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COLUMN

大人のADHDとは?特徴や向いている仕事、障害年金請求のポイントを解説

「気を付けているのに、ケアレスミスが多い」
「仕事に集中できない」
「時間を守れず、また遅刻してしまった」

こんなお悩みは、ADHD(注意欠如多動症)の特徴からきているのかもしれません。

ADHDは、仕事や日常生活に支障をきたすことがあるため、周囲の理解やサポートを受けることが大切です。
また、医療機関でADHDと診断を受けた場合、一定の条件を満たせば障害年金を受給できるケースもあります。

この記事では、大人になってから「ADHDかもしれない」と思い始めた方へ向けて、大人のADHDの特徴やADHDのある人に向いている仕事、障害年金受給のポイントについて解説します。

ADHD(注意欠如多動症)とは?

ADHD(注意欠如多動症)とは、発達障害のひとつです。

ADHDは、幼少期には男児に多く見られる傾向がありますが、成人すると男女差は1:1に近づきます。

2011年の厚生労働省の統計によると、成人期のADHDの有病率は、2.09%でした。

ADHDは、生まれつき脳の発達に凹凸があることが原因と考えられており、「落ち着きがない」「物事の優先順位を決めるのが苦手」などの特徴があります。

ADHDの特徴は子どものときから表れ、日常生活や学校でも困りごとを抱えることが多いです。

また、うつ病や不安症などの精神疾患や、ASD(自閉症スペクトラム障害)、チック症などの発達障害を併せ持つことも多いことが知られています。

ASD(自閉症スペクトラム障害)について知りたい人は、大人のASD(自閉症スペクトラム症)とは?特徴や診断、支援先もご紹介をご覧ください。

参考:ADHD(注意欠如・多動症)|国立精神・神経医療研究センター

参考:成人期注意欠陥・多動性障害の疫学、診断、治療法に関する研究|厚生労働省科学研究成果データベース

ADHD(注意欠如多動症)の特徴

ADHDの特徴は、以下のように大きく分けて「不注意」「多動性・衝動性」があります。

不注意・時間管理がうまくできない
・マルチタスクが苦手
・集中力が続かない
・不注意からミスをすることが多い
多動性・衝動性・思ったことをそのまま発言する
・多動性や衝動性が強く、「思い立ったら即行動」する

よく考えて行動できない点は困ることもありますが、変化の早い現代社会では「行動力のある人」として評価されることも多いです。

特に、スピーディーに判断することが求められる環境では、重宝される人材であるといえるでしょう。

また、ADHDの特徴の出方は個人差が大きく、不注意のみが強く表れる人もいれば、両方を併せ持つ人もいます。

大人のADHDが仕事に与える影響

大人のADHDは、仕事にさまざまな影響を及ぼすことがあります。

この章では、大人のADHDの特徴と仕事への影響について詳しくみていきましょう。

大人のADHDの困りごとと仕事への影響

仕事をするうえでの困りごとや仕事への影響を下表にまとめました。

特徴困りごと仕事への影響
不注意
注意力の低下
・長時間同じ作業に集中できない
・興味のないことはすぐに飽きてしまう
・気が散りやすく、周囲に影響されやすい
・指示を聞き逃すことが多い
・指示を間違えたり、ケアレスミスをしやすい
・忘れ物や落とし物が多い
・大切なものや重要書類でも失くしてしまう
衝動性
多動性
・思いついたことをすぐに行動してしまう
・危険なことを平気でしてしまう
・落ち着きがない
・悪気なく、人を傷つけるような発言をして人間関係が悪化する
・事故を起こしやすい
・落ち着きがなく、仕事に集中できない
時間管理が苦手・スケジュールを立てるのが苦手
・時間の管理ができない
・担当した仕事の納期が守れない
・時間内に仕事が終わらず、残業や休日出勤が多くなる
コミュニケーションが苦手・人の話を聞くのが苦手
・自分の意見をうまく伝えられないので、誤解されやすい
・チームワークがうまく取れない
・上司や同僚との人間関係が悪化する
・コミュニケーション不足によるミスが発生する
・意思疎通がうまくできず、取引先とのトラブルが発生する
ストレスへの弱さ・ストレスを感じやすく、すぐに落ち込んでしまう
・プレッシャーに弱い
・体調を崩しやすい
・ストレスで集中力や判断力が低下し、仕事が捗らない

ADHDのある人は、注意力が散漫になり、マルチタスクが苦手です。

また、思いついたことをすぐに口にするので、話題があちこちへと飛びやすい傾向もあります。

ADHDの特徴に合わない仕事とは?

ADHDの特徴から見て、向いていないと考えられる仕事を以下に例示します。

ADHDの特徴に向いていない仕事職種や職業
集中力・注意力を必要とする仕事事務職、データ入力など
長時間同じ作業を続ける仕事工場勤務、コールセンターなど
細かい作業を必要とする仕事精密機械の組み立て、デザインなど
時間厳守が求められる仕事バス運転、電車の運転など
プレッシャーの多い仕事営業職、教師など
人間関係が複雑な仕事政治家、弁護士など

ADHDのある人は、マルチタスクを求められる仕事では混乱してしまうことがあります。

不注意の傾向が強い人は、正確性が重要視される職種では苦痛を感じることが多いでしょう。

また、多動・衝動性が強く表れる人は、デスクワークなど一か所にとどまって作業をする仕事に向いているとは言えません。

なお、上記の職業や職種が「ADHDのある人は絶対にうまくいかない」というわけではなく、本人の努力や工夫、周囲のサポートで職場に馴染み、長く勤められるケースもあります。

ADHDの特徴に向いている仕事とは?

続いて、ADHDのある人に向いていると考えられる仕事を見ていきます。

ADHDの特徴に向いている仕事職種や職業
創造性や独創性を必要とする仕事芸術家、デザイナー、発明家など
興味のあることに取り組む仕事研究者、学者など
新しいことに挑戦する仕事起業家、ベンチャー企業の社員、フリーランスなど
問題解決能力が求められる仕事探偵、コンサルタントなど

ADHDのある人は、興味のあることに集中して取り組めたり、自由な発想を業務に生かせる環境では、やりがいを感じ、モチベーションを維持しやすい傾向があります。

自分の特徴や興味をよく理解して仕事を選べば、適職が見つかる可能性が高まるでしょう。

ADHDで障害年金が受給できる

ADHDのある人は、特徴からくる困りごとを抱えやすく、仕事が長続きしなかったり、体調を崩して休職したりすることもあるでしょう。

退職等を選択した場合、収入が減るため、経済的な不安を抱えてしまうことが多く見られます。

しかし、ADHDを含む発達障害の診断がある場合、障害年金の請求ができるケースがあります。
障害年金を受けることができれば、経済的な不安が軽くなり、療養に専念することも可能です。

そこで、次章では障害年金についてご紹介します。

障害年金とは

障害年金は、現役世代の人がけがや病気で仕事や生活に支障が起きたときに請求できる制度で、老齢年金や遺族年金と同じように国が運営しています。

身体障害だけではなく、ADHDを含む発達障害や、うつ病、双極性障害などの精神疾患も障害年金の支給対象です。

参考:障害年金ガイド|日本年金機構

障害年金の種類

障害年金は、初診日(障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日)に加入している年金制度により、受け取れる障害年金の種類が変わります。

障害年金の種類と違いは、以下のとおりです。

初診日に加入していた年金障害年金の種類障害の等級など
国民年金障害基礎年金1級、2級
厚生年金障害厚生年金1級、2級、3級
障害手当金
障害手当金とは、初診日から5年以内に病気やけがが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときに支給される一時金

障害基礎年金よりも、障害厚生年金の方が幅広い障害等級に対応しており、手厚い保障であることがわかります。

障害年金の制度の詳細は、障害年金とは?何歳から請求できる?社労士がわかりやすく解説をご覧ください。

参考:障害基礎年金の受給要件|日本年金機構

参考:障害厚生年金の受給要件|日本年金機構

障害年金の3つの受給要件

障害年金は、以下の3つをすべて満たすと請求できます。

  • 初診日要件

    初診日に国民年金か厚生年金に加入している

    20歳前か日本在住の60歳から64歳

  • 保険料納付要件

    初診日の前日において、年金の保険料を一定期間納付していること※1

  • 障害状態要件

    障害認定日※2に障害等級表に定める1級か2級の状態にあること

    (障害厚生年金は1級から3級に該当すること※3

※1 20歳前に初診日がある場合は納付要件は問われない

※2 障害認定日とは、初診日から1年6か月経過した日のこと

※3 障害認定日には障害が軽くても、後に重くなった場合は障害厚生年金を受けられることがある

障害年金の受給要件は、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!で、さらに詳しくご紹介しています。

障害年金の年金額

障害年金は、障害によりどのくらい日常生活や仕事に支障があるかで年金額が変わります。

傷病名により年金額が設定される制度ではないので、「ADHDだから」という理由で年金額が増えることはありません。

障害基礎年金と障害厚生年金の支給額をみていきましょう。

【障害基礎年金】令和6年度の年金額

1級1,020,000円
2級816,000円

子の加算額(令和6年度の年金額)

子の加算額(1人目、2人目)各234,800円
子の加算額(3人目以降)各78,300円

障害基礎年金を受ける人に、以下のいずれかにあてはまる子がいると、加算がつきます。

  • 18歳の年度末までの子
  • 障害等級1級または2級の障害状態にある20歳までの子

【障害厚生年金】令和6年度の年金額

1級報酬比例の年金額×1.25
+障害年金1級(1,020,000円)
+配偶者加給年金額
2級報酬比例の年金額
+障害年金2級(816,000円)
+配偶者加給年金額
3級報酬比例の年金額
(最低保障612,000円)
障害手当金(一時金)報酬比例の年金額×2年分
(最低保障あり)

報酬比例の年金額は、これまで納めた保険料や厚生年金の加入期間を元に年金額を算定するため、人により金額が異なります。

配偶者加入年金額(令和6年度の金額)

配偶者加給年金額は、障害厚生年金1級〜2級を受ける人に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。

配偶者加給年金額234,800円

障害年金でもらえる金額をもっと詳しく知りたい人は、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説!をご覧ください。

参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構

参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構

参考:障害年金ガイド|日本年金機構

ADHDで障害年金を請求するポイントとは?

ADHDを含む発達障害で障害年金を受給する場合、審査の際に重要となるのは「診断書」「病歴・就労状況等申立書」です。

障害年金は、請求者が傷病によりどの程度生活や仕事に影響が出ているかを書面で提出し、日本年金機構が審査します。

視力や聴力は、検査等で障害の状態や程度を測ることができますが、発達障害は検査等の数値で客観的に示すことができません。

そのため、発達障害で障害年金を受給するためには、診断書と病歴・就労状況等申立書に日常生活の困りごとや周囲からのサポートの実態を具体的に記載し、審査する人に伝えることがとても大切です。

次章で、診断書と病歴・就労状況等申立書についてみていきます。

ADHDでの障害年金受給|診断書

診断書は、主に治療内容や現在の病状や日常生活や就労状況を、主治医が医学的な観点から見て作成します。

主治医は、普段の診察やこれまでの経過で障害の状態は把握できますが、家庭や職場等での様子を見ることはできません。

そこで、定期的に診てもらう診察時には、主治医とコミュニケーションをとり、自分の生活の様子や困りごとなどの情報を主治医と共有しましょう。

主治医にうまく話せるか心配な人は、家族に付き添ってもらって、主治医に普段の生活の様子を伝えてもらったり、事前に話したいことをメモして主治医に手渡したりすることをおすすめします。

主治医と話しやすい関係が築ければ、日常生活や仕事での困りごと等を診断書に反映してもらえる可能性が高まるといえます。

ADHDでの障害年金受給|病歴・就労状況等申立書

ADHDを含む発達障害で障害年金の受給を目指すときには、病歴・就労状況等申立書で診断書の内容を補うことが大切です。

病歴・就労状況等申立書には、診断書ではわからない「初めて病院で診療を受けるまでの経過」や「これまでの通院状況」「日常生活や仕事の状況」を記載します。

診断書にも日常生活や仕事についての記載がありますが、生活の実態をすべて表せるものではありません。

そのため、病歴・就労状況等申立書では診断書だけではわからない生活の様子や仕事での困りごとなどを、年金の審査をする人に的確に伝えことがとても重要です。

【病歴・就労状況等申立書(表面)】

病歴・就労状況等申立書(表面)

出典:病歴・就労状況等申立書|日本年金機構

病歴・就労状況等申立書については、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介でさらに詳しく解説しています。

障害年金の書類作成が難しいときは

病歴・就労状況等申立書は、基本的に障害年金を請求する本人が作成します。

しかし、病歴・就労状況等申立書は作成の難易度が高く、普段書類を書き慣れている人でも「記載するのが大変だ」と感じることが多いです。

このように病歴・就労状況等申立書の作成は、障害年金請求の高いハードルとなっています。

障害年金の書類作成が難しいときや自分で書くことに自信がないときは、障害年金専門の社会保険労務士に申請代行を依頼できます。

社労士溝上裕紀

溝上社労士

ゆうき社会保険労務士事務所では、発達障害やうつ病での障害年金の申請代行を多く手がけています。
障害年金の書類の作成や、手続きなどでわからないことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

社会保険労務士への依頼を詳しく知りたい人は、障害年金の申請を依頼するメリットは4つ!【社労士の選び方もわかりやすく解説】をご覧ください。

ADHDをサポートする公的機関

障害年金のほかにも、ADHDのある人が利用できる公的機関や制度があります。

制度名・機関名サポート内容問い合わせ先など
障害者手帳・各種福祉サービスの提供
・税金の優遇 など
お住まいの市区町村役所
発達障害者支援センター・医療、教育、労働など総合的に支援発達障害者支援センター・一覧|発達障害情報・支援センター
障害者就業・生活支援センター・仕事と生活について相談でき、支援も行う障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
地域障害者職業センター・障害のある人に専門的な職業リハビリテーションサービスを提供地域障害者職業センター|高齢・障害・求職者雇用支援機構

ADHDを含む発達障害は、本人の工夫で改善できる部分もありますが、周囲の理解とサポートを受けることが重要です。

困ったときは、職場の上司や同僚、家族に相談するだけではなく、上記のような公的機関を積極的に利用してはいかがでしょうか。

まとめ

ADHDは、生まれつきの脳発達の偏りが原因で起こる発達障害のひとつです。
ADHDの特徴としては、「落ち着きがない」「衝動的な発言や行動をする」「集中力が続かない」などがあり、仕事が長続きしないなどの悩みを持つこともあります。

ADHDの特徴の出方は個人差が大きく、同じADHDという診断名でも表れる全く症状が違うことも少なくありません。

大人のADHDは、仕事をするうえで困りごとを抱えることも多くあります。
しかし、自分の症状を正しく理解して、特徴を生かせる仕事に就き、周囲のサポートを受けながら、長く勤めることも可能です。

また、ADHDを含む発達障害の診断を受けた場合、一定の条件を満たせば障害年金を受けることもできます。

障害年金の審査は書類審査のみで、書類作成ができずに断念する人も多く見受けられます。

障害年金の請求が難しいと感じるときは、障害年金専門の社会保険労務士への依頼を検討しましょう。