
3人目以降 | 1人につき78,300円 |
なお、子の加算額は18歳到達後の最初の3月31日が過ぎるともらえなくなります。(障害のある子は20歳まで)
子の加算額は、一度加算されれば生涯つくものではないので、注意しましょう。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
障害厚生年金に加算される金額|配偶者加給年金
配偶者加給年金は、障害厚生年金1~2級を受ける人に扶養している配偶者がいるときに支給されます。
配偶者加給年金の金額は次のとおりです。
- 配偶者加給年金 234,800円(令和6年度の年金額)
また、配偶者加給年金の対象となる配偶者の条件は以下のようになります。
- 64歳までの配偶者
- 同居している
- 配偶者の前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満であること
なお、支給対象となっている配偶者が65歳になると加給年金額はもらえなくなります。
子の加算額と同じように、期間限定の加算となりますので注意しましょう。
障害年金で支給される年金額をもっと詳しく知りたい人は、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説!をご一読ください。
うつ病で障害年金をもらうのは難しい?
一般的にうつ病の障害年金申請を自分や家族だけで準備するのは、とても難しいと言われています。
うつ病での申請が難しいと言われる主な理由としては、次の3つが挙げられます。
それぞれ順番に見ていきましょう。
(1)うつ病は数値で障害の状態が測れない
うつ病は、視力のように検査で障害の状態を測れないので、障害年金を申請するのが難しいです。
うつ病を診断するために血液検査をすることがありますが、うつ病の症状の状態を探るためではなく、他の病気と区別をするために行われます。
例えば、甲状腺の異常や貧血、ビタミン不足などが原因で抑うつなどの精神症状を引き起こすことがあるので、そういった病気がないかを調べるために検査をするのです。
つまり、血液検査をしたとしても、うつ病の状態をみることができません。
うつ病は、検査で障害の状態を数値化して見ることができないため、審査する人に病状が伝わりづらいことから、障害年金申請が難しいといわれています。
(2)主治医とのコミュニケーションが取りづらい
申請が難しい理由の2つ目は、「主治医との意思疎通がうまくいかない」ことです。
うつ病だけではありませんが、障害年金の審査は書類審査のみで、主治医の作成する診断書は、審査の際に大変重要視されています。
出典:診断書(精神の障害用)表面|日本年金機構
うつ病は、視力や聴力のように数値で障害の程度が測れないので、診断書に普段の生活の様子や困りごと、仕事をしている場合は業務の内容や会社からの援助など、自分の日常生活が正確に記載されていることが大切です。
正確な診断書作成のために、主治医とは普段の診察時に積極的にコミュニケーションをとり、情報共有できる関係を築くことが理想的といえます。
しかし、抑うつ状態にあるときは誰かと話したくなかったり、緊張して話せなかったりすることも多いです。
また、うつ病などの精神疾患の場合、医師が診察時に患者に質問をし過ぎると精神的に負担になることがあるので、あえて診療時間を短くすることもあるようです。
短い診察時間のあいだに、主治医とコミュニケーションを取るのが難しく、普段の生活の様子を知ってもらうことができなくて、症状を正しく記載した診断書を準備できないケースも見受けられます。
診察時に主治医とうまく話せないときは、家族に付き添ってもらい自分に変わって話してもらうといいでしょう。
家族が付き添えないときは、事前に自分の生活や困りごとについてまとめたメモを作っておき、診察時に主治医に渡す方法もおすすめです。
ゆうき事務所では、ご相談者様からヒアリングした内容をまとめて、主治医にお伝えする書類を作成しています。
主治医とコミュニケーションが取りづらいとお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。
(3)病歴・就労状況等申立書を的確に書くのが難しい
病歴・就労状況等申立書をうまく書けず、障害年金の申請が難しいと感じる人は多いです。
病歴・就労状況等申立書は基本的に申請する人が作成する書類で、これまでの病歴や通院歴、生活での困りごとなどを記載し、診断書ではわからない情報を補う役割があります。
病歴・就労状況等申立書には、「いつ病気が発現し、いつ医療機関を受診したのか」を正確に書くことが必要ですが、通院歴の長い人の場合は的確にまとめて書くことができないことが多々あります。
また、「病気で辛いことが多くて悲しい」など自分の気持ちを書く人もいますが、心情や経済的な不安を記載しても年金の審査にプラスになることはありません。
特に、うつ病の場合は無気力になって書類が作れなくなることが多いため、「うつ病で障害年金を申請するのは難しい」といわれています。
ゆうき事務所では、障害年金申請の代行を承ります。
病歴・就労状況等申立書の作成や、添付書類の準備などを自分や家族でできないときは、ゆうき事務所がお力になりますので、お気軽にお問い合わせください。
病歴・就労状況等申立書の書き方については、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介でわかりやすく解説していますので、参考になさってください。
うつ病と障害年金|よくある質問
うつ病での障害年金受給に関連して寄せられる質問に回答していきます。
うつ病ですが短時間で勤務しています。働いていても障害年金はもらえますか。
結論からお伝えすると、障害年金は働いていても受給できます。
ただし、うつ病や発達障害などの精神疾患や、がんなどの内部障害の場合、働いていると「症状が改善している」と判断されやすい傾向があります。
働いているといっても、障害者雇用枠で就労していたり、職場で特別な配慮を受けてなんとか働けていたりする場合は、診断書や病歴・就労状況等申立書にそういった状況を正確に反映しましょう。
働きながらの障害年金受給については、精神疾患でも働きながら障害年金はもらえる?受給のポイントをご紹介でわかりやすく解説しています。
うつ病で辛いので休職したいです。給与やボーナスはどうなりますか。
うつ病で休職するあいだの給与については、無給となる会社が多いです。
ボーナスについては、就業規則等で支払うと定められていたら支払われます。
ただし、ボーナスは査定期間中の仕事の成果により支払われるものなので、休職中はボーナスが支払われない可能性があります。
休職する予定がある人は、ご自身の会社の規定を調べておきましょう。
また、業務外の病気やけがで仕事を休んで療養するときには、傷病手当金を申請できることがあります。
傷病手当金は健康保険からの支給となりますので、ご自身が加入する健保組合等に申請しましょう。
休職期間の給与やボーナス、傷病手当金については、【うつ病で休職を考える方へ】手当や給料はどうなる?過ごし方は?障害年金もご紹介を参考になさってください。
参考:傷病手当金|協会けんぽ
うつ病と障害年金|ゆうき事務所の受給事例
ゆうき事務所にご依頼いただき受給できた事例をご紹介します。
うつ病で障害基礎年金2級を受給
- ご相談者 40代 女性
- 傷病名 うつ病
- 認定結果 障害基礎年金2級
- 支給額 年間約80万円+遡及分約400万円
【ご相談時の状況】
幼少期から父のDVを受けており、心身ともに疲弊してうつ病を発症しました。
大人になり就職をしても仕事が長続きせず、職場を転々としていたところ、弊所にご相談いただきました。
【相談から請求までのサポート】
弊所の社労士がヒアリングしてわかったことは、次のようなことです。
- 初診日が14年前
- 初診から現在まで同じメンタルクリニックに通院
- 食事の準備や部屋の掃除、洗濯ができず、同居の母に頼っている
- 単身での通院は出来ず、母が付き添う
- 希死念慮が強くあり、家族に刃物を向けることがあった
- アルコールと薬を同時に摂取するなどの危険行動が見られる
日常生活全般において、同居の母による介助が必要で、一人暮らしはできない状況にありました。
生活上の介助や危険行動、希死念慮等を主治医に正確にお伝えし、診断書に詳しく記載いただきました。
【審査の結果】
障害基礎年金2級(約80万円)と遡及分(約400万円)が認められました。
「仕事が続かず、金銭的な不安がありましたが、障害年金がもらえるので安心して就職活動にも取り組めます」とうれしい言葉をいただきました。
うつ病で障害厚生年金2級を受給
【ご相談時の状況】
長年勤めた会社で突然、降格の内示を受けたことをきっかけに、2年前にうつ病を発症しました。
会社を退職後、奥様と3人の小さなお子様と暮らしていますが、今後の人生が不安だと悩んでいたなか、弊所にお問い合わせいただきました。
【相談から請求までのサポート】
弊所の社労士がヒアリングしてわかったことは次のようなことです。
- 初診日が2年以上前
- 退職後は、自宅に引きこもり気味
- 友人などとの交流はほぼなく、孤立している
- ストレスで必要ないものまで衝動買いしてしまう
- 金銭管理は奥様が担当
- ガスを消し忘れなどの危険な行動も見受けらる
日常生活全般において、同居の奥様のサポートによって何とか成り立っていることを、病歴・就労状況等申立書にまとめて記載して申請しました。
【審査の結果】
障害厚生年金2級(約230万円)と遡及分約200万円が認められました。
「子供たちとの生活に大きなプラスになります。本当にありがとうございました!」とうれしいお言葉をいただくことが出来ました。
まとめ
うつ病によって日常生活や仕事に支障がある場合、障害年金を受給することで経済的な支えを得ることができます。
障害年金の金額は、等級や厚生年金の加入状況などによって異なります。
また、家族構成により、子の加算額や配偶者加給年金などの加算を期間限定で受けられるケースもあります。
しかし、主治医にうつ病の状態を正確に伝えることが難しいことがあり、病歴・就労状況等申立書の作成も簡単ではないと感じる人も多いです。
障害年金申請のプロセスで悩んでいる場合は、障害年金専門の社労士に依頼することで手続きをスムーズに進めることができます。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りて障害年金の受給に向けて一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。