更新日:2026.08.25
てんかんで障害年金はもらえる?認定基準・金額の目安・手帳まで社労士が解説
「てんかんでも障害年金はもらえますか」というご相談は、当事務所にもよく寄せられます。
てんかんは、発作の重さや頻度だけでなく、治療を受けても症状がどの程度残り、日常生活や仕事にどれくらい影響しているかを見て、障害年金がもらえるかどうかが決まります。
この記事では、てんかんの障害年金の認定基準や受給額の目安、障害者手帳との関係、申請時の注意点までまとめて解説します。
てんかんは障害年金の対象になる
てんかんは、障害年金の認定基準において「精神の障害」の一つとして扱われており、要件を満たせば受給の対象になります。
とはいえ、「てんかん」という診断名がついているだけでは、審査を通過するには不十分です。
抗てんかん薬の服用や手術によって発作が十分に抑えられ、生活や仕事に大きな制限が出ていなければ、原則として障害年金の対象にはなりません。
一方、次のような場合は、障害年金が受給できる可能性があります。
- 通院や服薬を続けていても発作が続いている(いわゆる難治性てんかん)
- 発作によって転倒や意識障害が起きる
- 外出・入浴・調理・通勤・就労に制限が出ている
発作の有無そのものよりも、発作とどう付き合いながら日々の生活を送っているかが、審査で重視されるポイントです。
障害年金を受け取るための基本的な条件については、障害年金の3つの受給条件とは?年齢は関係ある?わかりやすく解説!でさらに詳しく紹介していますので、ぜひご一読ください。
公式YouTubeチャンネルでも障害年金の受給要件について解説していますので、こちらもご確認ください。
てんかんの障害年金認定基準
てんかんで障害年金を受給できるかどうかは、発作の種類や頻度、日常生活への影響などを定めた「障害認定基準」に基づいて判断されます。
てんかん発作|4つのタイプ
障害年金の審査では、てんかんの発作を重さや現れ方によってA~Dの4つのタイプに分けて確認します。
| 発作タイプ | 特徴 |
|---|---|
| A発作 | 意識がはっきりしない状態で、周囲の状況にそぐわない行動をとる |
| B発作 | 意識の有無にかかわらず、体が倒れてしまう |
| C発作 | 意識がなくなり動作が止まるが、倒れることはない |
| D発作 | 意識はあるが、体を思うように動かせなくなる |
大きな発作(A・B発作)だけが対象になるわけではありません。
意識が途切れるだけで倒れないC発作や、体を思うように動かせなくなるD発作のように、一見軽く見える発作も、A~Dの分類の中で等級判定の対象になります。
てんかんの障害年金審査で見られるポイント
障害年金の審査では、てんかん発作そのものだけでなく、次のような点も含めて総合的に判断されます。
| 障害年金審査で見られるポイント | |
|---|---|
| 障害年金審査で見られるポイント | 具体的に見られること |
| 発作の重症度 | 意識障害の有無、転倒による危険性、生命や社会生活での危険性の有無 |
| 発作の頻度 | A~D発作のどれが、どのくらいの間隔で起きているか |
| 発作間欠期の精神神経症状・認知障害(てんかん性精神病を含む) | 発作が起きていないときも、集中力や記憶力の低下、不安、抑うつなどが残っていないか |
| 日常生活への影響 | 入浴、調理、外出など、日常生活動作にどの程度の支障が出ているか |
| 就労状況・社会的不利益 | 仕事の内容や職場の援助状況から、どのような不利益を被っているか |
てんかんの障害年金審査では、発作の回数だけでなく、生活上の支障が総合的に見られます。例えば、次のような状況はいずれも重要な判断材料です。
- 入浴中に溺れる危険がある
- 調理ができない
- 一人での外出や運転ができない
- 就労が制限されている
ここで見落とされがちなのが、発作がない時間帯の状態です。
診察のときにたまたま落ち着いた様子を見せると、実際の生活の大変さが診断書に反映されにくくなります。発作間欠期の不安や集中力の低下、認知面の支障も、診察のたびに具体的に伝えておくことが欠かせません。
発作の重さや頻度による等級判定のしくみが、すでにこの認定基準の中でA~D発作の分類として定められているため、ガイドラインを別途あてはめる必要がないためです。
障害等級の目安
発作のタイプと頻度によって、想定される等級の目安は次のとおりです。
| 等級 | 目安 |
|---|---|
| 1級 | A・B発作が月1回以上あり、かつ常時の援助が必要 |
| 2級 | A・B発作が年2回以上、またはC・D発作が月1回以上あり、かつ日常生活が著しく制限される |
| 3級 | A・B発作が年2回未満、またはC・D発作が月1回未満あり、かつ労働が制限される |
3級は障害厚生年金のみに設けられた等級で、厚生年金に加入している間に初診日がある場合が対象です。
国民年金に加入している間や20歳前に初診日がある場合は、1級か2級のいずれかに該当するかどうかが問われます。
てんかんの障害年金でもらえる金額の目安
てんかんで障害年金を受給できた場合の金額は、等級や初診日に加入していた年金の種類によって次のように変わります。
障害基礎年金の金額(令和8年度)
初診日に国民年金に加入していた方は、障害基礎年金の対象です。
| 等級 | 年金額の目安 |
|---|---|
| 1級 | 年額1,059,125円+子の加算 |
| 2級 | 年額847,300円+子の加算 |
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
1人目・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円が上乗せされます。
障害厚生年金の金額(令和8年度)
初診日に厚生年金に加入している方は、障害基礎年金に加えて、給与や加入期間によって決まる「報酬比例部分」の障害厚生年金も上乗せされます。
| 等級 | 年金額の目安 |
|---|---|
| 1級 | 報酬比例部分×1.25 +配偶者加給年金(243,800円) ※65歳未満で生計を同じくする配偶者がいる場合 |
| 2級 | 報酬比例部分 +配偶者加給年金(243,800円) ※65歳未満で生計を同じくする配偶者がいる場合 |
| 3級 | 報酬比例部分のみ (最低保障635,500円) |
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
1級・2級は、障害基礎年金と障害厚生年金を合計した金額を受け取ります。
一方、3級は障害厚生年金だけの等級です。そのため3級の場合は、報酬比例部分だけを受け取ります。
なお、てんかんだからという理由で年金額が増減することはありません。
年金額の計算方法や配偶者・子の加算については、障害年金でもらえる金額は?精神疾患だと年金額は変わる?社労士が解説! でさらに詳しく紹介しています。
てんかんで障害年金を申請する際の注意点
てんかんの障害年金は、実際の生活の大変さが書類に正しく反映されているかどうかで、審査の結果が変わることがあります。ここでは、申請時に押さえておきたい4つのポイントを紹介します。
初診日の特定が重要
障害年金の審査では、初診日、つまり症状について初めて医療機関を受診した日をいつと特定できるかが、認定の土台になります。
てんかんは、最初から専門医を受診するとは限りません。
例えば、意識を失って倒れて救急要請し、その場では検査だけで終わり、後日あらためて専門医を受診しててんかんと診断される、というケースもあります。
この場合、てんかんという診断名がついた日ではなく、症状について最初に受診した日が初診日として扱われる可能性があります。
あとから初診日を証明できずに申請でつまずくケースを避けられます。
初診日の特定方法やカルテが残っていない場合の対処法は、障害年金の初診日とは?カルテがないときの対処法もご紹介!でさらに詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
公式YouTubeチャンネルでも初診日の特定について解説していますので、あわせてご覧ください。
てんかん発作の記録を残しておく
てんかんの発作は、本人が発作時の記憶を失っていることが多く、自分だけでは正確に振り返れない場合があります。
記録には、次のような内容を書き残しておくとよいでしょう。
- 発作が起きた日時と場所
- 意識障害や転倒の有無
- 発作が続いた時間
- 救急要請や搬送の有無 など
本人が覚えていない部分は、家族や職場の人など、そばで見ていた人の記録も貴重な情報になります。
日常生活の困りごとを具体的に伝える
「発作があります」と医師に伝えるだけでは、審査に必要な情報が不足しています。
てんかん発作によって生活のどこにどんな支障が出ているかを整理し、診察のときに医師へ具体的に伝えましょう。
例えば、次のような内容です。
- 職場で危険な作業を任せてもらえない
- 発作のあとに強い疲労が数時間から翌日まで残る
- 薬の副作用で眠気や集中力の低下がある
- 家族の見守りや声かけが欠かせない など
診察時間は限られているため、発作のことだけを話して日常生活の困りごとまで伝えきれないことがあります。
事前に知らせたいことをメモへまとめておき、医師にもらさず伝えましょう。
診断書の内容が審査にどう影響するかは、障害年金の審査は診断書で決まる?知っておきたい注意点と社労士のサポートでも詳しく解説しています。
病歴・就労状況等申立書は「できないこと」を中心に書く
病歴・就労状況等申立書は、医師ではなく本人が作成する書類です。
「できていること」を並べるのではなく、「できないこと」を中心に、発作の状況や生活・仕事への支障を事実として具体的に書きましょう。
不安な気持ちや大変さを訴えたくなりますが、審査で重視されるのは感情面ではなく、実際に何がどれだけできないかという事実です。
日付や頻度、具体的な場面を交えて客観的に記録しましょう。
病歴・就労状況等申立書の書き方は、病歴・就労状況等申立書の書き方のコツは5つ!障害年金の重要書類で失敗しないためのポイントをご一読ください。
代表社労士が病歴・就労状況等申立書の書き方を動画でわかりやすく解説していますので、あわせてご覧ください。
てんかんで障害者手帳がもらえる
てんかんは、精神障害者保健福祉手帳(以下、手帳)の対象にもなります。手帳の等級の目安は、次のとおりです。
| 手帳の等級 | 目安 |
|---|---|
| 1級 | 発作がひんぱんに繰り返される、または知能障害・精神神経症状が高度 |
| 2級 | 発作がひんぱんに繰り返される、または知能障害・精神神経症状がある |
| 3級 | 発作、または知能障害・精神神経症状がある |
障害年金の等級は、A~D発作の回数によって数値で線引きされています。一方、手帳の等級には年金のような数値の基準がありません。
ここまで見てきた年金のA~D発作の回数基準をもとに考えると、「発作の回数が少ないと手帳はもらえないのでは」と考えがちですが、手帳は回数だけで機械的に判定されるわけではありません。
手帳の等級は、発作の状態だけでなく、日常生活にどれくらい制限があるかもあわせて総合的に判定される仕組みです。
障害年金の受給が決まっていれば、手帳の診断書は省略できる
障害年金を受給している方が手帳を申請・更新する場合、手帳用の診断書を新しく用意する必要はありません。年金証書の写しを提出すれば、診断書の代わりになります。
さらに、年金の等級がそのまま手帳の等級として扱われます。
この仕組みは、精神障害を理由に障害年金を受給している方を対象にしています。てんかんは、障害年金においても精神の障害として扱われるため、この対象に含まれます。
なお、手帳を先に申請する場合は、この省略は使えず、通常どおり診断書が必要です。
参考:精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について|厚生労働省
障害年金と手帳の違いについては、障害年金と障害者手帳の違いとは?生活を支える制度をわかりやすく解説で詳細をご確認ください。
てんかんの障害年金Q&A
てんかんの障害年金について、よくいただくご質問にお答えします。
Q1.てんかんは障害年金の審査が厳しい・難しいと聞きますが、本当ですか?
発作の回数だけで判断されるわけではありません。発作間欠期の精神神経症状や認知障害、日常生活・仕事への支障まで含めて総合的に判断されるため、発作が少ないからといって最初からあきらめる必要はありません。
Q2.障害年金は一度認定されたら、ずっともらえますか?更新はありますか?
てんかんを含む精神の障害は、原則として「有期認定」です。1~5年ごとに診断書を提出し、状態を確認する必要があります。永久認定になるのは、ごく一部のケースに限られます。
Q3.20歳前からてんかんがある場合、何歳から申請できますか?
20歳に達した時点で等級に該当していれば、その時点から請求できます。初診日が20歳前にある場合は、通常の保険料納付要件は問われません。
ただし、20歳前の傷病による年金には所得制限があり、本人の前年所得が高いと年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。
Q4.働きながらでも、てんかんの障害年金はもらえますか?
働いていることだけを理由に不支給になるわけではありません。ただし、就労できている状況は「日常生活能力がある」と判断されやすく、等級が軽く見られる場合があります。
危険作業の免除や配置転換といった職場での配慮内容を、診断書や申立書に具体的に反映させることが大切です。
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