更新日:2024.11.29
ASD(自閉症スペクトラム症)で障害年金をもらうのは難しい?受給条件や年金額もご紹介!
ASD(自閉症スペクトラム症)は発達障害のひとつで、テレビやインターネットでも耳にする機会が多くなりました。
ASDのある人は他人とのコミュニケーションが苦手なことが多く、職場での人間関係に悩んで退職し、経済的な不安を抱えることもあります。
しかし、ASDなどの発達障害でも、3つの条件を満たせば障害年金を受け取ることができます。
この記事では、ASDで障害年金を受け取りたい人に向けてASDでの受給要件や受け取れる年金額をご紹介します。
ASDでの申請のポイントや必要書類も解説するので、最後まで読むと障害年金申請の方法がわかります。
ASDで障害年金を申請したい人や申請を予定している人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ASDで障害年金はもらえるの?
結論からお伝えすると、ASDで障害年金を受け取れます。
障害年金は、現役世代の人が病気やけがで障害を負い、生活や仕事に支障があるときに請求できる年金保険で、保険料を一定期間納付することや国の定める障害等級にあてはまるなどの条件をクリアすると受け取ることができます。
しかし、ASDでの申請は障害状態を審査する人に伝えるのが難しいため、障害年金を受給することは簡単ではないといえるでしょう。
障害年金の詳細は、障害年金とは?何歳から請求できる?社労士がわかりやすく解説でご紹介しています。
また、大人のASD(自閉症スペクトラム症)とは?特徴や診断、支援先もご紹介では、ASDの診断や支援先についてもわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
ASDで障害年金をもらえる3つの条件
ASDで障害年金を受け取るには、3つの受給条件をすべて満たすことが必要です。
- 初診日※に国民年金か厚生年金の被保険者であること(初診日要件)
- 初診日の前日時点で保険料を一定期間納付していること(保険料納付要件)
- 障害認定日※または現在において国が定める認定基準に該当すること(障害程度条件)
※ 初診日とは、障害の原因となった傷病で初めて医療機関で診療を受けた日のこと
※ 障害認定日とは、初診日から1年6か月を経過した日のこと
3つの受給条件をそれぞれみていきましょう。
ASDで障害年金をもらえる条件|(1)初診日要件
ASDで障害年金をもらうための条件の一つ目は、「初診日に国民年金か厚生年金に加入していること」です。
初診日に国民年金に加入していた人は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた人は「障害厚生年金」と「障害基礎年金」を受給できます。
ASDで障害年金をもらえる条件|(2)保険料納付要件
ASDで障害年金をもらうためには、次の2つの条件のうちいずれかを満たすことが必要です。
- 初診日がある月の2ヶ月前までに、年金加入期間全体の3分の2以上を納付しているか免除されている
- 初診日がある月の2ヶ月前までに、直近1年間に滞納期間がない
なお、20歳前に初診日がある場合は、納付要件は問われません。
ASDで障害年金をもらえる条件|(3)障害程度要件
初診日に年金制度に加入し、保険料納付要件を満たしたとしても、国が定める障害等級にあてはまらないときには障害年金は不支給となります。
日本年金機構では、障害認定基準の中でASDを含む発達障害で障害等級の認定をされるものとして以下のように例示しています。
障害等級 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
2級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの |
3級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの |
なお、障害等級の判定は、就労状況や生活の実態を踏まえて総合的に考慮して判定されます。
発達障害を含む精神疾患での障害等級判定については、【精神疾患で障害年金を申請する方へ】等級判定ガイドラインをわかりやすく解説で詳しくご紹介していますのでぜひご一読ください。
また、障害年金の受給条件をさらに詳しく知りたい人は、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!をご覧ください。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
ASDでもらえる障害年金の年金額は?
障害年金は、障害によりどのくらい日常生活や仕事に支障があるかで年金額が変わる制度です。そのため「ASDだから」という理由で年金額が増減することはありません。
令和6年度の年金額は以下のようになります。
障害の程度 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
---|---|---|
1級 | 1,020,000円+子の加算額 | 報酬比例の年金額×1.25 ※配偶者の加算あり |
2級 | 816,000円 +子の加算額 | 報酬比例の年金額 ※配偶者の加算あり |
3級 | なし | 報酬比例の年金額 ※最低保証額612,000 円 |
障害手当金 | なし | 報酬比例の年金額×2 ※支給は一度のみ |
報酬比例の年金額とは、厚生年金に加入した期間や納めた保険料により算定されるもので、加入期間が長く、保険料を多く納めた人は年金額が高くなります。
なお、誕生月に届く「ねんきん定期便」に報酬比例の年金額のおおよその金額が記載されているので、参考にしてみてください。
障害年金で支給される年金額をもっと詳しく知りたい人は、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説!をご一読ください。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
ASDで障害年金を申請するときのポイント
ASDは、視力や聴力の障害のように検査等で数値として障害の程度が測れるものではありません。
そのため、「診断書」や「病歴・就労状況等申立書」で審査する人に自分の障害の状態が伝わるように書類を作成することが重要です。
ASDでの障害年金の申請時に、特に注意したいポイントを2つご紹介します。
主治医に日常の困りごとを正確に伝えよう
ASDで障害年金の認定を受けるには、診断書に日常生活や周囲のサポートについて正しく記載してもらうことがとても大切です。
診断書は障害年金審査の重要書類のひとつで、主治医が作成する診断書の記載内容を元に障害年金の認定や等級の判断が行われます。
そのため、主治医とはふだんの診察のときからコミュニケーションを取り、日常生活や周囲のサポートについて情報を共有できる関係を築き、自分の状態を診断書に反映していただくのが理想的といえるでしょう。
しかし、短い診察時間で自分のことをうまく話すことができない人も少なくありません。
自分で主治医に伝えることが難しいときは、家族に診察に付き添ってもらい、ふだんの生活の様子を伝えてもらうといいでしょう。
もし、付き添える家族がいないときには事前に生活や仕事での困りごとや周囲のサポート内容、職場で受けている配慮などをメモしておき、診察のときに主治医の手渡す方法もあります。
無理なく主治医とコミュニケーションをとる方法を見つけておきましょう。
ゆうき事務所では、ご相談者様からヒアリングした内容をまとめ、主治医に手渡す資料としてご用意できます。主治医とのコミュニケーションに不安をお持ちでしたらどうぞお気軽にお問い合わせください。
病歴・就労状況等申立書には生活の状況をわかりやすくまとめよう
ASDで障害年金を申請するときには、自分の病歴や仕事、日常生活の状況が審査する人に伝わるようにわかりやすく「病歴・就労状況等申立書」にまとめましょう。
病歴・就労状況等申立書は、基本的に障害年金を申請する人が作成する書類で、ASDを含む発達障害の場合は、出生日から現在までの状況を記載します。
保育園や幼稚園、学校で困ったことや、先生に指摘されたことや友達関係での困りごとなど、具体的なエピソードがあれば記載しましょう。
なお、自分の心情や不安な気持ちなどを記載しても、審査の対象にはならないので注意しましょう。
病歴・就労状況等申立書を自分や家族だけで作成するのが難しいときは、障害年金専門の社労士へ依頼することもできます。
病歴・就労状況等申立書の書き方は、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介でわかりやすく解説していますので、興味のある人はぜひご一読ください。
ASDで障害年金を申請するときに必要な書類
ASDで障害年金を申請するときは、以下のような書類が必要となります。
- 年金請求書
- 診断書
- 病歴・就労状況等申立書
- 年金手帳や基礎年金番号通知書など基礎年金番号がわかるもの
- 年金を受け取る通帳
- 戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか
- 受診状況等証明書 など
障害年金の必要書類は、申請する人の病歴や通院歴、家族構成により上記以外の書類を求められることもあります。年金事務所や障害年金専門の社労士に相談してから準備しましょう。
障害年金の必要書類については、障害年金の必要書類一覧!ケース別でわかりやすくご紹介で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
ASDでの障害年金申請の流れ
ASDで障害年金を申請するときは次のような流れで準備しましょう。
それぞれ順番に見ていきましょう。
ステップ(1):初診日を確認し、年金事務所等で相談する
障害年金を申請するときは、初診日を証明することが必要です。
療養期間が長く、初診日がはっきりとわからない場合でも以下のようなものを準備して年金事務所や街角の年金相談センター等を訪問しましょう。
- 初診日の記載のある診察券
- 初診当時の医療機関や調剤薬局の領収書
- 初診当時のおくすり手帳
- 初診当時に処方された薬剤が入っていた袋
- 初診当時を記録している日記や家計簿などの記録
- 障害者手帳を申請したときの診断書のコピー など
障害年金の相談のときには、これまでの病歴や通院歴なども聞かれるので事前に整理してまとめておくことをおすすめします。
障害年金の相談は、年金事務所や街角の年金相談センターで受け付けるほか、障害基礎年金についてはお住まいの市区町村役所でも相談できます。
年金事務所等へ相談に行くことが難しいときは、障害年金専門の社労士に申請代行を依頼することもできます。
参考:街角の年金相談センター一覧|全国社会保険労務士会連合会
ステップ(2):年金請求書や病歴・就労状況等申立書を作成する
年金事務所で相談すると、個別に必要となる添付書類についても教えてもらえます。
年金事務所での相談の後は、年金事務所のアドバイスに従って、年金請求書や病歴・就労状況等申立書を作成しましょう。
ステップ(3):診断書や戸籍謄本などの必要書類を添えて年金事務所等へ提出する
年金請求書や添付書類が準備できたら、年金事務所等に提出します。
障害年金請求書の提出先は以下のとおりです。
年金の種類 | 対象となる人 | 提出先 |
---|---|---|
障害基礎年金 | ・20歳前に初診日のある人 ・初診日に国民年金に加入していた人 など | お住まいの市区町村役所 ※初診日が国民年金第3号被保険者の場合は、年金事務所または街角の年金相談センター |
障害厚生年金 | ・厚生年金加入期間中に初診日がある人 | 年金事務所 街角の年金相談センター ※初診日に共済組合に加入していた人は、初診日に加入していた共済組合 |
年金の申請から審査までは3か月ほど、認定されるとさらに1か月ほどで指定の口座に入金されます。
障害年金の申請については【障害年金の手続きをスムーズに進めたいあなたへ】申請の流れをわかりやすく解説で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
ASDでの障害年金受給|よくある質問
ASDでの障害年金受給に関連して寄せられる質問に回答していきます。
私はASDで、現在は短時間労働をしています。働いていても障害年金は受けられますか?
障害年金は、パートやアルバイト、正社員として働いていても受け取れます。
ただし、ASDのある人が働いていると年金審査の際に「障害の程度が軽い」と判断される傾向があるので、診断書や病歴・就労状況等申立書でご自身の病状や生活の様子、仕事内容、周囲のサポートなどが正しく伝わるように記載することが大切です。
診断書の依頼方法や病歴・就労状況等申立書の作成に迷うときは、ゆうき事務所がお力になれます。お気軽にお問い合わせください。
なお、障害年金を働きながら受給するポイントについては、精神疾患でも働きながら障害年金はもらえる?受給のポイントをご紹介でわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
ASDで障害年金をもらえるのはいつまでですか?もらえる期間が決まっているのか知りたいです。
障害年金は、障害等級にあてはまる程度の障害がある期間は受け取ることができます。
ASDで障害年金を受ける場合、多くのケースで1~5年の有期認定になり、更新を続けながら障害年金を受け取ることになります。
更新の結果、障害の状態が軽くなり障害等級にあてはまらなくなると年金は支給停止となります。
また、更新の期限(誕生月の末日)までに「障害状態確認届」を提出しなかったり、記載内容に不備があったりすると障害年金が差し止めされて年金の振込が止まるので注意しましょう。
参考:年金Q&A (障害状態確認届(診断書)が届いたとき)|日本年金機構
ASDと障害年金|ゆうき事務所での受給事例
ゆうき事務所にご依頼いただき、ASDで障害年金を受けた事例をご紹介します。
ASDとうつ病で障害厚生年金2級を受給
- ご相談者 20代 男性
- 傷病名 うつ病、ASD
- 認定結果 障害厚生年金2級
- 支給額 年間約100万円
【ご相談時の状況】
大学卒業後就職しますが、ASDの特性のため職場でうまくコミュニケーションが取れず退職しました。その後、就職活動を続けましたがうまくいかず、日々焦燥感を感じつつ暮らしていたところ、お母様から弊所へお問い合わせいただきました。
【相談から障害年金申請までのサポート内容】
弊所へご相談をいただいた時点で受診期間が4か月ほど空いていたので、まずは主治医の
いる医療機関を受診していただきました。
弊所の社労士がご相談者様へヒアリングしたところ判明したことは次のようなことです。
- 幼少期から周りとコミュニケーションがうまく取れず、いじめを受けていた
- 一度就職したがコミュケーションエラーと仕事のスピードについていけず退職した
- 日常生活は母の介助があり、なんとか成立している
上記の内容を主治医にお知らせし、診断書に詳しく記載いただきました。
【審査の結果】
障害厚生年金2級(約100万円)が認められました。
ご相談者様には大変喜んでいただき、サポートされているお母様も安心された様子でした。
まとめ
ASDは発達障害のひとつで、他人とのコミュニケーションが苦手なことが多く、職場や学校で人間関係に悩むことがあります。
ASDなどの発達障害でも、3つの条件を満たせば障害年金を受け取ることができます。
ただし、視力や聴力のように検査等で数値として障害の程度が測れないので、診断書や病歴・就労状況等申立書で審査をする人にしっかりと自分の状況が伝わるようにすることが大切です。
「主治医へどのように診断書を依頼したらいいかわからない」「病歴・就労状況等申立書が書けない」など、障害年金の申請でお困りのときは障害年金専門の社労士へ相談することもできます。
ゆうき事務所では、ASDを含む発達障害やうつ病での障害年金の申請代行を承ります。
相談料・着手金はいただきませんので、障害年金の申請に不安をお持ちでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。