更新日:2024.10.17
障害年金の事後重症請求とは?いつからもらえる?年金額や必要書類、申請の流れもご紹介
障害年金に「事後重症請求」という請求方法があることをご存じですか?
以前は障害の程度が軽く、障害等級にあてはまらなかった場合でも、その後症状が重くなって障害年金を請求することを「事後重症請求」と呼びます。
例えば、交通事故でけがを負い、最初は軽い症状だったものの、数年後に状態が悪くなって仕事ができなくなったような場合は、事後重症請求に該当するかもしれません。
この記事では、障害年金の事後重症請求についてわかりやすくご紹介します。
- 障害年金の事後重症請求とはどんな制度か
- 事後重症請求の年金額はいくら
- 事後重症の必要書類とは
- 事後重症請求での申請の流れ
最後まで読んで「事後重症請求」を理解し、あなたの障害年金の申請にお役立てください。
目次
障害年金の事後重症請求とは?
障害年金の「事後重症請求」とは、障害認定日には障害等級にあてはまる状態ではなかったけれど、時間が経って症状が悪化した場合に障害年金を請求する方法を指します。
障害認定日とは、初診日から1年6か月を経過した日のこと
事後重症請求を簡単にいうと「障害認定日ではなく、現在の時点から障害年金を支給してください」と国に年金を請求する制度だといえるでしょう。
障害年金の事後重症請求はいつからもらえる?
事後重症請求が認定されると、障害年金を請求した月に受給権が発生し、その翌月から支給開始されます。
受給権とは、年金を受け取れる権利のこと
年金請求書を提出してから審査が終わるまでは3か月ほど、年金の支給が始まるまでにはさらに1か月ほどを要します。
事後重症請求の場合は、障害年金を請求した月以前に遡って年金は支給されませんので注意しましょう。
障害年金の事後重症請求ができる条件とは?
障害年金を事後重症で請求するには、次の4つの条件を満たすことが必要です。
(1) 障害認定日以降に症状が悪化したこと
事後重症請求は、障害認定日以降に症状がさらに悪化し、日常生活や仕事に支障があるような状態のときに申請できます。
例えば、うつ病で医療機関に通院していたけれど症状が軽く仕事もできた人が、数年後うつ病の症状が重くなって、仕事ができなくなり、家事全般を家族に頼るような状態になったときには、事後重症請求での障害年金受給の可能性があります。
(2) 障害等級に該当する状態になったこと
事後重症請求をするには、現在は症状が悪化し、障害年金の等級表に定められた障害の程度に達していることが必要です。
障害等級は1級から3級(障害基礎年金は1級と2級)まであり、障害の程度によって等級が決定されます。具体的な障害の程度については、日本年金機構が公開している国民年金・厚生年金保険 障害認定基準でご確認いただけます。
(3)保険料の納付要件を満たしていること
事後重症請求で障害年金を申請するには、初診日の前日までに以下のいずれかを満たすことが求められます。
【3分の2要件】
初診日の前日において、初診日の2か月前までに年金加入期間の3分の2以上を納付または免除している
【直近1年要件】
初診日の前日において、初診日の2か月までの直近1年間に未納がない
保険料納付要件を詳しく知りたい人は、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!をご覧ください。
(4) 64歳以下であること
65歳になると、事後重症請求で障害年金の申請はできません。
具体的には、65歳の誕生日の2日前までに障害年金を申請することが求められています。
障害年金の事後重症請求でいくらもらえる?
事後重症請求が認められると、請求をした翌月から年金が支給となりますが「事後重症請求だから」という理由で加算されることはありません。
令和6年度の年金額は以下のとおりです。
障害の程度 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
---|---|---|
1級 | 1,020,000円+子の加算額 | 報酬比例の年金額×1.25 ※配偶者の加算あり |
2級 | 816,000円 +子の加算額 | 報酬比例の年金額 ※配偶者の加算あり |
3級 | なし | 報酬比例の年金額 ※最低保証額612,000 円 |
障害手当金 | なし | 報酬比例の年金額×2 ※支給は一度のみ |
報酬比例の年金額とは、厚生年金に加入した期間や納めた保険料により算定されるもので、加入期間が長く、保険料を多く納めた人は年金額が高くなります。
障害年金の年金額の詳細は、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説!関連記事でわかりやすくご紹介しています。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
障害年金の事後重症請求の必要書類
事後重症請求をする際に必要となる主な書類は次のとおりです。
- 年金請求書
- 年金手帳または基礎年金番号通知書等
- 診断書(現在の障害の状態を記載したもの)※
- 受診状況等証明書
- 病歴・就労状況等申立書
- 障害年金を受け取る金融機関の通帳等
※診断書の日付から3か月以内に、年金事務所または市区町村役場に提出する
上記の書類のほかにも、家族構成や家族の収入により戸籍謄本や住民票、配偶者の所得証明などが必要なことがあります。障害年金の必要書類は、病歴や通院歴、家族構成などにより一人ひとり変わるので、年金事務所や障害年金専門の社労士へ相談しましょう。
障害年金の必要書類については、障害年金の必要書類一覧!ケース別でわかりやすくご紹介でも解説しているので、ぜひご覧ください。
なお、「病歴・就労状況等申立書」は障害年金審査の重要書類の一つで、年金を申請する人が作成するものですが、記載が難しいことが多いです。
病歴・就労状況等申立書については、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介でわかりやすく紹介しているので、ご一読ください。
事後重症請求を選択するケースとは?
障害が重くなった場合以外にも、次のような場合は事後重症請求をすることがあります。
- 障害認定日に通院していた医療機関が閉院していたり、カルテが廃棄されている
- 障害認定日から3ヶ月以内に受診していない
- 医師が診断書を作成してくれない
障害認定日請求をするには、障害認定日から3か月以内の診断書が必要です。
障害認定日から3か月以内の診断書が用意できなければ、障害認定日に障害の状態が重くても、事後重症請求をすることになります。
なお、障害認定日請求とは、障害認定日から1年以内に障害年金を請求することです。
障害認定日請求については、事後重症請求以外にも請求する方法はありますか?でご紹介しています。
事後重症請求で障害年金を申請する流れ
事後重症請求で障害年金を申請する流れは次のようになります。
それぞれのステップについてみていきましょう。
ステップ1:初診日を確認し、年金事務所等で相談する
障害年金を受給するためには、「初診日」の証明が必要です。初診日のわかるものを持って年金事務所等へ相談に行きましょう。
- 初診当時の医療機関の領収書や診察券
- 初診当時の調剤薬局の領収書やおくすり手帳
- 初診当時に処方された薬剤の入っていた袋 など
転院が多い人はすぐに思い出せないことが多いので、相談に行く前にご自身の通院歴をメモしておくことをおすすめします。
なお、年金事務所のほか、街角の年金相談センターでも障害年金の相談ができます。
参考:街角の年金相談センター一覧|全国社会保険労務士会連合会
ステップ2:診断書などの必要書類を用意する
年金事務所等で障害年金の相談をすると、個別に必要書類を教えてもらえます。年金事務所等で受けた指示に従って、必要書類を用意しましょう。
障害年金の必要書類には、診断書など時間がかかる書類もあるので、早めに準備を始めましょう。
ステップ3:年金事務所等に請求書と必要書類を提出する
年金の請求書と必要書類が準備できたら、年金事務所等に提出しましょう。
請求書等の提出先は下表のようになります。
障害年金の種類 | 提出先 |
---|---|
障害基礎年金 (初診日に国民年金に加入していた人) | お住まいの市区町村役所 ※ 初診日が国民年金第3号被保険者の場合は、年金事務所または街角の年金相談センター |
障害厚生年金 (初診日に厚生年金に加入していた人) | 年金事務所または街角の年金相談センター |
障害年金の手続きの流れは、【障害年金の手続きをスムーズに進めたいあなたへ】申請の流れをわかりやすく解説で詳しくご紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。
事後重症請求でよくある質問
事後重症請求について寄せられる質問に回答していきます。
事後重症で請求する際に注意することはありますか?
事後重症で障害年金を請求するときは次の2つに注意しましょう。
(1)事後重症請求は、早く手続きしよう
障害年金が受け取れるのは事後重症請求をした翌月からで、遡っての支給はありません。
事後重症請求の申請が1か月遅れると、1か月分の年金をもらい損ねるので、早く手続きをしましょう。
(2)老齢基礎年金を繰り上げていると事後重症請求はできない
65歳前であっても、老齢基礎年金を繰り上げて受け取っている人は事後重症請求ができません。
「老齢基礎年金の繰上げ」とは、65歳を待たずに60~64歳までの間に年金をもらい始めることです。
老齢基礎年金を繰り上げると65歳に達したとみなされるため、事後重症請求ができなくなります。
持病があるなど障害年金を請求する可能性のある人は、老齢基礎年金の繰上げをするときは慎重に決断することをおすすめします。
事後重症請求以外にも請求する方法はありますか?
障害年金の請求方法には、事後重症請求以外にも「障害認定日請求」「遡及請求」があります。請求方法による年金受給の違いを下表に示します。
請求方法 | いつから請求できるか | 年金の支給開始時期 | 遡及できるか |
---|---|---|---|
事後重症請求 | 障害認定日以降に障害が重くなったとき | 障害年金の請求の翌月から | なし |
障害認定日請求 | 障害認定日から1年以内 | 障害認定日の翌月から | あり |
遡及請求 | 障害認定日から1年以上が経過後 | 障害認定日の翌月から | あり (最大5年) |
障害認定日請求と遡及請求では、障害年金の請求が遅れたとしても障害認定日に遡って年金を受けられることが大きな特長です。
請求時に「障害給付 請求事由確認書」を提出すると、「障害認定日請求」が不支給となった場合でも「事後重症請求」で審査されます。
なお、遡及請求については、【最大5年分まとめて支給】障害年金の遡及請求は難しい?必要書類や受給事例もご紹介でわかりやすく紹介していますのでぜひご一読ください。
事後重症請求|ゆうき事務所での受給事例
事後重症請求で障害年金受給に至った事例をご紹介します。
うつ病で障害厚生年金3級を受給
- ご相談者 30代 女性
- 認定結果 障害厚生年金3級
- 支給額 年間約60万円
【ご相談時の状況】
夫からのDVや義理の母のモラハラが継続的にあり、心身ともに疲弊してうつ病を発症しました。その後、自営を始めましたが、経営がうまくいかず金銭的に不安を抱え、弊所にご相談いただきました。
【弊所でのサポート内容】
初診日が3年前にあり遡及請求の可能性を探りましたが、障害認定日から3か月以内に医療機関を受診していなかったため、事後重症請求に切り替えて申請準備を進めました。
弊所の社労士がご相談者様の生活状況などをヒアリングし、主治医にお知らせしたことは次のようなことです。
- 小さな子どもと2人で暮らしているが、近所に住んでいる家族が定期的に日常生活の世話をしている
- 自営業を営んでいるが、会社運営はできないので、周りのスタッフが全力でサポートしている
主治医には、上記の内容を踏まえて「家族の手助けがなければ生活はできず、仕事についても周囲のサポートでなんとか成り立っている」ことを診断書に詳しく記載していただきました。
【審査結果】
障害厚生年金3級(約60万円)が認められました。
「小さな子どもを抱え、経済的な不安がありましたが、障害年金の受給が決まって心身ともに安定しました!」と感謝のお言葉をいただきました。
まとめ
障害年金の事後重症請求とは、障害認定日以降に障害が重くなったときに請求できます。
また、障害認定日に状態が悪くても障害認定日時点での診断書を用意できないときは、事後重症請求をすることがあります。
事後重症請求し認定されると、請求の翌月から年金の支給が始まり遡ることはありません。
請求が遅れると、その分の年金がもらえなくなるので、事後重症請求をするときはスピーディーに手続きをしましょう。
「書類の準備が進まない」
「早く申請したい」
「年金事務所に行くのが大変だ」
こんなときは、ゆうき事務所にご相談ください。経験豊富な社労士が障害年金申請をお手伝いします。