更新日:2025.07.24
障害年金申請に所得証明書は必要?いつ・どこで取る?社労士がやさしく解説

障害年金の申請準備を進めていると、書類の多さに頭が混乱してきませんか。
特に、所得証明書は「いつのが必要なの?」「どこで所得証明書が取れるの?」といった疑問が寄せられることが多いです。
障害年金の申請において、所得証明書は常に必須というわけではありません。
配偶者や子の加算、特定の給付金請求など、状況によって必要性が変わります。
この記事では、障害年金の申請に所得証明書が必要なケースと不要なケースを具体的に解説します。
また、所得証明書の取得時期や場所、所得がない場合の対応、そしてマイナンバーカードでの省略の可否についても、わかりやすくご説明していきます。
最後まで読んで、所得証明書の疑問を解消し、スムーズな申請準備を進めるための羅針盤としてご活用ください。
目次
障害年金の申請に「所得証明書」は必要?
障害年金の申請において、所得証明書が必要かどうかは、申請する障害年金の種類や加算の有無、そして申請者の家族状況によって異なります。
障害年金の申請をする人すべてが、所得証明書を準備するわけではありません。
20歳前に初診日のある障害基礎年金を申請する場合や、配偶者や子の加算を受けたい場合などでは、所得証明書が必要です。
具体的に見ていきましょう。
障害年金の申請で「所得証明書」が必要な4つのケース
障害年金を申請するときに所得証明書が必要となるケースは次の4つがあります。
- 障害厚生年金1~2級に該当し、配偶者の加算がある場合
- 障害年金1~2級に該当し、子の加算がある場合
- 20歳前傷病による障害基礎年金を受ける場合(本人の所得制限があるため)
- 年金生活者支援給付金を請求する場合
順番にご説明します。
(1)障害厚生年金1~2級に該当し、配偶者の加算があるとき
障害厚生年金で配偶者の加算を受けるためには、配偶者の所得証明書が必要です。
障害厚生年金の1級または2級に該当し、配偶者を生計維持している場合、障害年金に配偶者の加算(令和7年度の年額は239,300円)が支給されます。
なお、単身赴任や入院などで別居していても、仕送りや定期的な連絡などで経済的に支え合っていれば「生計維持」が認められます。
別居での生計維持は、年金事務所が個別に判断しているので、ご自身の場合は認められるのかを確認しておくといいでしょう。
(2)障害年金1~2級に該当し、子の加算がある場合
障害年金の1級または2級を受給している人に子がいる場合、子の状況によっては加算が受けられるため、所得証明書が必要です。
ただし、お子さんの年齢や学校の状況によっては、所得証明書そのものの提出が不要なケースもあります。
以下に、子の加算申請時に必要となる主な書類をまとめました。
子の年齢など | 必要となる所得証明書 | 補足 |
---|---|---|
小・中学生 | なし | 義務教育期間中の子は、所得証明書の提出は求められない |
高校生 | 「全日制」と明記された学生証のコピー | 所得証明書の代わりとして提出できる |
また、加算の対象となる子の年齢は以下の条件があります。
- 18歳の年度末まで(高校を卒業する年齢まで)
- 20歳未満で障害年金の1級または2級に該当する障害のある子
子の加算額は、18歳の年度末で支給が終了となります。
障害のある子の場合は20歳になると支給がなくなるので注意しましょう。
障害年金の配偶者加給年金額や子の加算については、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説!で詳しくご説明しているのでぜひご覧ください。
(3)20歳前傷病による障害基礎年金を受ける場合
20歳前に初診日がある障害基礎年金を申請する場合、本人の所得によって年金額が変わるため、本人の所得証明書(課税証明書や非課税証明書)が必要です。
前年の所得により、下表のように年金の支給額が変わります。
【扶養親族がいない場合】
前年の所得額 | 支給される年金額 |
---|---|
3,704,000円以下の場合 | 全額支給される |
3,704,001円から4,721,000円以下の場合 | 年額の2分の1が支給される |
4,721,000円を超える場合 | 年金は支給されない |
なお、扶養親族がいる場合は、以下のように所得制限額が加算されます。
扶養親族 | 1人につき38万円 |
老人控除対象配偶者または老人扶養親族 | 1人につき48万円 |
特定扶養親族または控除対象扶養親族(19歳未満の者に限る) | 1人につき63万円 |
参考:20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等|日本年金機構
(4)年金生活者支援給付金を請求する場合
年金生活者支援給付金を請求する際には、ご自身の所得状況によって受給の可否が決まるため、所得証明書の提出が必要です。
障害基礎年金を受給している方がこの給付金を受け取るには、前年の所得が4,621,000円以下であること(扶養親族がいない場合の基準額) が条件となります。
障害年金だけでなく、この年金生活者支援給付金も受け取りたい人は、所得証明書を忘れずに準備し、申請手続きを進めましょう。
なお、年金生活者支援給付金のついては、厚生労働省が公開している年金生活者支援給付金制度についてで詳細をご確認ください。
障害年金申請で「所得証明書」が不要なケースとは?
障害年金の申請において、すべてのケースで所得証明書が必要になるわけではありません。
これまで所得証明書が必要となるケースを解説してきましたが、実は、特定の状況下ではこの書類を提出する必要がない場合があります。
具体的には、以下の3つのケースでは所得証明書は基本的に不要となります。
- 扶養家族がいない方が、20歳以降に初診日がある障害基礎年金を申請するとき
- 扶養家族がいない方が、障害厚生年金(加算なし)を申請するとき
- 年金生活者支援給付金を申請しない場合
簡単にいうと、結婚しておらず扶養家族がいない人が、障害年金本体のみを申請する場合は、所得証明書は不要です。
ただし、事実婚など個別の事情によっては、所得証明書が求められることもあります。
そのため、ご自身の状況で所得証明書が必要かどうかは、事前に年金事務所や街角の年金相談センター、障害年金専門の社労士へ確認することをおすすめします。
お近くの年金事務所等は下記でご確認ください。
所得証明書は「いつの時点」のもの?
障害年金申請に必要な所得証明書は、原則として「年金を受け取れる可能性があるすべての年度の分」です。
これは、障害年金の受給権が発生するかもしれない時期から現在までの所得状況を確認するためです。
しかし、初診日が10年前でも、実際に障害年金が遡って支給されるのは最大5年分と時効で決まっています。
そのため、時効で支給されない年度の所得証明書は省略可能です。
つまり、実際に障害年金が支給される可能性がある過去5年分の所得証明書を準備すると覚えておきましょう。
【重要】一目でわかる所得証明書が必要な年度早見表
令和7年から8年までの間に必要となる所得証明書を表にまとめました。
申請時期 | ・配偶者や子の加算がなく、 20歳以降に初診日のある場合 | ・配偶者や子の加算 ・20歳前傷病の障害基礎年金 ・年金生活者支援給付金を申請 上記を申請するときに必要な所得年度 |
---|---|---|
令和7年1月~6月 | なし | 令和6年度(令和5年分所得) |
令和7年7月~12月 | なし | 令和7年度(令和6年分所得) |
令和8年1月~6月 | なし | 令和7年度(令和6年分所得) |
令和8年7月~12月 | なし | 令和8年度(令和7年分所得) |
なお、所得証明書は前年1月1日~12月31日までの所得を証明するものです。
例えば、令和7年度の所得証明書は、令和6年1月1日~12月31日までの所得が記載されていることになります。
所得証明書はどこで取れる?
所得証明書は市区町村の窓口で受け取れるほか、郵送でも対応してもらえます。
所得証明書が取れる場所を下表にまとめました。
所得証明書が取れるところ | 方法や特徴など |
---|---|
市区町村役所の窓口 | 住民税課や市民税課などの担当窓口 ・本人確認書類と手数料(300~400円程度)を持参して申請 |
郵送申請 | ・役所のホームページから申請書をダウンロード ・必要書類(本人確認書類のコピー・手数料・返信用封筒など)を同封して郵送で申請 ※ 詳細はお住まいの市区町村のホームページ等で確認を |
コンビニエンスストア | ・マイナンバーカードを持っていれば、全国の多くのコンビニのマルチコピー機で取得可能 |
一部自治体ではオンライン申請も可能 | ・スマホやパソコンから申請し、郵送で受け取れるサービスを提供する自治体もあり |
なお、所得証明書は、「その年の1月1日時点で住民登録があった市区町村」で発行されます。
引っ越しをした場合は、その当時の1月1日に居住していた自治体へ申請しましょう。
所得がない場合は「非課税証明書」を添付
障害年金を申請する際に、所得がない年の所得証明書が必要な場合は「非課税証明書」を提出しましょう。
例えば、長期間の治療により仕事ができなかった人や、専業主婦(夫)、学生などで、ご自身の所得がない場合は、所得証明書ではなく「非課税証明書」を準備します。
非課税証明書を提出することで、年金事務所はその人の所得がゼロであることを確認できます。
なお、非課税証明書を取得できる場所は、その年の1月1日に住民登録されていた市区町村役場です。
遡及請求では所得証明書は複数年度分が必要
障害年金を過去に遡って請求する「遡及請求」を行う場合、原則として、遡る期間のすべての年度における所得証明書が必要になります。
20歳前傷病による障害基礎年金を申請する場合や、配偶者や子の加算を受けたい場合には、過去の所得状況によって支給額が変わる可能性があるため、複数年度の所得証明書が必要です。
以下の表は、令和7年7月以降に遡及請求を行う場合に必要となる所得証明書の年度を示したものです。
申請する期間 | 必要な所得証明書の年度(証明対象期間) |
---|---|
令和2年1月1日~令和2年12月31日 | 令和2年度(令和元年分所得) |
令和3年1月1日~令和3年12月31日 | 令和3年度(令和2年分所得) |
令和4年1月1日~令和4年12月31日 | 令和4年度(令和3年分所得) |
令和5年1月1日~令和5年12月31日 | 令和5年度(令和4年分所得) |
令和6年1月1日~令和6年12月31日 | 令和6年度(令和5年分所得) |
令和7年1月1日~令和7年6月30日 | 令和6年度(令和5年分所得) |
令和7年7月1日~令和7年12月31日 | 令和7年度(令和6年分所得) |
これらの所得証明書は、各年の1月1日時点で住民票があった市区町村役場で取得します。
実際に何年分の所得証明書が必要になるかは、個別の状況によって大きく異なります。
そのため、必ず年金事務所や障害年金専門の社労士に相談し、必要な所得証明書の種類と年度を確認しましょう。
なお、遡及請求については、【最大5年分まとめて支給】障害年金の遡及請求は難しい?必要書類や受給事例もご紹介で詳しくご紹介しているので、ぜひご覧ください。
マイナンバーカードで所得証明書を省略できる?
障害年金の申請では、所得証明書を含む一部の必要書類は、マイナンバー(個人番号)を提出することで省略できます。
平成29年(2017年)1月からは、情報連携ネットワークシステムが整備され、マイナンバーを利用して所得情報の確認が可能になりました。
具体的には、障害年金の請求書にマイナンバーを記入するだけで、以下の書類の添付を省略できます。
- 配偶者の所得証明書
- 子の所得証明書(18歳の年度末まで、または20歳未満で障害のあるお子さんのもの)
- 子の学生証のコピーや在学証明書
- ご本人の生年月日が確認できる書類(戸籍謄本、戸籍抄本、住民票など)
これにより、障害年金の申請手続きにおける所得証明書の準備負担が大幅に軽減されます。
ただし、DVや虐待などの理由でマイナンバーの「情報不開示設定」を行っている場合は、システム経由での情報取得ができません。
これまで通り所得証明書をご自身で用意しましょう。
所得証明書だけじゃない!障害年金申請は書類準備が複雑
障害年金の申請には、所得証明書以外にも多くの書類が必要で、その準備は複雑で労力がかかります。
例えば、以下のような書類も障害年金の申請には欠かせません。
- 診断書
- 病歴・就労状況等申立書
- 戸籍謄本、住民票
- 受診状況等証明書
これらは取得先や作成方法がそれぞれ違います。
障害年金の手続きは、一つ一つの書類が組み合わさって初めて完成する、複雑なプロセスです。
障害年金の申請で困ったら、専門家である社会保険労務士(社労士)への相談を検討しましょう。
社労士へ申請代行を依頼するメリットについては、障害年金の申請を依頼するメリットは4つ!【社労士の選び方もわかりやすく解説】をご覧ください。
なお、診断書や病歴・就労状況等申立書については、下記の関連記事で詳しく解説しています。
▶病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介
▶障害年金の審査は診断書で決まる?知っておきたい注意点と社労士のサポート
まとめ
障害年金1級・2級を受ける人に生計同一の配偶者や子がいる場合、加算のために家族の所得証明書が必要です。
また、20歳前傷病による障害基礎年金は本人の所得制限があるため、所得証明書を提出します。
所得がない場合は「非課税証明書」を添付しましょう。
平成29年からマイナンバー記入で所得証明書が省略できるようになり、手続きが楽になりました。
しかし、障害年金の申請では、診断書や病歴・就労状況等申立書など、専門知識を要する書類作成が多く、複雑な側面があります。
人生を左右する大切な手続きですので、正確な申請のためにも、専門家である社労士への相談を検討しましょう。
ご自身や家族だけで障害年金の申請ができないと感じたときは、障害年金専門のゆうき事務所へご相談ください。
精神疾患での申請が豊富な社労士が、あなたやご家族の声に真摯に耳を傾け、全力でサポートします。