更新日:2025.10.14
障害年金は働きながらもらえる?受給のポイントを解説【精神疾患の実例つき】

「仕事をしているけれど、障害年金は受け取れるのかな?」
このような不安を持ち、障害年金の申請をためらう方は多いです。
結論からお伝えすると、障害年金は働きながらでも受給できます。
実際、障害年金を受け取っている人の約半数は仕事を続けています。
この記事では、精神疾患のある人が働きながら障害年金を受け取れるケースや注意点、申請のコツを解説します。
最後に実際の受給事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
働いていても障害年金は受給できる理由
働いている人でも障害年金を受け取れる理由は、「働いていないこと」が受給条件ではないからです。
障害年金の受給には次の条件があります。
- 初診日に国民年金または厚生年金に加入中であること
- 保険料の納付要件を満たしていること
- 障害認定日時点で、障害等級(1~3級)に該当すること
障害年金の3つの条件には「働いていないこと」「仕事をしていないこと」は含まれていません。
つまり、就労していても3つの受給条件を満たせば、障害年金の対象となるのです。
ただし、日本年金機構では「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」により、障害ごとに各等級の認定基準を定めており、就労の有無も障害等級認定審査の判断材料の一つとしています。
障害年金の詳細や受給条件の詳細は下記の関連記事をご覧ください。
▶ 障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!
▶ 障害年金とは?何歳から請求できる?社労士がわかりやすく解説
約半数の人が働きながら障害年金を受給
厚生労働省の統計によると、障害年金を受け取っている20歳~59歳の人のうち、約半数が就労中です。
障害種別ごとの就労率(令和元年調査)は以下のとおりです。
【障害年金を受けている人(20歳~59歳)の就労状況(令和元年)】
障害の種類 | 就労率(%) |
---|---|
身体障害 | 48.0 |
知的障害 | 58.6 |
精神障害 | 34.8 |
審査が厳しいといわれる精神疾患のある人でも、3人に1人は障害年金を受けながら就労していることがわかります。
働いても影響がない傷病
仕事をしていても障害年金の認定や障害等級の審査に影響がない傷病は、下記のようなものが挙げられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
障害等級が原則として決まっている傷病
以下の傷病は、原則として障害等級が決まっているため、仕事をしても障害年金の審査に影響がありません。
傷病名 | 障害等級 |
---|---|
人工透析 | 2級 |
人工関節 | 3級 |
心臓移植 人工心臓 | 1級 |
人工弁 心臓ペースメーカー 人工肛門 | 3級 |
検査等で障害の程度が測れる傷病
視力や聴覚、手足の障害など、検査等の数値で障害の程度が測れる傷病は、客観的に判断できるため、働いてることが障害年金の審査に影響することはありません。
主な傷病は以下のとおりです。
傷病 | 症例 | 障害等級 |
---|---|---|
視覚障害 | 両眼の視力がそれぞれ0.03以下 | 1級 |
聴覚障害 | 両耳の聴力レベルが100デシベル以上 | 1級 |
上肢の障害 | 両上肢の全ての指を欠くもの | 1級 |
下肢の障害 | 両下肢を足関節以上で欠くもの | 1級 |
上記に示した以外にも多数の症例があります。
詳しくは日本年金機構が公開している障害認定基準でご確認ください。
精神疾患は「働けるから受給できない」と思われやすい
一方で、精神疾患や内部障害は、働き方が審査に影響することがあります。
働くことで障害年金の審査等に影響がでる傷病としては、以下のようなものが挙げられます。
- うつ病や双極性障害、てんかんなどの精神疾患
- がんなどの内部障害
精神疾患や内部障害は傷病名で障害等級が決まっておらず、検査等で障害の程度が数値で表せません。そのため、日本年金機構では障害年金審査の際に、障害の具体的な状況、状態をもとに判定を行います。
つまり、審査の際に就労していた場合「働けるのならば、障害の状態が良い」と判断されやすいのです。
しかし、働いていたとしても、実際は会社から下記のような配慮を受けているケースも多くあるでしょう。
- 短時間勤務している
- 簡単な作業のみ担当している
- 通院があるので、週に3日だけの勤務 など
上記のように会社から特別な配慮を受けて働いていたり、家族や友人などの援助を受けて生活している場合、診断書や病歴・就労状況等申立書でしっかりと現状を記載できれば、働きながら障害年金を受けられる可能性があります。
働きながら障害年金を受けるためのポイント
働きながら障害年金を受けるには、日本年金機構に仕事や日常生活の状況を的確にしっかりと伝えることがとても大切です。
障害認定基準では、発達障害や知的障害、統合失調症などの精神疾患での判断基準について、仕事をしているだけで状態が良くなったと判断せず、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容なども十分に考慮して判断するとしています。
うつ病などの精神疾患がある人が働きながら障害年金を受けるには、次のポイントを踏まえて申請しましょう。
順番に詳しく解説します。
主治医としっかり情報共有する
主治医に的確な診断書を作成してもらうために、ふだんの診察時から自分の生活の様子や仕事内容などをしっかりと情報共有しておきましょう。
障害年金の審査の際に、主治医の作成する「診断書」は重要視されています。診断書の内容で障害年金の受給や障害等級が決まると言っても過言ではありません。
精神疾患のある人が、働きながら障害年金を受給するためには、会社から特別な配慮を受けていたり、生活に支障が出ていたりといった状況を診断書にも反映してもらうことが不可欠です。
そのためには、診察時に主治医とコミュニケーションをとり、日頃から自分の仕事や生活の状況を知ってもらいましょう。
診察時にうまく主治医に話せない場合は、伝えたいことをメモしておき主治医に渡したり、家族に診察に立ち会ってもらい伝えてもらったりするなどの方法があります。
主治医とのコミュニケーションを日頃から大切にし、情報共有できる関係を築いておくことが理想的です。
診断書の役割やセルフチェックについては、下記の記事でわかりやすく解説しています。
▶障害年金の審査は診断書で決まる?知っておきたい注意点と社労士のサポート
▶【図解】障害年金診断書チェック完全ガイド|提出前に確認すべきポイント(精神疾患編)
病歴・就労状況等申立書で生活状況を知らせる
病歴・就労状況等申立書には日常生活での困りごとなどを記載し、診断書では足りない情報を補足しましょう。
主治医の作成した診断書は、医学的な視点から病状や治療内容を伝えるものです。診断書だけでは、障害年金を申請する人の普段の生活の様子や仕事の詳細な内容が読み取れないことがあります。
そこで「病歴・就労状況等申立書」で、障害年金を申請する人が日常生活での困っていることや仕事上で特別に会社から配慮されていることなどを具体的に記して、診断書の内容を補います。
「病歴・就労状況等申立書」に、家族や友人などのサポートや、会社の配慮があるおかげで仕事を続けられるという客観的な事実を詳細に記載できれば、受給の可能性が高まるでしょう。
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病歴・就労状況等申立書をもっと詳しく知りたい人は、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介をご覧ください。
障害年金の更新時に働いている場合の注意点
障害年金の更新の時期に仕事をしている場合は、細心の注意を持って診断書作成を依頼しましょう。
無事に申請が通り、障害年金の受給が始まっても多くのケースで1~5年で更新をしなければなりません。
障害年金を申請したときに働いておらず、更新の際に働いている場合、障害等級が落ちて年金が減額になったり、支給停止になることがあります。
障害年金の更新時に就労している場合は、会社から特別な配慮を受けていたり、周囲のサポートを受けて生活できている状況を診断書で日本年金機構に的確に伝えることが必要です。
会社の配慮内容や生活での支障を的確に反映した診断書を提出すれば、障害年金を継続受給できる可能性は十分あります。
現在の障害状態だけでなく、日常生活で不便に感じていること、困っていることなども診断書に記載してもらえるように、主治医とコミュニケーションをとり、情報共有しておきましょう。
障害年金の更新手続きの詳細は下記の記事で解説しています。
▶障害年金の更新は難しい?手続きの流れや注意するポイントをご紹介
よくある質問|働きながらの障害年金受給
働きながら障害年金を受給する際に、寄せられる質問に回答していきます。
Q. 働きながら障害年金を受給するときに所得制限はありますか?
障害厚生年金は、働きながら受け取っていても所得制限はありません。
一方で、20歳前に初診日のある障害基礎年金は、年収が一定額を超えると支給停止になります。
20歳前に初診日のある障害基礎年金で支給停止となる所得の基準は下記のとおりです。
前年の所得※ | 停止額 |
4,721,000円を超える | 年金は全額停止 |
3,704,000円を超える | 2分の1の年金額が支給停止 |
- 扶養親族がいる場合:扶養親族1人につき所得制限額が38万円加算
毎年、受給者本人の前年所得の確認が必要となり、前年所得に基づく支給対象期間は「10月分から翌年9月分まで」です。
障害年金と年収の関係はこちらの記事で詳しく解説しています。
▶年収が高いと障害年金をもらえない?家族の収入との関係もわかりやすく解説!
参考:20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等|日本年金機構
Q.障害年金は課税されますか?
障害年金は、非課税所得となるため税金はかかりません。
障害年金を受ける人が、会社等で働いて給与を受け取る場合、確定申告が必要です
- 給与分の150万円のみが課税対象となり、確定申告をする
障害のある人は税金面で様々な控除が受けられることがあります。詳しい控除については、国税庁が公開している障害者と税をご確認ください。
働きながら障害年金を受給できた事例
ゆうき事務所にご依頼いただき、働きながら障害年金を受給できた事例をご紹介します。
双極性障害で障害厚生年金3級を受給(30代女性)
- ご相談者 30代 女性
- 認定結果 障害厚生年金 3級
- 支給額 年間約58万円 遡及分として150万円
30代の女性は、一般企業で勤務し、初めて管理職に昇進しました。責任の重さと過労が重なり、体調を崩して受診したところ「双極性障害」と診断されます。
当時は週4日勤務を続けていましたが、「このまま働けなくなるのでは…」という不安から、障害年金の申請を決意されました。
ご相談を受け、詳しく状況を伺うと――
- 対人関係が難しく、在宅勤務を特別に許可されている
- 経営者の理解と特別な配慮で就労を継続
- 日常生活は母の全面的な介助に依存
これらの実情を、ゆうき事務所の社労士が病歴・就労状況等申立書に具体的にまとめました。
その結果、認定は障害厚生年金3級。
支給は年間約58万円、さらに遡及分として約150万円が決定しました。
「障害年金の受給が決定したので安心して生活がしていけます」とお喜びの声をいただきました。
うつ病で障害厚生年金3級を受給(60代男性)
- ご相談者 60代 男性
- 認定結果 障害年金 3級
- 支給額 年間約100万円 遡及分として約440万円
60代の男性は、持病の悪化に加え、高齢の母の介護ストレスからうつ病を発症しました。無理をして仕事には行っていましたが、精神的に限界を感じ、「退職すべきか…」と悩まれ、ご相談くださいました。
ヒアリングを重ね、明らかになった事実は次のようなことです。
- 6年前に初診日があり、遡及請求が可能
- 管理職から一般職へ降格
- 休職や早退が度々発生し、就労に大きな支障
- 食事・掃除・金銭管理など、日常生活は奥様の全面的なサポートに依存
これらの状況を病歴・就労状況等申立書に詳しく記載し、主治医の診断書にも反映していただきました。
その結果――
- 障害厚生年金3級が認定
- 年間約100万円の支給
- さらに遡及分約440万円が決定
「障害年金のおかげで、無理して働き続けずに退職して療養に専念できます」と安堵の言葉をいただきました。
このほかにも多くの受給事例がありますので、ぜひご覧ください。
▶ゆうき事務所の受給事例
まとめ
障害年金は、要件を満たせば働いていても受給が可能です。
そのためには、診断書や病歴・就労状況等申立書に、生活での困難や周囲の支援状況、職場での配慮を正確に反映させることが欠かせません。
ゆうき事務所では、これまで数多くの障害年金申請をサポートしてきた経験を活かし、確かな知識と実績で手続きをお手伝いします。
「診断書をどう依頼すればよいか不安…」
「病歴・就労状況等申立書が難しくて書けない…」
そんなお悩みに丁寧に対応いたします。
どうぞ安心して、専門家であるゆうき事務所にご相談ください。