更新日:2025.12.15
ADHDで障害年金がもらえる!受給のための3つの条件と5つの申請対策を社労士が解説
ADHD(注意欠如・多動症)の特性は、「不注意」「衝動性」「多動性」として現れ、仕事が続かない、ミスが多い、金銭管理ができないなど、大人の日常生活や社会生活に大きな支障をきたすことがあります。
このような困難を抱える方は、生活を支えるための公的な支援制度である障害年金が受給できます。ADHDを含む発達障害は、精神疾患の中でも不支給になりやすい傾向があるからこそ、専門家による正しい対策が必要です。
この記事では、ADHDのある方が障害年金を受給するために知っておくべき「3つの受給条件」と、不支給リスクを軽減するための「5つの具体的な申請対策(重要ポイント)」を、専門の社労士が詳しく解説します。
目次
ADHDで障害年金をもらうための3つの受給要件
ADHD(注意欠如・多動症)による生活や仕事への支障から障害年金を申請するには、以下の3つの要件すべてを満たすことが必要です。
- 初診日に国民年金か厚生年金の被保険者であること(初診日要件)
- 初診日※1の前日時点で保険料を一定期間納付していること(保険料納付要件)
- 障害認定日※2もしくは現在、国が定める認定基準に該当すること(障害程度要件)
※1 初診日とは、障害の原因となった傷病で初めて医療機関で診療を受けた日のこと
※2 障害認定日とは、初診日から1年6か月を経過した日のこと
これらの要件のうち一つでも満たない場合は、障害年金を申請しても不支給となります。
それぞれ見ていきましょう。
(1)初診日要件
まず、初診日要件を満たさなければなりません。
年金の審査では、障害の原因となった傷病で初めて医療機関を受診した日(初診日)に、国民年金または厚生年金などの公的年金制度に加入していたことを証明することを求められます。
ADHDでの申請において特に注意が必要なのは、ADHDと診断される以前の、不眠や抑うつなどの精神症状で初めて受診した日が初診日となるケースが多いことです。
ADHDと診断されなくても、なんらかの精神症状で医療機関に初めて行った場合、その日が初診日となります。
どの年金制度に加入していたかによって、受け取る年金の種類や年金額が大きく変わるため、初診日の証明には細心の注意が必要です。
この初診日確定こそが、ADHDでの障害年金申請における最大の難関の一つであり、専門的な知識と調査能力が不可欠です。
障害年金特有の初診日の考え方や証明方法の詳細は、障害年金の初診日とは?カルテがないときの対処法もご紹介!をご覧ください。
(2)保険料納付要件
次に、保険料納付要件を満たす必要があります。
これは、初診日の前日時点で、年金保険料を一定期間納付していること(または免除されていること)を証明することです。
障害年金をもらうためには「年金加入期間全体の3分の2以上を納付しているか免除されている」または「直近1年間に滞納期間がない」のいずれかを満たすことが必要です。
納付状況は初診日の前日時点で判断するというルールがあります。
国民年金には「追納」という制度があり、免除や猶予された期間の保険料を後から納めると老齢年金に反映されます。
一方、障害年金では初診日を過ぎてから国民年金の保険料を納めても「納付」とは認められません。つまり、未納が多いと保険料納付要件を満たせず、障害年金を申請できないということです。
ただし、20歳前に初診日がある方は、この納付要件は問われません。
(3)障害程度要件(等級への該当)
最後に、障害程度要件を満たす必要があります。
これは、障害認定日(原則として初診日から1年6か月経過した日)または現在において、国が定める障害等級に該当する程度の障害状態にあることです。
障害等級は、診断書や病歴・就労状況等申立書等の書類をもとに審査され、障害厚生年金の場合は1~3級、障害基礎年金では1~2級にあてはまらないときは障害年金は支給されません。
ADHDで障害年金を申請する場合の3つの要件と注意点を下表にまとめました。
| 要件 | 概要 | ADHDでの申請で注意すべき点 |
|---|---|---|
| 初診日要件 | 障害の原因となった病気で初めて医療機関を受診した日に、国民年金または厚生年金に加入していること | ・ADHDと診断される前の、精神症状で初めて受診した日を証明できるかどうかが焦点となる |
| 保険料納付要件 | 初診日の前日時点で、年金保険料を一定期間納付していること(または免除されていること) | ・初診日を過ぎてからの納付は認められない・20歳前に初診日がある場合はこの要件は問われない |
| 障害程度要件 | 障害認定日(初診日から1年6か月経過した日)または現在において、国が定める障害等級に該当すること。 | 診断書や申立書で、日常生活や労働への具体的な支障を客観的に示す必要がある |
障害年金の申請条件については、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
ADHDでの障害年金申請前に「知っておきたいポイント5選」
ADHD(注意欠如・多動症)を含む精神疾患の障害年金申請は、書類で生活の困難さを客観的に証明することが難しいため、「不支給」になりやすいといわれています。
しかし、事前に準備をしっかりとしておき、必要な対策をとれば、ADHDでも障害年金を受給できる可能性は十分あります。
ここでは、事前に知っておくべき重要な5つのポイントをご紹介します。
- 初診日が不明でも諦めない(過去の通院記録の掘り起こし)
- 主治医に「ふだんの生活の困難さ」を具体的に伝える
- 診断書の内容を必ず確認する
- 病歴・就労状況等申立書は「客観的な事実」に徹する
- 働いている場合は「特別な配慮」を強調する
詳しくみていきましょう。
(1)初診日が不明でも諦めない(過去の通院記録の掘り起こし)
障害年金の申請には、障害の原因となった病気で初めて医療機関を受診した日(初診日)の証明が必須です。
ADHDの場合、特有の症状のほかに不眠や抑うつなどの症状が見られ、ADHDと診断される前の、精神症状で初めて受診した日が初診日となるケースが多く、転院を繰り返していると証明が難しくなります。
【具体的な対策】
- カルテがなくても探す
初診の医療機関にカルテが残っていなくても、当時のお薬手帳、健康保険の給付記録、家計簿、領収書、または日記など、当時の通院の事実を示すものを徹底的に探しましょう。 - 「受診状況等証明書」を、一番最初に精神症状で受診した医療機関に依頼し、初診日を確定させます。
一番初めに受診した医療機関が廃院しているなどの場合は、転院先の病院で一番古い受診日を証明する方法もあります。
初診日確定はADHDでの障害年金申請の鍵です。諦めずに社労士にご相談ください。
(2)主治医に「ふだんの生活の困難さ」を具体的に伝える
障害年金の審査で最も重要視されるのは、主治医が作成する診断書です。
この診断書には、あなたの日常生活での困りごとや周囲からのサポート内容が、正確に反映されていることが不可欠です。そのためには、主治医と細やかなコミュニケーションを取り、しっかりと情報共有する必要があります。
短い診察時間の中で、ADHDの特性からくる日常生活のすべての困難を主治医が把握するのは至難の業です。あなたの努力と工夫が、診断書の精度を大きく左右します。
【具体的な対策】
- メモを活用する
診察前に、自分の症状や日常生活・仕事上で「いつ、どこで、どんな困難があったか」「周囲(家族など)がどんな援助をしているか」をメモにまとめ、診察時に主治医に手渡しましょう。 - ライフヒストリー(生活歴)の整理
幼少期からの発達傾向や、就学・就職でADHD特性がどのように支障をきたしたかを整理したメモ(または当事務所が作成をサポートする資料)を活用しましょう。 - 家族の同席
可能であれば、家族に診察に付き添ってもらいましょう。
第三者から見た客観的な困難さを主治医に伝えてもらうことは、説得力のある診断書を作成するために非常に有効な手段です。
(3)診断書の内容を必ず確認する
診断書を受け取ったら、必ず記載内容を確認しましょう。
主治医は忙しい診察の合間に診断書を作成するため、日付を誤ったり、実際の症状と異なる記載をしたりすることがあり、それが不支給につながる可能性があります。
ADHD の場合、以下の診断書(精神の障害用)を使用します。

精神疾患の診断書は、A3サイズで両面印刷されており、記載する箇所が多いのが特徴です。障害年金の診断書に不慣れなお医者さまも多く、正確に記載するのは大変な作業となります。
【具体的な対策】
- 開封して確認
診断書が封印されていても、必ず開封して記載内容を確認してください。特に「日常生活能力の判定」や「現症の状況」欄が、実際の困難さと合致しているか確認が必要です。 - 修正依頼
記載内容に疑問点や事実と異なる点があれば、速やかに主治医に相談し、修正を依頼しましょう。申請の際に正確な診断書を添付できれば、スムーズな審査にもつながります。
(4)病歴・就労状況等申立書は「客観的な事実」に徹する
ご自身で作成する「病歴・就労状況等申立書」は、主治医の診断書だけでは伝わりきらないあなたの症状や日常の困難さを、審査官に正確に伝えるための、とても重要な書類です。
この書類は、年金の審査基準である「日常生活の困難さ」を示すためのものです。
そのため、あなたの心情的なつらさや経済的な不安を記載しても、残念ながら審査にプラスの影響を与えることはありません。
「客観的な事実」に徹して、あなたの困難を具体的に示していきましょう。
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【具体的な対策】
- 日常生活での援助の事実を記載
「辛い」という感情ではなく、
「金銭管理ができないため、家族に管理してもらっている」
「掃除や洗濯ができないため、週に〇回訪問介護(または家族の介助)を受けている」など、受けた具体的な援助の事実を客観的に記載します。審査官に伝わる申立書を作成することが、障害年金認定への鍵となります。
病歴・就労状況等申立書の書き方については、病歴・就労状況等申立書は障害年金の重要書類!書き方や記入例もご紹介でわかりやすくご説明していますので、ぜひご覧ください。
さらに、動画で知りたい方のために、ゆうき事務所代表社労士の解説をご用意しています。
(5)働いている場合は「特別な配慮」を強調する
障害年金は働いていても受給できますが、審査では「働いている=症状が軽い」と判断されやすい傾向があります。
そのため、就労している場合は労働能力の制限を詳細に記載することが重要です。
【具体的な対策】
- 雇用形態の明記
障害者雇用枠での就労や、短時間・パート勤務であれば病歴・就労状況等申立書に忘れずに記載しましょう。 - 業務内容と制限
上司の指示や手順書が必須である、ミスが多く常にチェック体制が敷かれている、残業や複雑な作業は不可能である、など、同僚と同じ働き方ができていない点を記載します。
このように、診断書や病歴・就労状況等申立書に自分の病状や周囲からのサポート内容などを端的に、かつ正確に記載することが重要です。
ゆうき事務所代表社労士がADHDでの障害年金受給について、動画で解説しています。ぜひご覧ください。
ADHDの障害等級認定基準(1級・2級・3級)の目安
障害年金が支給されるかどうかは、生活や仕事への支障の程度により、国が定める障害等級に該当するかで決まります。
日本年金機構が公開している障害認定基準によると、ADHDを含む発達障害での障害等級の目安は以下のとおりです。
障害の程度 障害の状態 1級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの 2級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの 3級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの
なお、精神疾患で障害等級を判定するときには、「障害認定基準」のほかに「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を基準として審査しています。
ADHDを含む精神疾患での障害等級の判定については、【精神疾患で障害年金を申請する方へ】等級判定ガイドラインをわかりやすく解説で詳しくご紹介しています。
ADHDでもらえる障害年金の金額(令和7年度)
障害年金は、障害により日常生活や仕事にどのくらい制限があるかにより年金額が変わります。
したがって、「ADHDだから」という理由で年金額が増減することはありません。
令和7年度の障害年金の年金額は以下のとおりです。
| 障害の程度 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
|---|---|---|
| 1級 | 1,039,625 円+子の加算額 | 報酬比例の年金額×1.25 ※配偶者の加算あり |
| 2級 | 831,700円+子の加算額 | 報酬比例の年金額 ※配偶者の加算あり |
| 3級 | なし | 報酬比例の年金額 ※最低保証額623,800円 |
| 障害手当金 | なし | 報酬比例の年金額×2 ※支給は一度のみ |
報酬比例の年金額は、定額ではなく年金の加入期間や平均給与額によって人それぞれで金額が違います。
ご自身の年金加入状況や報酬比例の年金額の目安は、誕生月に届く「ねんきん定期便」でおおよそ確認できるので、参考にしてください。
障害年金の年金額の詳細は、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説!でご紹介しています。
ADHDで障害年金申請する際の必要書類
障害年金はすべて書類審査で、対面しての聞き取りはありません。
以下の書類を提出し、不備や内容の矛盾がないか厳しくチェックされます。
| 書類名 | 作成者 | 目的と重要性 |
|---|---|---|
| 年金請求書 | 申請者 | 基礎情報や請求する年金の種類などを記載する申請書本体 |
| 診断書(精神の障害用) | 主治医 | 障害の状態と日常生活能力を医学的に証明する最重要書類 |
| 病歴・就労状況等申立書 | 申請者(または家族) ※社労士が代行して作成もできる | 初診からの経過、日常生活や就労における具体的な困難さを審査官に訴える書類 |
| 受診状況等証明書 | 初診の病院 | 初診日を証明する書類 |
| その他添付書類 | 役所など | 住民票、戸籍謄本、年金手帳、所得証明書など |
家族構成や病歴により、このほかにも書類を求められることがあります。
必ず年金事務所や社労士に相談して、ご自身の必要書類を確認しておきましょう。
ADHDでの障害年金で遡及請求はできる?
障害年金は、原則として申請した翌月分から支給されますが、ADHDでも条件を満たせば「障害認定日」まで遡って年金を受け取れる場合があります。
これを遡及請求(そきゅうせいきゅう)といいます。
- 初診日を証明できること。
- 障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)の時点で、すでに障害等級(障害基礎年金は1~2級、障害厚生年金は1~3級)に該当していたことを証明できること。
ADHDの特性で特に重要なのは、「障害認定日当時の診断書」が取得できるかどうかです。
認定日から3ヶ月以内の状態を記載した診断書が必要となるため、当時のカルテが残っているか、医師が当時の状況を客観的に判断できるかが鍵となります。
遡及請求が認められれば、最大で過去5年分の年金が一括で支給されるため、経済的に大きなメリットがあります。
なお、遡及請求では過去の受診状況が複雑なケースが多いため、専門家への相談が不可欠です。
ADHDで働いていたら、障害年金はもらえない?
障害年金は、3つの受給条件を満たしていれば、パートや短時間勤務、正社員の区別なく働いていても受け取れます。
しかし、働いていると年金審査の際に「障害の程度が軽い」と判断される傾向があります。
診断書や病歴・就労状況等申立書でご自身の病状や生活の様子、仕事内容、周囲のサポートなどが正しく伝わるように記載することが大切です。
例えば、職場で特別な配慮を受けていたり、障害者雇用枠で働いていたりするなどがあったら、忘れずに記載しましょう。
なお、障害年金を働きながら受給するポイントについては、精神疾患でも働きながら障害年金はもらえる?受給のポイントをご紹介でわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
ADHDで障害基礎年金2級が認められたケース
ゆうき事務所にご依頼いただいた、ADHDでの障害年金受給事例をご紹介します。
- ご相談者:40代 女性
- 認定結果:障害基礎年金2級
- 支給額:年間約130万円+遡及分約500万円
認定のポイント
幼少期から発達障害の傾向があり、就職しても短期間での転職を繰り返していました。ヒアリングの結果、洗濯や掃除が苦手で部屋を片付けられない、金銭管理が出来ない、運転中に事故を起こし車を売却したなど、日常生活が夫や訪問介護サービスによるサポートなしには成り立たない状態であることがわかりました。
弊所の社労士は、これらの客観的な援助の事実を具体的に整理し、診断書と申立書で「一人暮らしは困難で援助が必要な状態」であることを正確に審査官に訴えた結果、障害基礎年金2級が認められました。
幼少期から発達障害の傾向が見られ、就職をしても短期間での転職を繰り返しました。
ご相談時は就労移行支援事業所に通所していましたが、なかなか就職につながらず、焦りを感じているとのことでした。
ADHDと障害年金|よくある質問(Q&A)
Q. ADHDで障害者手帳を持っています。障害年金はもらえますか?
障害者手帳と障害年金は別の制度で運営されているので、障害者手帳があるからといって障害年金がもらえるとは限りません。
障害者手帳は都道府県や市などの自治体で発行するもので、障害年金とは審査方法や等級も違います。
ただし、障害者手帳は障害年金の審査のときに参考になるので、所持している人は病歴・就労状況等申立書にコピーを添付しましょう。
なお、障害年金と障害者手帳については、障害年金と障害者手帳の違いとは?生活を支える制度をわかりやすく解説でご紹介しています。
Q.ADHDで障害年金を申請したいのですが、自分でできるか不安です。
ADHDでの障害年金申請に不安を感じるときは、障害年金専門の社労士に代行を依頼できます。
ADHDは視力や聴力のように数値で障害の程度が測れないので、書類作成でつまづくことが多いです。
障害年金の申請に不安があるときは、社労士に申請代行を依頼すると書類作成だけでなく、年金事務所とのやり取りからも解放されます。
障害年金申請でお困りの際はゆうき事務所へご相談ください
社会保険労務士法人ゆうき事務所(大阪障害年金サポートデスク)は、発達障害やうつ病などのメンタル疾患に特化した障害年金専門の社労士事務所です。
社労士が丁寧にヒアリングをして、あなたの症状やライフスタイルに合わせてサポートします。初回は無料で相談できますので、ぜひお問い合わせください。
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